「一生懸命に生きるのって辛くない?」れんげ荘物語8弾レビュー。
しあわせの輪/れんげ荘物語第8弾。
初期から読んでるんですけど、まあわたしも長く読んでるなあ。
ラクな気持ちでサラリと読めるからいいんですよね。
内容も、誰も死なないし、やさしい世界観で好き。まったりしているし。
働く気のないキョウコさん。相も変わらず月10万円暮らし。
相変わらずボロボロのれんげ荘で、月10万円でやりくりして暮らすキョウコさん。
すごくマイペースで、人が良くて、責任感が強くて、ちょっと頑固だったりするのかなというのがわたしのキョウコさんの印象。
彼女は、今回ちょっと風邪をひいたことで、
自分の年齢も鑑みて”ダレが自分の介護をするのだろう”、とか
高度な医療や保健制度はめんどう、とか
ちょっとややこしいコトも考えたけど、
「ああネコはいいなあ♡」「とりあえず今は健康のために歩こう」と
マイペースに日々の暮らしに戻る。
お隣のクマガイさんやチユキさんと談笑したり、マユちゃんやコナツさんと電話したり、
義理の姉と頻繁にメール・電話したり、正月にはお家に遊びに行って。
一人暮らしだけど、貧乏暮らしだけど、温かい人間関係が確実にあって、
寂しさとか孤独を感じさせないのは、キョウコさんの人柄ですね。
「子はかすがいならぬ、動物はかすがい。」
お隣に住むチユキさんは、「うちにイヌさん2匹がきてくれなかったら、別れてたかもしれません。」
なんて言う。
義理の姉も、「子供二人が出ていって、倦怠期真っ只中に、ネコちゃんたちを迎え入れて、明るくなった。」
と言う。
子は鎹という言葉があるけど、動物によって人間同士の関係が良好になったり、
明るくなることって多分にあると思う。
我が家も、5か月のネコちゃんを迎え入れたのですが、
もう本当に可愛くて、メロメロです笑
動物って不思議。
どんなに言葉を交わしても分かり合えない人間関係があるのに、
言葉を交わさなくても伝わるような、繋がるような感覚が動物にはある。
資本主義・介護・結婚・老後・親との関係・生と死…意外に奥深いテーマが隠されいる。
このれんげ荘シリーズは、初老のキョウコさんとネコのまったりのほほん暮らしに
見えるけれど、実は社会なテーマがいくつも隠されている。
高給取りだったけれど会社勤めが苦しくなったキョウコさんは早期リタイアして、東京のボロアパートで月10万円で暮らし、年金も繰上げて取得しようとしている。
結婚はせず、一人暮らしで、母親のことが大嫌いで、母子の関係性は
よろしくなかった。
「結婚すればしあわせ、っていうのは幻想なのよ。」
同級生のマユちゃんが本の中で言っている。
お隣に住むチユキさんは、パートナーはいるが、田舎と東京の二拠点生活をしていて、マンションのオーナーで、モデル業もしながら生計を立てている。
キョウコさんより年上のクマガイさんは、
身近な人を3人亡くして、自分の年齢や現実に、意気消沈としている。
「でもこの歳で子供(他人)と住むというのは、めんどくさいっていうか無理なのよ。」と。
お金がないと幸せになれないのか?この国で歳を重ねていくっていうことは?
結婚の在り方って人それぞれだから他人が詮索しなくていいよね。
というような、社会的メッセージが隠れているのだ。
この本の終わりでの、クマガイさんの言葉がいい。
「一生懸命に生きるのって辛くない?(中略)わたしの生活は、だらしがない毎日ですよ。それでも穏便に過ごせればいいんじゃないかしら。」
そして涙まじりに笑いながら言う。
「あなたがやらなくてはならない責任は、生きるということだけですよ。」
れんげ荘物語まだまだ続きそうですね。
おわり
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