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【代表インタビュー】「自由」と「責任」をめぐって悩み続ける組織づくり。木下商会の「わちゃわちゃ感」の正体とは?

オフィスづくりを通して〈「やってみよう」が自然と生まれる“場”をつくり続ける〉をミッションに掲げる木下商会。
今回は代表である村山さんを知るべく、学生インターンによる前半・後半二本立てのロングインタビューを実施。

後半では起業に至った経緯や組織づくり、これからの木下商会についても深掘りしていきます!

営業からプロジェクトマネージャー、そして木下商会設立へ

—震災後は営業職とPM(プロジェクトマネージャー)を経て起業されていますよね。なにか起業のきっかけになった経験があったのでしょうか?

震災後、保険の損害査定の仕事を終えたあと、まずは海外家具を取り扱うディーラーに営業として入社しました。そこには業界の経験も知識も全くない状態で入れてもらったので初めの頃はやはり苦労しましたね。
早く結果を出したい一心で、上司に張り付いて自分ができそうな仕事を任せてもらったり、残業してる人に「今何やってるんですか」って聞いて一緒に作業させてもらったり(笑)

オフィス家具の基礎知識はここで得たもので、今でもすごく役に立っています。それから、会社自体が大きかったこともあって、いわゆる「でかい仕事」ができたのはものすごく楽しかったです。

海外出張にも

ただ、そのあたりでなんとなく起業を意識しはじめていて、営業の手法を自分のものにしたい、人を育てる経験もしておきたい、と思ったのをきっかけに転職したんですよね。

転職先はさらにバリバリの営業会社でした。業務の一環で商材の営業に加えて、代理店のチーム育成をしていて、人の育成や評価といった組織づくりをしつつ、その上で数字とも向き合わないといけない、いわゆるマネージャーでしたね。

「人を育てる」みたいなことをしっかりやったのはここが初めてだったんですけど、営業に行ってくると言って出て行ったきり帰ってこない人がいたり、契約を捏造して自分でサインした契約書を持ってくる人がいたり(笑)びっくりするようなこともよくありました。

悩むことも多かったし体力的にも精神的にもきつかったですけど、腹を括ってやるしかなかったし、ビジネスにおける覚悟や心構えはここで整ったのでいい経験だったと思います。目の前の現実から目を逸らさずに、ひとつひとつ適切に手を打つしかない環境での仕事は自信になりましたね。

—このあとの転職先で、今の木下商会の事業に近い「オフィス内装」に携わるんですよね。

そうですね。「新しくて、かつ規模が小さい会社で働いてみたい」というのが転職の理由でした。というのも、設立から間もない会社って細かい仕組みやルールがしっかりと体系化されていないことが多いんですよね。起業にあたって、会社や組織っていうものをどんな仕組みやルールを使ってどうまとめていくかっていうのを知っておきたかったので、ご縁をいただいた不動産事業を展開するベンチャー企業に入社しました。

当時は不動産事業がメインだったのですが、そこで「不動産を入り口にしたオフィスの内装事業」ってアリだなって思ったんです。オフィスを借りたらそのあとは「オフィスづくり」が始まりますよね、だったらそこも僕らでやってしまおうと。

社長がいる場で「オフィス空間のプランニング事業部をつくろう」とかなり熱のこもったプレゼンをしました(笑)
その後無事提案が通り、早速部署を立ち上げました。ここで前職でのマネージャー経験を生かせましたし、お金のフローとか会計の仕方とか、経理っぽい知識もつきましたし、良い機会でしたね。

プランニング事業部初期

立ち上がったあとはとにかく目の前の仕事をこなし続けました。続けていくうちにだんだんとクライアントの直面している不安や不便といったニーズが見えるようになってきて、それをを解消するために手を打ってみる、行動を起こしてみる、みたいなことの繰り返し。手探りで仕事しながら前に進んでいましたね。

この「クライアントが困ってるから仕事をつくる」っていうのは今も変わらないかもしれないです。
オフィスの内装業ってクライアントはもちろん、物件のオーナーや行政、施工業者、家具メーカーとの連携作業なので、複数の締切や納期がつきまとう仕事なんですね。なのでルーティンのように順序よく仕事をこなすのも重要ではあるんですが、クライアントそれぞれのニーズを汲み取って、それを満たすための仕事を自分たちでつくることも必要になります。
いわゆる「コスパ・タイパ」は高くないですが「わざわざやる」ことで生まれる面白さだったり苦しさだったりが仕事の醍醐味な気もします(笑)

ファミリーデーのパーティー

また、このときは企業の「代表」の方と仕事を進められるのもよかったですね。「社長」とか「代表」っていう肩書きの人たちがどう考えてるのか、どういう戦略をとっていくか、というのを間近で聞く機会に恵まれたのは幸運でした。彼らの思考回路や価値観は今でも自分のものの見方・仕事の仕方に影響を与えていると思います。

—そして2019年に木下商会が設立されるんですね。村山さんが1人のときに現在の馬喰横山のオフィスを借りたと伺いました。1人には大きすぎるオフィスで不安を感じることはありましたか?

不安がなかったわけではないんですけど、融資を受けてオフィスを構えてしまった以上「もうやるしかないな」って気持ちでした(笑)
本棚を自分でつくったり、昔お客さんだった会社の人に廃棄予定のテーブルを貰ったり……。今思うと思い出がいっぱいのスタートでしたね。

今では大量のサンプルが収納されている本棚は村山さん自らつくったもの

周りを巻き込んでやる方が楽しいし、最終的には大きな力が発揮される

—組織づくりに話を移していくんですが、木下商会のいい意味での「ルーズさ」みたいなものは意識的につくっているんですか?

ルーズさに関しては「自由」、特に「責任が伴った自由」を意識的にやってるところが大きいですね。あと、賑やかな集団でいたいとは思ってます。

僕は高校1年生から大学2年生にあたる5年間を高等専門学校、いわゆる高専で過ごしたんですが、集団でまとまって動く楽しさみたいなものにここで気付いて、そのときに学んだ「人と協働することの価値」が組織の雰囲気にもかなり影響していると思います。

先で少し話したんですが、高専のイベントのひとつに「建築シンポジウム」というのがあったんです。全国の高専生がデザインだったり設計だったりを競う大会なんですが、その実行委員長をやらせてもらったことがあって。

それまでの学生生活でも生徒会やらなんやらで何かプロジェクトを進めることはありましたけど、そういうのって既存の枠組みの中で動くことが多いですよね。やるとしてももうすでに出来上がっている学校のルールの中で、何かをほんのちょっと変えてみたり、新しくしてみたり。あくまで表面的な変化だと思います。

ですが、ここで僕が経験させてもらったのはプロジェクトの企画の土台から創り上げることです。進行の仕方から審査員・会場はどう抑えるか、参加者をどうやってまとめるか、みたいなこと全部です。
決定事項の多さやスピード感に最初は戸惑いましたけど、「大人がやる企画ってこういうことなんだ」って半ば感動しつつ、自分なりに責任や重圧を感じながら進めていました。

けどある日突然、先生に「全然進んでないじゃん」って怒られたんですよ。最初は「なんで」って思いましたよね。一生懸命やってるし順調なんだけどなって。まあ今思うと実際に順調ではなかったんだけど(笑)

先生には「まず自分ができない事実を認めよう。その上で、適切に相談しろ」「周りのできる人に甘えろ」つまり、もっと人を頼れってことを言われて。

自分のこだわりだけでうまくできなかったことがほんとに腹立たしくて悔しかったです。
そのあとですね、徐々に「人にお願いする・頼る」ができるようになってきて。一人で黙々と作業するスタイルから抜け出して、みんなと夜中まで学校に残ってわちゃわちゃ企画練るとかしました。これがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。(笑)

一人でやるより周りを巻き込んでやる方が楽しいし、最終的には大きな力が発揮されることを知りました。仕事のスピード感も変わるし、いろんな人間が集まったときの化学反応も面白かったし、何より楽しかった!
そして全て一人でやろうとしていた自分の判断の未熟さ、愚かさを知りました。

この経験が木下商会の「わちゃわちゃ感」のある組織づくりにも色濃く反映されてると思います。

—たしかに「わちゃわちゃ感」ありますね(笑)
ただ、「組織」と「自由」の相性って難しいところがある気もするのですが……。

まさにそうですね、組織で「自由」をどう扱うかはかなり悩みました。

まず前提として、ここで言う「自由」は無秩序に奔放に仕事をしてもいいっていうことではなくて、たとえば仕事の裁量のほとんどを持っているとか、自由に時間を使って仕事をするとか、そういう働き方を指すと思ってください。そして、僕はずっとメンバーには適切な環境を与えて「自由」にやらせてあげるのが良いと思ってたんですよ。

なんというか、やる気とか仕事に対する意欲は誰にでもあると思っていたので、とにかく適切な環境さえこちらが用意すれば社員は早く伸びると信じているところがありました(笑)

自分自身は家庭環境も良くなかったので、学生時代なんかは特に「やりたいことを自由にやるための環境」にあまり恵まれてなかったんですね。だから社会に出たとき、制限なく自由にやらせてもらえる働き方が楽しくてしょうがなくて

けどあるとき、長くいるメンバーが体調を崩してしまったり、新しく入った人がすぐに退社してしまったり、人の入れ替わりが激しい時期があったんです。
そのとき初めて「自由に」仕事のすべてを自分で組み立ててやってもらうのは相当圧力がかかるということに気が付きました。みんな不安だったんだなと。

僕は仕事において「お客さんを不安にさせないこと」、「うまくリードすること」は当然のことだと思ってやっていますけど、これは自らの社員に対する姿勢にも当てはまるんだなっていうことに気付きました。そこから社員が不安にならないようにどうしたらいいのかなっていうのを考え始めて、特に「コミュニケーションの仕方」に気を配るようにしました。

—「気を配る」とは、 なにかコミュニケーションのルールみたいなものを作るとか?

ルールにはしてないんですけど、僕は「発信者責任」っていうものを大事にしています。これは「言った」としても、相手に意図が伝わってなければ「言ってない」のと一緒だし、「言った意味もない」ということです。

「言ったのにやらなかった」、「言ったのにできてなかった」って仕事上誰もが経験することだと思うんですが、この問題は「(相手が)やらなかった」ことではなくて、「(言った側が)伝えられていなかった」ことに原因があるんじゃないのっていう。

最近は社内にメンバーが増えて、コミュニケーションが複雑になってきましたし、伝達ミスが起きてしまうこともあります。でもそういうときに「伝え方」をもっと工夫できたんじゃないかなって立ち止まることが僕にも、みんなにも重要ですよね。

組織がうまく回らなくなったときは結構しんどくてメンタルもボロボロでしたが、メンバーの率直な意見をもらいながら事実と気持ちの整理ができたのは良かったです。僕は自覚しているよりもずっとトリッキーな人間になってしまっているっていうことに気付けたタイミングでしたし、よい勉強にはなりました。
僕は失敗しないと学習しないんだなって、すげえセンスないなって思いながらがんばってます(笑)

働くことってそんなに悪いことじゃない

—会社づくりに関して言えば、インターン採用の積極性も木下商会の特徴です。学生インターンの受け入れを始めたきっかけをお聞きしたいです。

人を採用するとか育てることに対して少し踏み込んで考えたいなと思ったときに実験的に始めました。

未経験可で空間デザインのインターン採用をしているところってあんまりなくて、応募はそれなりにありました。そんな中で一番初めに来てくれた学生はいわゆる「箱入り娘」なところがあって、「働くなんて無理、働きたくない」って言っている子だったんです。
1ヶ月のインターン期間中に彼女と社会や仕事などについて話し込んでみると、いかに彼女らが「学校」というクローズドなコミュニティの中で育っているかを感じました。

今の若い人は「社会」や「社会人」に対して「知らないがゆえ」のネガティブなイメージが大きいのかなと思います。そして、社会がどういうものかを知らないまま就職して、いつの間にかすり潰されていく若い子が多いのかな、なんて切ない気持ちになりましたね。
だから「働くことってそんな悪いことじゃない!」みたいなことをインターンを通して伝えたいんです(笑)

あとはいろんな学生と話すなかで、自分たちのやるべきことが少し整理されてる面もありますし、若者の流行りを聞けるのも刺激を受けるしおもしろい。いろんな意味でも良い機会だと思って今まで続けてきた感じですね。

「実力」のある人=「現実を変える力」のある人

—自分自身インターンとして、そして就職活動が始まる身としてお聞きしたいのですが、村山さんの思う「仕事ができる人」とはどんな人ですか?

色々あるけど「やります、できます」っていう言い切りができる人は素敵だなと思います。
それはもちろん「やってみたら」と言える経営者側の余裕も必要なんだけど、答えや正解が分からない中でも自分で考えて、責任を持って、それをいかに実行できるかがいわゆる「仕事ができる人/できない人」の一番の基礎になるかな。

(前編の)江頭さんの話とも被るんですが、僕は実力とは「現実を変える力」だと思います。いい考えやアイデアを持っていても、行動を起こさず、現実を変えられない人たちを「実力がある」とは言えない。

ただ、最初から行動を起こすのは難しいことです。じゃあどうするか、というと「調べる」ことから始めるべきだと思っていて。
そんな簡単なこと? と思われるかもしれないですが、前例や基礎知識を調べて適切な情報を得ることを本当の意味でできる人って実は少ない気がするんですよね。

多くの人はタイムパフォーマンスを優先して時間をかけて調べる作業を避けたがる。ただそれだと「分かった気になる」ことしかできないんです。
よくインターン生には「分からなかったらまずたくさん調べて、真似してみて」という話をするんですが、これはさまざまなケースを真似してみることで多くの物事に通じる体系や構造を知ってほしい、そしてそれを更新し続けてほしい、ということなんです。

地道に調べて、そこで得た情報をまとめる。まとめたらおそらく何かしらの共通点や相違点が出てくるから、自分の仕事に落とし込んでみる。このプロセスを繰り返す。
根気よく再現性のある知識を積み重ねていくことで知らないことに対応する不安や抵抗感も減っていくんじゃないかな。そうすると、さらなる「やります」、「できます」といったチャレンジがしやすくなりますよね。
若くて知識と経験が浅いなら尚更、近道しようとせずに「調べる」、「考える」、「実行する」を大切にしてほしいです!

—最後になりますが、木下商会がさらに「強い」会社になるための今後の展望をお聞きしたいです!

僕自身としては案件を持つことから距離を置いて、企画や集客にまわりたいと考えてます。案件に深く関わらなくなる寂しさは正直ありますけど、これに関してはもうみんなが楽しそうにやってくれればいいかな(笑)
全体としては、メンバーそれぞれが異なる優しさでカバーし合える、そんな強さを持った組織でいたいですね。ビジネスという厳しい世界で勝負するために、優しさが重なり合った強い組織をつくっておきたい。そして勇気を持って真剣勝負する一人ひとりを支えてあげられる、そんな会社にしたいです。
(前半の)冒頭で話したことと重なりますが、組織を大きくすることで強く、そして豊かになりたいというとこですかね。

ここ1年、ここを乗り越えられたらいよいよ「強い」感じの会社になっちゃうかもってワクワクしながらやってます。


人を守り、助けられる「強い」会社へと、着実に歩みを進めているということですね!

思い返せば最初の頃は、常に会話が飛び交うオフィスをはじめ、独自の採用プロセスや日報の共有、インターン生とのランチ制度など、木下商会ならではの働き方に日々驚いていました。

また、「働き方」でいうと、最近木下商会では「オフィス増床プロジェクト」が本格始動。増床、働き方の変化をきっかけに、組織のあり方や業務の進め方にもさらなる変化が起こりそう……!
今後の動きも楽しみです。

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