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おともだちと仲良くなること
会社から帰ってくると、家には誰もいなかった。
妻は近所のカフェバイトの日だ。電話をかけてみると、閉店してオーナーとおしゃべりをしているという。もう帰るよ、という彼女に「別にゆっくりでいいよ」と告げた。冷蔵庫にお吸い物とチャーハンが入っているという事だったので、今日は一人でそれを温めて食べることにする。
妻、と言っても内縁の妻である。扶養に入れているが、籍は入れていない。
数年前、彼女が大学を卒業する時であったか、向こうのご両親に結婚を提案した。これが二つ返事というわけにはいかなかった。
しかし偶然とは興味深いもので、ちょうどご両親の海外転勤のタイミングと重なる。彼女の父親は、精彩を欠いた様子で「まあ、同棲から始めてみて…… 一緒に棲んでみて、合わないという事もあるだろうし。」と、未練がましい調子で言った。
以来、籍を入れず一緒に暮らしている。
彼女は会社から帰ってくると、いつも誰とどんな話をしたのかを報告してくる。どうやら人間関係がちゃくちゃくと育まれているようだ。火にくべるマキが増えるように、話題となる人が増えて、会話が増える。
一緒にうわさ話をするために、お互い共通の登場人物が必要ということだ。
もっともそれは暮らしだけのことではなく、かつて学校でも「そう」だったし、仕事でも「そう」だ。
良きにつけ悪しきにつけ、ずっと「そう」だったと思う。
仲が良くなる、とはお互いの人物評価が一致する事のようだ。
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