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コーチングにおける「おうむ返し」の価値


ZaPASSコーチ養成講座の受講生メンターをする中で、「おうむ返し」について考える機会があったので、まとめてみました。

1. そもそもコーチングのスキルには何がある?

でぐみうさん作グラレコ(2021年2月の講座)

おうむ返しの前に、おうむ返しを内包する「傾聴」、傾聴を内包する「基礎スキル」について簡単に説明します(私にとっての理論体系)。

前提として、コーチングの基礎スキルは、「傾聴」「質問」「承認/フィードバック」があり、この順に重要だと考えています。

傾聴がしっかりできて初めて「質問」が機能しますし、傾聴と質問がしっかりできて初めて「承認/フィードバック」が機能します。

つまり、傾聴こそコーチングの土台であり柱です。傾聴ができないコーチは、いくら質問やフィードバックを磨いても、良いセッションはできません。

なお、ここで言う傾聴は、辞書通りの意味や単なるスキルではなく、コーチとしてのスタンスやマインドを含んだものです。

クライアントの幸せや成長を心から願い、その表層(客観的に観測できるアクション)として、何らかの表情が生まれたり、頷いたり、相槌したり、おうむ返ししたりします。

なので決して、「頷いたり、おうむ返ししたりするのが傾聴」という訳ではありません。


2. おうむ返しの価値

そんな中で私が思う「おうむ返し」の価値は、コーチがクライアントの言葉の中で「重要性・違和感・感情の起伏を感じたもの」を、解釈が入らない形でお伝えすることです。

前提として、私はコーチを、クライアントを常にリードする存在ではなく、クライアントが理想や願いのために自走できるよう、支援する存在だと考えています。

ゆえに、いつも丁寧に問いを投げかけるのではなく、おうむ返しによって「もしかして、これがキーワードなんじゃない?」と示唆することが重要なのです。


「質問して、答えてもらう」を繰り返すだけのセッションは、本やフレームワークの代替品でしかありません。

なぜなら、質問ばかりに偏ると、話の進行や焦点をコーチが握りすぎて、クライアントが自らテーマを見つけ、深めるのを妨げるからです。

おうむ返しは、クライアントが自ら深める方向を模索し、選び取っていく余白を生み出します。

良いセッションの1つの条件は、「コーチとクライアントの共創」です。

コーチもクライアントも、最大限に思考と感性を活用し、お互いが限界まで出し切ることで、クライアント1人では到達しえない視点、発想、感情の噛み締め方にたどり着くことができます。

このようなセッションと、セッション間のアクションを繰り返すことで、クライアントは「まさか、こんなところまで来れるなんて」と感じるような革新的変化を得ることができます。

まとめると、おうむ返しは、クライアントが自ら「これについて話したい、深めたい」と感じるものを自ら言葉にし、実際に深めていく、そんな道のりの第一歩を後押しするスキルとして機能します。


3. 2023/7/26追記

さまざまな経験を積んできた中で、現在の思考をまとめたものです。

おうむ返しとは何か?(抽象)

  • おうむ返しは、「コーチがわざわざ質問しなくても、クライアントが自ら話し、内省を深められる関わり」です

  • おうむ返しは、「"クライアントが自ら内省の方向を模索し、選び取っていく余白"を生み出す関わり」です

  • クライアントの言葉を100%そのままお返しすることで、コーチの色が混ざらず、クライアントの色だけで話を進めることができます

  • おうむ返しを用いると、クライアントはおうむ返しされた言葉から、新たに着想し、主体的に内省を深めていくことができます

質問に依存せず、おうむ返しすべき理由

  • コーチ自身の言葉(質問)を中心にセッションを組み立てると、スポットライトが絞られすぎて一問一答のようになりやすいです

  • それによって、クライアントが自らテーマを見つけ、内省するプロセスが妨げられます

  • そのため、質問の連打でセッションをリードしようとするのではなく、クライアントと共につくっていく意識で、「どんな言葉を出してもいいですよ」というスタンスで、おうむ返しをする必要があります

  • コーチがスポットライトを明確に当てる「質問」と異なり、おうむ返しは「ここは大事そう!」というコーチの直観に基づき、その直観を示した上で、クライアントがなにをどう話すかはゆだねる関わりで

おわりに

  • おうむ返しを起点として、クライアントが自らセッションの進む方向を見つけ出し、進んでいく瞬間を体験してみてください

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