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【最終回•第17話】FP3級発表日

2022年6月29日、合格発表は10時から。でもお仕事中の時間帯、すぐに結果の確認はできない。
指示された記入書類の一次チェック。さくらは慎重にこなしながら、かかってきた電話に出る。扱う回数を重ね、電話機の操作はお手のものになりつつある。保留や転送ボタンを押す手つきが流れるようにスムーズだ。

交替制のランチ休憩、さくらは今週13時からの一時間。月末が近く、対応可能な人員が少ないお昼どきに限って電話が多い。切れ目なく取り次いでいたら時間が経つのが早く感じた。「お疲れさま〜。木野さんお昼いってらっしゃい。」12時からだった先輩が戻り、お昼休みタイムの到来。普段はお腹の虫が気になるが、何だかいつもと違う。食堂に直行したけど、今日はまだ食券を買わない。とりあえず自販機でペットボトルのお茶だけ。「合格発表見てからゆっくり食べよう。」って感じ。

番号を入力するための受検票OK!ドキドキ。心臓バクバクってこういうのを言うんだな。学科から見よう。
きんざい、FP…2022年5月の結果はここね。受検番号を入れて、フーッ深呼吸。怖いけど押そう。えいっ。

やったぁぁぁ『合格』の赤い文字。いやっほう〜いえい!いえい!!
自己採点でギリギリいけそうとは思っていた。それでもやっぱりうれしい。横浜高校出身の野球選手の名言「自信が確信に変わった」がぴったり当てはまる。いや待てよ。問題は実技だ。同じように番号を入れて、っと。「お願い!」と照会ボタンをひと押し。

赤い文字がない。嫌な予感。
■結果:合格者の受検番号リストに存在しません。
(1)欠席、
(2)不合格、
(3)団体の受検申請の際に成績報告の承諾をしなかった、
(4)正しくない受検番号、
のいずれかです。
、、、、、うわー、だめだったか。泣きたい。ってか泣きそう。思い当たる節はあったにせよガッカリの極み。「も、もしかして受検番号の入れ間違いかもしれないし。」一縷の望みで再入力してはみたけど、同じ画面。嗚呼、実技の不合格確定。あー、気分下がるわ(涙)

はなたば信用金庫たんぽぽ支店2022年入社の新入社員、木野さくらさん。初めてのFP試験3級受検は、「学科合格」「実技不合格」に終わった。天を見上げた。目に入ったのは食堂の天井だけど。「そりゃそうだよ。最初舐めてかかったし、スタート時期が遅すぎ。甘かった。」改めて自身を振り返り、ある意味妥当と納得していた。そうだ、心配してくれた菊人にラインしよう。
「ガッカリ。学科は合格してたけど実技落ちちゃった。完全合格はおあずけ。9月に実技だけ受け直しね。これから上司に言わなきゃ。ねえ菊人、スイーツ付きの残念会やろ♪」
あら、さくら。ちゃっかりおねだりしてる。

(6/29さくらの日記)
【くー!実技落ちたー!!何点足りなかったのか気になるわ。そのうち送られてくるから要チェックね。まぁ、不合格に変わりない。学科は受かってたから一部合格。もう油断しない。梅乃みたいに計画的にやる。うん、次の9月で絶対決めるよ!」
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試験結果が送られてきた。学科は7割近く取れてて、自己採点はほぼあっていた。実技はというと、4点足りなかった。さくら自身が理解している通り、惜しい結果だって不合格に変わりない。ここで立て直したいね。

もし、この不合格を乗り越えることができれば大きく成長できる。しない方がいいかもしれないけれど、挫折してこなかった人と挫折を経験した人。後者の方がその後の人生において成功する確率が高い。そんな見方もあるよ。挫折を乗り切りメンタルが鍛えられ、そこで学んだことがのちに活かされるから。

女性課長・萩原はFP試験に関して多くを語らなかった。さくらが自分で考えてほしい。それが大事だと思ったから。マネジメント、育成は奥深いね。決まりきった満点の正解は無い。「口うるさく言うのも言われるのもイヤ。」彼女なりに行動させて様子を見て、アドバイスを求められたら助けようという方針。相談に乗る時は、家族のような温かい心で。上司と部下ではあるが人間同士、どう分かり合えるか。それを重要視したいと考えている。

士業などの国家資格は年一回の試験が多い。一方、きんざいのFP試験は一年で三回のチャンス。やる気を持続しやすい側面がある。挫けずに次、頑張ってほしいよね!

(7/2さくらの日記)
【次のFP試験は9月。来月は損害保険の基礎、自動車、傷害の試験あるから計画的にいかないと。CBTのパソコン受検だし業務上必要だから絶対落とせないな。ってことは実技対策を一時停止する前提か。きっついけどやるしかない。明日は日曜、菊人との残念会デート。早めに起きて、ひと勉強してから出かけるぞ⭐︎いえいっ!】

社会人なりたての新入社員。まだ人生経験は少ない。そんな中で、自らを省みて進もうとしている。未熟でも、そこは認めてあげたい。どこか憎めない愛されキャラでもあるしね。
年配者としては、さくらのような若者がのびのびと成長できる社会であってほしいと願う。

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(リベンジに燃える様子はTwitter:🌸さくら垢→@hanashinsakura🌸にて)noteをお読みいただき、ありがとうございました。【完】

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