「わたしは王様」ショートショート王様

わたしが何も言わなくても、
うまいご飯が出てくる。
美味である。

わたしが拒否すると、
もっと上等なものが差し出される。
最高だ。

わたしが風呂に入ると、
身体を洗ってくれる。
気持ちがいい。

わたしが困ると、
何でも手伝ってくれる。
実に楽。

そうかわたしは王様なのか。
わたし中心に世界は動いている。

わたしが笑うと、みんなが笑う。
なんでだろう。

わたしが泣いても、
みんなが駆け寄ってくれる。
なんでだろう。

ある日突然、
自分でやれと言われた。
今までなんでもやってくれたのに、
何故だ。

笑わせようとふざけたら、
激怒された。
何故だ。

わたしは王様ではなかったのか。
わたし中心に世界は動いていないのか。

王様だったのに突然王様ではなくなった。
何故だ。

でも、
自分の足で歩く外は気持ちがいい。

自分で選ぶご飯は美味い。

自分で着る服はやっぱり似合う。

わたしは王様ではない、
わたしはわたしで生きていく。

一緒に笑おう。一緒に泣こう。

いつかわたしが抱きしめるよ。

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