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【猫兄弟の教え】登り方は何通りもある🐈🐈

ある年の年末。
大掃除。

猫兄弟のミヤオとミヤジロウは、
掃除機の音から逃げ回って、
家の中をあっちへこっちへ。

リビング、
ソファを立てて、ソファの下に隠れていた埃を掃除。

床の誇りを吸い取って、
掃除機のスイッチをOFFにした。

二階から猫兄弟が降りてきた。

掃除機の轟音が鳴り始めないか、
警戒しながら、階段を一段ずつ
そろりそろり。

先に気が付いたのは、弟のネコのミヤジロウ。

立てかけたソファを見て、
目が輝いた。

猫兄弟は高いところが大好き。

とはいえ、ソファの横幅は約180cm。

さすがに子の高さには登れないだろう…
と思っていた途中で

ジャーーーーーンプ!

ミヤジロウは一瞬で立てかけたソファの上に乗り、
満足げに寛ぎ始めた。

何て跳躍力だ!
弟猫のミヤジロウは、小柄なことあってか、
助走無しでも180cm以上の高いジャンプができることが分かった。

一方、兄猫のミヤオは、
高いところに上った弟猫を羨ましそうに見上げている。

何度もかがんで飛ぶ準備をするけど、
考えて、考えてジャンプはしない。

ミヤジロウを見上げながら、
立てかけたソファの回りをぐるぐる歩いて
「ミャー」と鳴く。

ミヤオはミヤジロウよりも体が大きくて、
がっしりとした体形。

本能的に自分の体重を知っているのか、
自分の身体にかかる重力の影響を瞬時に感じ取り、
弟のミヤジロウと同等の跳躍力を持たないことが分かるようだ。

それでも、ミヤオはあきらめなかった。

立てかけたソファの上に登りたい、
俺も高いところでくつろぎたい!!
という強い気持ちを持っていた。

ソファに背を向けて別の場所を掃除していると、
背後から「バリバリバリ!」という音が聞こえた。

何事かと振り返ると、
ミヤオが、その逞しい腕力で、
ソファの壁面を垂直に登っていた!

その姿は、まるで
大岩壁「エル・キャピタン」を登るロッククライマー。

ミヤオは、全集中力を注いで一気に登り上げると、
やれやれ、とばかりにミヤジロウの隣で寛ぎ始めた。

その雄姿は、銀座三越の正面に鎮座している
ライオン像を彷彿とさせた。

無言で私を見おろすミヤオのつぶらな瞳から
目を離せなくなった私は
その大きな黒目の奥に悟りに近いものを感じた。

登り方はひとつではない、
ジャンプできなかったら、
腕力で登ることだってできる。

目的地に行こうとして、
上手く進めなかったら、
別の方法を試せばいい。

ミヤジロウは小柄で跳躍力があってジャンプが得意、
ミヤオは体が大きく腕力があって力強さが持ち味。

何が得意?
何が持ち味?

自分のことをどのくらい知ってる?

他の人の上手く行った方法を真似して、
上手く行かなくても落ち込む必要は無い。

それは、劣っているのではなくて、
自分の得意や持ち味を知らない、
もしくは活かせてないだけ。

立てかけたソファの上で脱力して寛いでいる
猫兄弟を見上げながら、
私の脳内で、そんな声が響いた。

その、太く優しい声は、
間違いなくミヤオの声だ。

ミヤジロウは、
「兄ちゃん、ジャンプすれば楽チンなのに、
なんで、あんなに必死に登って来たの?」
ってミヤオに聞いてたから。

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