ジブリ映画「君たちはどう生きるか」を見たけどわからなすぎたので、2回目見に行ってみたら、ますますわからなくなった話。
【初めて劇場でジブリ映画を観た】
【初めて劇場でジブリ映画を観た】
Twitterで「君たちはどう生きるか」の告知を見た時、なぜか見に行ってみなければという気持ちになった。今までジブリ映画は金曜ロードショーで見ていて、もちろん好きではあったが、そこまでファンというわけでもなかった自分が、なぜか見に行かねばと思ったのだ。
映画館は日曜日だったのもあって空席がほとんどないほどの混み具合だった。映画の予告も終わり、いよいよ上映が始まるという時、私はワクワクしていた。いったいどんな作品が観られるのだろうかと。だが、エンドロールが終わって感じたものは「わからない」だった。感動や興奮よりも先に、とにかく「わからない」。
だが、これはきっと私の理解力の問題だ。もう一度観ればきっと何かわかるはずだと、有給休暇を使って二度目の鑑賞に挑んだ。
しかし、「わからない」。そして、周りの人々が口にしている感想に耳を傾けてみた。聞こえてくるのは「よくわかんなかった。」という言葉。
皆がそうなのか、と思うと同時にこの映画を理解したいと強く思った。宮崎駿監督は、ストーリーやそれを理解してほしいから作品を作っているわけではないとは思う。それでもこの不思議な物語を観てわかったことを整理し、わからなかったことを言葉にするのは、それはそれで意味があることだと思う。お見苦しい文章だが、これを読んでくれた皆さんの感じたことも是非教えていただきたい。
【眞人の行動原理】
この映画の主人公、牧眞人。おそらく小学生の男の子。父親は工場のトップでかなりのお金持ちの家庭のようだ。そんな彼の行動は徹底して母親が軸になっていたように思える。それがわかるのは冒頭の火事のシーンで、父親に「家にいなさい」と制止されたにも関わらず、「僕も行く」と寝間着のままで外に飛び出していた。何より劇中を通して眞人が自己主張をする場面が少なかったことからもそれが伺える。他にも眞人が母親を行動の軸にしていることがわかるシーンはいくつかある。
一つ目は眞人の夢だ。眞人は劇中何度か眠っているが、母親の火事の夢を2度も見ている。1度目は屋敷に着いてすぐ。これは冒頭のシーンの続きのような形。この時は母親が炎となりながら「さよなら」と言って消えていた。目が覚めて泣いていたことからも眞人にとってかなりのトラウマになっている。
2度目は階段から玄関を眺める場面。突如として玄関から炎が吹き上がり、母親が「眞人、助けて」と声を出す。眞人は驚いた様子を見せるが、次の瞬間には寝ており夢だったことがわかる。ただ、これに関しては母親が「助けて」と言う気がしないし、次の場面で青鷺がこの夢の母親と同じセリフを連呼しているため、眞人の深層心理を描写していたかは微妙だ。
二つ目の場面は夏子へのお見舞いだ。お見舞いへの催促は三度されている。一度目は眞人の部屋に父親が来た場面。次にもう一度父親から。最後に、ご飯を食べた後おばあさんの一人から言われてようやくお見舞いに向かった。夏子さんが苦しんでいるのはつわりで、母も酷かったと言われたことが一番の理由だろう。
更に、産屋での眞人の言動も母親への思いから来るものだったと感じる。最初は「夏子さん」と呼ぶが、夏子本人に拒絶されて「夏子母さん」と呼び方を変えている。これは死んだ母への執着から抜け出し、夏子を母親として受け入れた場面で、眞人の物語としてはここがクライマックスであろう。
【眞人の頭の傷の意味】
まずなぜ傷をつけたのかだが、これは単純に、眞人が寂しかったからだと思う。愛が欲しかったのだ。愛する母を失った虚無感を埋めてくれる存在かどうか、夏子を試したのだ。眞人が夏子へ不信感を持っているような描写はいくつかあった。最初の駅の場面で「先に乗って」と言われる前に車に乗っていたり、夏子がお腹を触らせてきた時には帽子で目が隠れる描写がされた。決して学校の奴らを金で黙らせて欲しかった訳ではないのだ。
そもそも眞人は喧嘩に勝っていたのではないだろうか。転校初日に車で乗り付け、綺麗な制服を着た金持ちの息子だ。田舎の子どもたちが良い印象を持つはずがない。事実帰り道にすぐに喧嘩をふっかけられている。直後の眞人は服が汚れてはいるが、傷がついていたり怪我をしている様子はなかった。その後の青鷺との描写からもかなり動けることがわかる。自分が恵まれていることも自覚しつつ、眞人なりに甘えてみたかったのだろう。これなら心配してくれるだろうという期待もあったのかもしれない。
何より眞人はこの傷を「自分の悪意の象徴」と称している。「悪意」が何を示しているかも気になるが、私は単純に「エゴ」ではないかと思う。自分を中心にした考えを巡らせることを「悪意」と呼んでいたのではないか。眞人が傷をつけた理由は、やはり自分のわがままな感情からに来ていたのだと思う。
【おばあちゃんたちの謎】
7人の小人のようだった屋敷のおばあちゃんたちについて。
彼女たちは実は塔のことや大叔父様についてよく知っており、眞人たちが迷い込んだ世界についても知っていたのではないか。
最初に眞人が塔に入ろうとした時、2人のおばあちゃんが呼びに来た。「埋めといたのになぁ」。眞人に「これ何?」質問されても全く答えなかった。眞人が純粋に不思議なものについて質問するのはここくらいなものなのだが、おばあちゃんたちはわざと答えなかったのだろう。他にも、青鷺と接触し気を失った後、木刀が粉々になってしまうシーン。掃除をしながらおばあちゃんは「不思議なこともあるお屋敷だから。」と過去にも何かあったことを仄めかしている。
決定的なのはキリコの発言ではないだろうか。夏子が行方不明になり眞人が森の中に捜索に行こうとするのをキリコは必死で止めている。ただ怖いから止めているとも取れるが、その先に何があるかわかっているから眞人を近づかせないようにしていたのではないか。「館の主人の声は血の繋がってる人にしか聞こえない」と確信をついた発言もしていることからやはり何か知っている。何よりキリコは大叔父様の世界に若い姿で存在していた。「ずっとこの世界にいる」という発言があったことからいつ大叔父様の世界に行ったのかは疑問だが、ヒミと同じ扉で帰っていったのことを考えると外の世界から来たと考えるのが自然だ。そもそもヒミとキリコの年齢を考えると同じ時間軸に帰るのはおかしいとも思うが、ここではあまり触れない。
また、他のおばあちゃんたちについても人形となって眞人を守っていた。「人形に触れるな」とキリコが言った理由もわからないが、眞人が人形に触れてから、元の世界でおばあちゃんたちが眞人の父に塔の本当の成り立ちを話していたので、やはりおばあちゃんたちは塔の秘密を知った上で眞人たちを守るために黙っていたのだと思う。
【わからなかったこと】
・眞人→父への感情
眞人は父親とほとんど目を合わせていないように思えた。お屋敷に着いた時に「あれがお父さんの新しい工場ですよ」と夏子が指をさす場面、眞人は軽く見るが眞人の目線になって工場が見えるという演出はなかった。また、父が眞人のお見舞いに来たときはタオルで目を隠していた。仕事に夢中になり何かあると金に物を言わす父を快く思っていないからだと思ったのだが、その後の戦闘機のコックピットのガラスらしきものが並べられた場面で、眞人は「美しいですね」と発言している。そもそもあのコックピットが何を表しているのかもわからなかったが、この発言で眞人の父への感情もわからなくなってしまった。
・「我ヲ学ブ者ハ死ス」
眞人が迷い込んだ大叔父様の世界で最初に見つけた墓石。ペリカンに突撃されて入る羽目になるが、キリコに助けられる。この時点で意味はわからないが、もっとわからないのは後半で出てくる産屋とこの墓石は全く同じ形をしているということだ。
この墓というのは隕石としてやってきて大叔父様と契約した石と同一だと思ったのだが、その石がヒミや眞人たちを拒絶することと大叔父様の血筋に連なる者しか世界を立て直せないということが矛盾するような気がしてならない。
さらには眞人の「それは木ではありません。墓と同じ悪意ある石です。」という発言もあり、石が何を意味しているのか、なぜ石を積むことで世界を立て直せるのか、さっぱりわからない。
そもそも「我ヲ学ブ者」とは、この映画を理解しようとする我々のことなのかもしれない。
・夏子が産屋に向かった理由
最終的に眞人は夏子を母として受け入れ、夏子もそれを受け入れたことがこの物語の本筋だと考えているのだが、夏子がわざわざ大叔父様の世界に行き、産屋に向かった理由はさっぱりわからない。ヒミは「夏子は帰りたがっていない」と言っていたし、大叔父様の跡を継ぐつもりだったのだろうか?
だが、眞人は「来たくて来たわけじゃないと思う」と夏子を探しに行く時に発言しており、これもまた間違っているとは思えない。
ヒミもヒミでわからない。なぜあの世界にあのタイミングで来ていたのか、なぜ妹のことも大叔父様のことも全て知っているのかなどなど、わからないことだらけである。
・あの世界について
「わらわらが上の世界に昇って人間として生まれる」のが「当たり前」、全部幻の船、「この世界は死んでる奴の方が多い」、外の世界での時間を超越した「時の回廊」、「何度やってもこの島に辿り着く」ペリカンたち、インコでいっぱいになった塔の中、元の世界に帰ったら「忘れた方がいい」そんな世界…。
少なくとも言えるのは、この映画を観て「忘れた方がいい」なんて微塵も思わなかったということだ。
【さいごに】
ここまで読んでくださりありがとうございます。こういった文章や感想を書くのは初めてで、殴り書きのようで読みづらかったと思います。
是非皆さんの感想や「こうだったのでは?」ということを教えてください。
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