見出し画像

自由を乗りこなす「思考の型」〜自由進度学習の失敗から〜

片田舎で5年担任をしているわいです。

今回は自由進度学習における、いわゆる「失敗談」です。
しかし現在の実践につながる大切な経験でしたので、書き残しておくことにしました。

教員2年目で自由進度学習にチャレンジ

教員2年目の時、初めて自由進度学習にチャレンジしました。
なぜチャレンジしたかというと、半分は「子ども主体の授業を実現したかったから」もう半分は一人一台端末が入ってきたことで、漠然と「今までの授業じゃダメだ」と感じていたからと記憶しています。

扱った単元は理科の「ふりこのはたらき」。学習進度表を作成し、それを基に自分たちで実験をしていくというもの。
ふりこの学習については「仮説演繹法」の考え方に則って行いました。
(この辺りの話はあまり突っ込みませんがこちらの方のブログが参考になるかと思います)

こちらは当時の学習進度表です。
今見返すと本当に完成度の低い進行表だと感じますが、ここが私の自由進度学習のスタートになりました。

子ども達はというと、とても楽しそうに学んでいました。ペーパーテストの出来も問題なし。一斉授業における積み上げもありましたので、リードする子を中心に本当によく学んでいたと思います。しかし、授業をしていて何かが足りない感覚がありました。

算数の自由進度学習にもチャレンジしました。私が声をかけずとも、子ども達は逞しく学んでいました。しかし、やはり何かが足りない感覚がありました。

自由進度学習の実践は理科1単元、算数2単元を実施してその年度が終了しました。続けていくことに大きな意味も見出せず、結局ここからはしばらく自由進度学習から離れることになります。
何が足りなかったのか、2つです。

1つは、子ども達が各教科の見方・考え方を働かせるための仕組み
そしてもう1つが、子ども達が学習の見通しを持てる仕組みです。

各教科の見方・考え方を働かせる

見方・考え方は、平成29年改定の学習指導要領で提唱された、各教科等の特質に応じた視点や思考の枠組みのことですね。見方・考え方を働かせることで、新しい時代に求められる資質・能力を育成することを目指しています。例えば、国語では「言葉による見方・考え方」を働かせ、言語活動を通して、国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成します。外国語では「異文化理解に基づく見方・考え方」を働かせ、外国語の学びを通して、自分の文化や価値観を見つめ直し、多様な文化や価値観を尊重する資質・能力を育成します。…といった形で、見方・考え方は、教科ごとに異なる特性や目標に沿って、具体的に示されています。
しかし当時私が行った自由進度学習において、教科の「見方・考え方」を働かせて、新しい時代に求められる資質・能力が育成されたかというと疑問です。そもそも授業者である当時の私自身、各教科の「見方・考え方」など意識しておりませんでした。そういった視点がまだまだ欠けていたんですね。
しかし、良い学びを展開している子もいたはずなのです。それを見取れるだけの私の「眼」がありませんでした。

子ども達自身が学習の見通しをもつ

「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」を目指しています。この言葉が出てきて久しいですが、文科省の資料には「自己調整」という言葉がたびたび登場します。

 令和3年答申では以下のとおり、「個別最適な学び」について「指導の個別化」と「学習の個性化」に整理されており、児童生徒が自己調整しながら学習を進めていくことができるよう指導することの重要性が指摘されています。
・全ての子供に基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させ、思考力・判断力・表現力等や、自ら学習を調整しながら粘り強く学習に取り組む態度等を育成するためには、教師が支援の必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどの「指導の個別化」が必要である。
・基礎的・基本的な知識・技能等や、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力等を土台として、幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子供の興味・関心・キャリア形成の方向性等に応じ、探究において課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現を行う等、教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する「学習の個性化」も必要である。

文部科学省HPより

 「指導の個別化」と「学習の個性化」を学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」ですが、これを教師視点から整理した概念が「個に応じた指導」です。学習指導要領の総則では「児童(生徒)の発達の支援」の項目において、「個に応じた指導」の充実を図ることについて示しています。「個に応じた指導」に当たっては、「指導の個別化」と「学習の個性化」という二つの側面を踏まえるとともに、ICTの活用も含め、児童生徒が主体的に学習を進められるよう、それぞれの児童生徒が自分にふさわしい学習方法を模索するような態度を育てることが大切です。

文部科学省HPより

子ども達自身が自らの学びを調整していく力が求められているわけです。
さて私が行った授業がどうだったかというと、自由進度学習でありながら、1コマ1コマがぶつ切りでした。
子ども達には「昨日まで何やってたんだっけ?」「今日何すればいいの?」といった様子が見られ、学習内容が自分ごとになっていないのです。動き出しが遅れ、本来予定していた授業時間を超過してしまうか、進度を合わせるために結局最後に一斉指導で帳尻を合わせる…なんてことにもなりました。当時の子ども達に本当に申し訳ないです。
原因の1つは明らかで、当時の自分は「振り返り」を軽視していたんですね。子ども達自身が自分の学びを俯瞰して振り返るという時間がなければ、学びが深まるはずもありません

振り返りに意味を感じていなかった当時の自分

授業の最後に5分間「振り返りの時間」を取る。当時はその必要性が全く理解できませんでした。著名な先生方もみんな口を揃えて「振り返りは大事だ」と言います。しかし、私は腹に落ちていなかったのです。「その5分を問題演習の時間にでもしたほうがよっぽどいい」とすら考えていました。私の中で授業というものが「教員のもの」になっていたんですね。「授業の主役は子どもだ」と言いながら、心の奥底では思い通りにども達を動かし、見栄えのいい授業がしたかったのだと思います。「先生の教え方が良かった!おかげでわかりました!」は気持ちがいいですが、それって「感想」です。子ども達自身が学びを自分ごととして捉える学習環境にあって初めて「振り返り」に意味が生じるのだと思います。

子ども達が「振り返り」によって自分の学びが深まったと思えるような手立ての必要性を感じました。そのための仕組みが必要です。そうでなければ、自分なりの学びなど生まれようもありません。

プロジェクト学習への取り組み

時を経て、プロジェクト学習に取り組むようになりました。
私のプロジェクト学習の進め方に関しては以下の記事に詳しいです。

課題設定を工夫することにより、子ども達も自分たちが何をすればいいのか自分たちで考えて動くことができるため、学習中にやるべきことに迷う子は格段に減りました。自分たちのゴールに向かって考え、行動できているのです。
しかし一つ困ったことがありました。「時間を全く意識しない」子が多いのです。「時間」というものは残酷です。1学期間ずっと同じ単元を扱うわけにはいきません。見通しを持って、限られた時間の中で各単元における学びを進め、とりあえずは「完了」させなければなりません。私が行ったプロジェクト学習では、ゴールに向かって一所懸命突き進む子ども達の姿は見られたのですが「見通し」が甘い傾向がありました。子ども達は今を全力で生きているんですね。人生においてはとても良いことです。まして子供にとっては必要な経験だとも思います。しかし「時間は有限」です。見通しを持ち、自らの学習を調整していく力の必要性は先にも述べたとおりです。

そんなときふと、2年目にチャレンジした自由進度学習での失敗を思い出しました。
やはり、子ども達自身が自分の学びを調整できるような、「振り返り」によって学びを深めることができるような仕組みが必要だと。

「思考の型」を子ども達に手渡す

ここまで、自由進度学習、プロジェクト学習において私の至らない点を洗い出してきました。やはりどんな実践も、それを行う教員次第です。至らない点は改善していかなければなりません。
私の場合、授業中における子ども達の「思考の型」のようなものが必要だと感じました。何かしようと思った時に「まずはこれから始める」というスイッチ、「何か困った時にはこれをする」という立ち戻れる場所のようなイメージです。

そこで可能性を感じたのがOODA(ウーダ)ループという思考のフレームワークです。
自由を乗りこなす「思考の型」として、これほど相性の良いものはないと感じました。

次回はこのOODAループを組み込んだ授業実践について書いてみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?