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Born on May 28th〜出産メモ

遡ること8日前。
37週の妊婦健診で子宮口3センチと言われ、もう出産も近いのかとドキドキした日。
なにが陣痛で前駆陣痛なのかわからず
毎日眠れない夜を過ごす。

38週の妊婦健診。
子宮口の大きさは変わらず。
子宮口が開いてたとてすぐに出産には繋がらないんだと腹を括り、とにかくいつか来るその日のために助産師YouTuberの動画を見まくり、スーパー安産で産んだ方の出産動画も見まくり、陣痛や分娩中に聞きたい曲のプレイリストを作ったり、痛みを和らげる呼吸法、瞑想、ヨガ、ストレッチ、散歩、スクワット…
とにかくなんでもやっといた。

そして5/27の夜。
好きなドラマにかぶりついて見ていたところ突然Jアラートの【国民保護に関する情報】という恐ろしい画面に切り替わる。
何があっても家族とお腹の子を守らねば。
謎の使命感に溢れる。
何の被害もなさそうなのを確認して就寝。
その日はなぜか不思議とよく眠れた。

5/28早朝。
夫が夜中下痢で何度もトイレに行っていたらしい。普段の私だったら絶対気付くはずなのに全然気が付かなかったということはよっぽど深い眠りだったんだろう。
でもなんだか私も下痢のようなお腹の痛みがある。
何か悪いものでも食べたかな。
そんな感じで軽い腹痛を感じながら長女を起こし朝ごはんの準備。身支度をさせて学校へ送り出した。

午前中、ご近所の友人が家に来る約束をしてのだが腹痛で動けなくなってしまう。
9:00来訪予定を11:00にずらしてもらうことに。
なんとか回復したので、11:00から12:30くらいまで楽しくおしゃべり。
喋ってる途中何度か腹痛を感じるも、いつものことだと気にしないようにしていた。
友人が帰ったあと昼ごはんを軽く食べる。とうもろこしをむさぼり食べていると、生理の時のような経血が流れる感覚が。
トイレにかけ込むと、鮮血がそこそこの量流れ出てきていた。

破水じゃなくて血?
不安がよぎり、すぐに赤ちゃんの胎動を確認すると、うんともすんとも動かない。
すぐに病院に電話。30分以内に来てと言われる。

夫は仕事。実家の両親は揃って病院に通院の日だった。
距離的に近いのは両親だったので、母に電話をかけると
「今お昼ご飯食べに行ってて順番待ちしてるからタクシーで行って」
とのこと。
お昼ご飯>娘の緊急事態
マジかよ‼︎
話途中で電話をブチ切りして、さっきまで楽しくお喋りしてた友人に電話をかける。
持つべきものは近くの友。
すぐに車を出してもらい、病院へ到着。
この時13:00。すぐに陣痛室に通され、赤ちゃんの様子を確認。心拍オッケー。
子宮口4センチ、陣痛の間隔5〜6分。

…え?
いつのまにそんな陣痛きてたんだと自分の鈍さにびっくりする。
言われてみれば痛いが、痛みを感じた時は例の呼吸法でだいぶ痛みが和らいでいた。
システマの呼吸法すごい。
サンキューみなみかわ。

思ったより冷静な自分がいた。
こっからめちゃくちゃ痛くなるのは覚悟してる。
だからこの痛みを逃せる段階でなんとか体力温存してこう。
もしかしたら長期戦になるかもしれない。

陣痛の間隔が短くならず、一旦10分間隔に遠のいてく。
しまった。
余裕ぶっこいたらお腹の赤ちゃんも現状に甘んじまってしまったのだな。
ママ、もっと強い陣痛耐えるから一緒に頑張ろう‼︎そう念じて、用意しておいたプレイリストで、まずはライオンキングを流す。

ナーンツィ ゴエンニャーマバギ ジババー

天井の電気がサバンナの真っ赤な朝日に見えた。
生命は巡る。
我が腹に宿りし百獣の王。
さぁ出ておいで!

だんだんと陣痛の痛みが強くなってきた。
赤ちゃんもテンションが上がってきたようだ。

お産をすすめるために、横にならずに立つか座るかの姿勢で、重力をもって赤ちゃんを出やすくする。
テニスボールを自ら尾てい骨に押し当て、全集中の呼吸。

そんな中、仕事を早退して駆けつけた夫が病院に到着。
立ち会い予定の夫。陣痛室に一緒にいるつもりで来てくれたはいいが、私はもうちょっと1人でライオンキングの世界に浸りたかった。

しかも痛みの波が押し寄せると
ツラい時こそ笑顔!
と気味の悪い笑顔を浮かべてフーフー言ってたのでその姿も見られたくなかった。
夫にはとりあえず帰って、と追い払ってしまった。
ごめん夫。

ライオンキングに飽きたので、今度はドラマ、コウノドリで流れる曲リストをかける。
miwaちゃんの【あなたがここにいて抱きしめることができるなら】が流れると、もう胸がいっぱいでボロボロ泣けてくる。
だいぶ痛みが強くなってきていたが、涙で痛みがひいていく。

時に笑い、時に泣き。
陣痛の段階で1人劇場を繰り広げる私。

助産師さんが様子を見に来て、
いい陣痛きてるからもう分娩室行こう!
とまさかの病院到着から2時間で分娩を言い渡される。
今日中には絶対産まれるよ!
その言葉に背中を押されて、陣痛室でのワンマンショーは幕を閉じ、いざ分娩室へ。
そして追い払った夫も分娩室に招集。

子宮口はまだ全開じゃないけど、破水させてお産をすすめることに。
破水してからの痛さは、長女の時に味わっているので覚悟をした。
破水後は一気にお産が進む。
破水のあたたかさで涙も自然と出た。
もうすぐ会える!
助産師さんが気を利かせて、分娩室でコウノドリのサントラを流してくれていた。
長女の時は何故か松田聖子が流れていたことを思い出す。

今までと比べものにならないほどの痛みが襲う。
ここまで一切声を出さずに耐えてきたが、さすがに分娩は声を我慢できない。
呼吸呼吸!と思っても、高らかな声が出てしまう。
さっきまで聞いてたサークルオブライフのラフィキを思い出す。

ア〝ーーーーーーー‼︎
ツィ ゴエンニャーマバギ ジババー‼︎

って歌い出したらみんな笑うかなとふと考える。

もうイキみたい?と確認され、イキみます!と宣言。
もう痛みと痛みの間隔がほぼない状態でイキみ開始。
その直後、枕元に置いた私のスマホに着信が。

こんな時に!しかも鳴り止まない!

着信画面を見ると、アメリカ合衆国テキサス州グランベリーから電話がかかってきている。
生まれてはじめて、アメリカから電話がかかってきた。
私はアメリカに知人はおろか海外すら行ったこともないのに。

いっそのこと電話に出て、
フーアーユー‼︎と叫んでやろうかと思った。

そんなハプニングも掻き消すほどの強い痛みと、イキみの難しさに七転八倒しながら助産師さんに励まされ、息も絶え絶え5回、6回とイキむも途中で力が抜けてしまう。

赤ちゃん頑張れ‼︎あともうちょっと‼︎

自分を鼓舞するように叫ぶ。
もっと気合いを入れなければと思い、
よし‼︎行きます‼︎と
アムロ、行きます‼︎みたいなノリで叫んで思いっきり力を込めた。

赤ちゃん出てきたよー‼︎力抜いてー‼︎

ドロンと出てきた我が子を抱える助産師さんがラフィキに見えた。

なかなか産声が上がらずとたんに不安になる。体も紫色に見える。
数秒たってようやく産声を上げた我が子。

ずっとずっと、健診のエコーでは顔を背けられその顔も想像するのが難しかった君。
頭のサイズだけデカくなり、足の長さが短くなることもあった。
体重もなかなか増えず、時に減ることもあった。
だけど、入院するぐらい酷い悪阻の時でも、君はいつだってお腹の中で元気だった。

お腹が変形するくらい蹴られて
スマホのバイブと間違えるくらいの謎の動きもかましてきたけど、
君が元気でいてくれることだけで
私は安心したし辛くても乗り越えられた。

生まれてきてもまた
大きな泣き声を聞かせてくれて
私を安心させてくれてありがとう。

5/28 17:17
2500gの男の子が生まれました。
黒々した髪が生え、耳はビックリするくらいの福耳。どのパーツより目立つデカい鼻。でも生まれた時の長女にそっくりな表情。
全てが愛おしく、尊い存在。
生まれてきてくれて本当にありがとう。

息子を胸に抱き、そのまま分娩室で休憩。
夫とお喋りしながら幸せを噛み締める。
悪阻で入院した時からお世話になってる助産師さんたちがお産を褒めてくれた。
自分では避けられないと思っていた会陰切開も、奇跡的に切開せずしかも裂傷もなしに産むことができた。
(長女の時は産後会陰切開の痛みに苦しめられた)
分娩室で2時間ほど過ごした後、息子と夫とお別れして、とにかくママはぐっすり寝て休んでねと個室にうつることになった。

…いや、痛い。
寝れない。

あれ?私さっき赤ちゃん産んだんだよね?と思うくらい、陣痛レベルの後陣痛の痛みが体を襲う。
もう私には1人ミュージカルで痛みを逃すような元気はない。
イタタタタタタ…と情けない声を出してただ耐えるしかなかった。

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