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ひとり出版社、再始動(5)

kinologue books4冊目(種類としては3冊目)の書籍「マイヤ・イソラと旅する手帖」を8月11日に発売。3冊目も発売日は11日。1冊目の発売日を決めるとき、11/1=「本の日」より1冊多い11/11にした。発売日を同じ日に決めておくと、納品までのスケジュールが覚えやすいのもある。2冊目は5/11で、連休前の4/27が倉庫への発送日だった。1年前のあの日の自分を思い出すと今でもつらい。あの時何よりも支えになったのはSparks。『スパークス・ブラザーズ』でどハマりしてから、彼らのライブYouTubeをヘビロテしてつらい作業を耐えたのだ。50年以上現役を続けている70代後半のメイル兄弟を見ていると勇気が湧く。去年の今頃はちょうど来日していて「来年出すアルバムが最高傑作」と劇場トークイベントで言っていた。そして今年5月に26枚目のアルバムを発表。有言実行の最高傑作だった。MVではケイト・ブランシェットと夢の共演!今回の作業中にSparksが来日していることに気づき、今年はライブに行けば良かったと激しく後悔。

と、完全に話がそれているようだが、何が言いたいかというと、今回も出荷作業がものすごく大変だったということ。しかし、今回は3冊目につき、かなり計画的に進めることは出来ていた。いつもより多めに印刷していたパンフレットの書籍化なので本体は既に用意されている。TVOD配信開始後に発売予定と決めていたので、発売日や出荷までのスケジュールも早い段階で大体決めることができた。

大好評だった春らしいグリーンのウニッコ表紙を生かすことも考えたが・・・

発売日の2ヶ月前にはトランスビューが全国の書店に郵送する発注書冊子の「特集&ピックアップ」にて1P告知。この時点ではまだカバーの表紙が出来上がってなかったが、書店の反応を見るために告知を始めた。今まではデザイナーさんに作って貰っていた告知PDFを自作できるようになったのも成長、成長。その後、発売前月の「でる」・発売当月の「でた」にも出稿する。告知は早い方がいいとトランスビュー工藤さんから聞いていたが、やはりその通りで、6月に出した時点で書店の注文が結構入り始めた。これまでの2冊では注文がなかったような書店(地元で長く愛される名店も!)からもあって嬉しい。これまで受注管理サイトのBookSellerをほぼ放置していたが、この前トランスビューの封入大会で教えて貰った重複確認を真面目にやってみると、結構あることに気づく。多く発送できるからいいじゃん!という話ではなく、返本のリスクも高まる。問い合わせが必要な書店には直接連絡。出版者を名乗るのは慣れなくてドキドキするが、たまに重複のままでいいという書店もあり、へー、そういうものか、油断ならん。注文は1冊から大手書店で10冊くらい。が、紀伊國屋書店新宿本店から30冊のオーダー!おお、フェアでもやるのか!その後再度30冊の注文があったときにこれは重複に違いないと連絡することに。やはり重複だったのだが、注文して下さった担当の方曰く「フェアではなく、以前、マリメッコの本がものすごく売れたので期待を込めて発注しました!」とのこと。「がんばります〜」と元気よく返答した。どんな風に置かれているのか見に行かねばー!

やはりマリメッコのアイコン、ウニッコの表紙は最強!

デザイナーさんと試行錯誤したカバーが出荷当週に上がって来た。定番の赤ではなく、シックなネイビーのウニッコの表紙、裏表紙は濃いめのイエローで今回は夏らしい感じ。書籍カバーを印刷するのは初めてで、色々と研究した結果、片袖折り加工を入れることにした。確かに以前バイトをしていた蔦屋書店のカバーも片袖が折れていたっけ。加工込みの色校正は出せないので、一発勝負にかけたところ、微妙に背表紙のタイトルがセンターより右寄りに、、、調整したのに難しい。と、同時に配信視聴用の保護シールも上がってきた。これは前回の『〈主婦〉の学校』AFTERBOOKと同じ仕様にした。今回の出荷までの作業工程は7つ。
①本編配信視聴のチケット番号とパスワードが書かれたシールをH3に貼る
②①の上に保護シールを貼る
③カバーをつける
④トランスビュー扱いのシールをカバー裏に貼る
⑥20冊or10冊ごとにキャラメル包装
⑦トランスビューの倉庫3箇所に分けて段ボールに入れ、納品書をつけて発送
この工程をエアコンなし冷風機のみの部屋で黙々と作業。Sparksを聴きながらじゃないと耐えられるはずがない。この作業の話をすると、いつも「手伝いに行ったのに!」と言ってくれる人がいるが、人に頼むための準備をするのも面倒だし、地味な作業は嫌いじゃない。ずっと家に置かれていた在庫がなくなるのはそれだけで気持ちがいいものだし、どんな人が買ってくれるのだろうかと想像しながらの作業も、ひとり出版者の醍醐味かもしれない。

裏表紙の地図は本体の表紙の美しさに気づいて貰うためでもある

カバーの裏表紙は「マイヤの旅先地図」となっている。パンフレットに入れたくて入れられなかったものがこうやって形になって嬉しい。久しぶりに本編を見直してマイヤが訪れた地名を確認し、本編にはなくても映画化の元となった展覧会図録に記載されている旅先の国名はいれることにした。「世界を旅して」という割にはアジアとか来てないのね、という人がいるかもしれないが、1950年代からものすごい数の創作を続けながら、女性が1人で旅を続けてきたことを想像してみてほしい。巻末に収録したマイヤのデザインとこの地図を見ると、誰にも出来ないことをやり遂げたマイヤを、本当に誇らしく思う。

今回、サイズが小さいこともあって短冊を挟み込むのはスキップ、、、すみません!

作業工程④のトランスビュー取引代行シール貼りのことをすっかり忘れていて、気づいた時に愕然とした。しかしこれも大事な作業。次回はシールを発注しておかないと在庫がなくなってきた。そして一番苦手なキャラメル包装。でも今回は本体が印刷されてきたときに包まれていた紙をそのまま使うことが出来たので、かなり作業が軽減した。動画を見ても全然上手くならず、キャラメル包装の極意を誰か教えてほしい。何とか⑦までの作業が予定時間内に無事終了!予定通り、7/27に出荷し8/10に倉庫から発送され、8/11には書店に並び始めたはず。発売日までに納品数の約3/4の注文があった。kinologue booksでは一番良いスタートだが、これくらい普通なのかもしれない。下記kinologueのshopではポストカード特典をつけ、更に前日に予約特典をつけたところ、急に注文がどんどん入る!自分の首を絞める結果となったが、嬉しい悲鳴ということでせっせと発送作業をした。

フィンランドのライフスタイル」展(岩手会場はムーミンや『サウナのあるところ』の上映でもお世話になっている)や「フィンランド・グラスアート」展(庭園美術館以降で調整中)などにもショップでの販売を依頼する。その他イベントや北欧雑貨のお店などにもこれから依頼をかけていくつもりだ。今回は本編視聴可能期間を2年と長くおいたので、それまでに初版完売を目指して地道な努力を続けていく。まだ本当に少しだけだが、書店で本を売るという意味がわかってきた。これからのkinologueの配給にも影響してくるだろう。それも楽しみがひとつ増えたということだと思っている。


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