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出版社の人に会いに行く~柏書房~ ④


これから出版業界を目指す人へ


千葉「これは最後にお聞きしようと思ってたんですけど、出版業界を目指している若い世代の方々に対して、就活とかも含めてアドバイスや伝えたいことがあればそれをぜひ」

見野「私も、本は好きだと言いつつ、そこまで本をたくさん読むタイプではなくて、読書家でも全くないんですけど、本そのものに興味があったというか…」

千葉「モノとしての本というか」

見野「そう、モノとしての本が好きだっていうのがとてもありました。
だから、読書家じゃないからとか本をあまり読まないから、ということを引け目に感じることはないと思います。編集を目指す方は関係あるかもしれませんが、出版社の仕事は編集だけではないし、本を年間何百冊も読んでいるような人でなくても飛び込める、間口が広い業界だと感じます

見野「あとは、結局人と人との関係性じゃないですか、編集も広報も営業も。だから、人が好きなこと。本が友達っていうよりも、人と会うのを楽しめる人も向いてるな、と思います。あとはなんだろう……私も人にアドバイスできるほどの人間じゃないんですけど(笑)。本というものに魅力を感じていて、なんか面白いフェアを、こういう本の売り出し方をしたらこういう本が売れるんじゃないかなとか、自分が本屋さんでこういう試みをやっていたら行ってみたいなって思うような、本に対するアイデアを持っていれば、いくらでも出版社でやっていけるんじゃないかなと(笑)

木村「若い人たちがね、もっと出版社のいろんな内部のことも知ってくれたら、こんなに面白いんだって知ってくれたらいいですね」

見野「そもそも出版営業という仕事があることもたぶんあまり知られていないし、出版流通のことも、書店では書籍のジャンルごとに棚の担当者がいることもあまり知られていないのではないかと思います。それに、出版社と言えば大手の有名な出版社しか存在しないと思っていて、私たちみたいな出版社があることをたぶん多くの若い人は知らないと思うんですよね、きっと」

千葉「だけど一冊一冊にこんなに情熱を傾けて」

見野「そうです。それは本当に知ってほしいと思っています」

木村「知ってほしいですね」

「本と目が合う」

見野「あ、そうだ。これは絶対言おうと思ってたんだ。(新宿本店の)星店長から「本と目が合う」っていう言葉を教えていただいて。
『だから私はメイクする』を私が本屋さんで見つけた時には、本が私を見つけてくれたんだねって。自分が本を探すんじゃなくて、本が、読まれたい読者を探すことがある。それを「本と目が合う」というけど、見野さんは『だから私はメイクする』と目が合って、この本に人生を変えてもらったんだね、と星店長に言っていただいて。そのとき、ああ、すごく素敵な言葉だなって思ったのを覚えています」

見野「まさに就活で悩んでいるときに、本と目が合うという体験をしたからこそ、時間があるときは積極的に本屋をぶらついています。悩んだり、私の人生なんにもうまくいかないなっていう時に、とりあえず本屋に行って一冊手に取ってみることで、人生が変わることもある。変わらないかもしれないけど、そういう可能性を秘めているのが本屋さんなので、そういった人生の出会いの場としてある書店さんに関わるこの仕事は素敵だなと思います(笑)」

木村「でも本当に誰かの人生を変えてるかもしれないしね、もしかしたら。そう思うと自分も社会の一員であると感じることができると思います」

見野「ほんとに思います。書店さんって、いつも本は入れ替わるじゃないですか。その中で私がお願いして置いてもらった本が誰かの人生を変えてたら、確かに社会の一員というか、貢献してる感があるなって思いますね。
あとやっぱり書店営業って、編集さんとは違って本自体を生み出してるわけではないから、貢献してるかどうかっていうのがなかなか見えづらい。
だけどこういうフェアをやることによって実際の読者の方が「読みました」「フェアを見てこの本を買いました」って言ってくださると「届けられてる」っていう嬉しさはありますね」

「かしわらし」

千葉「では最後に、柏書房さんからいくつかお知らせです」

木村「どれだけの方に見ていただけているかわかりませんが、noteで毎月新刊速報というのを書いてるんですよ。一冊一冊、全部担当を決めていて、担当がその本の特徴などを伝えるようにしています」

見野「営業担当が、一冊一冊丁寧に頑張ってやっています」

見野「あと最近『ノンバイナリースタイルブック』という本を出しまして」

木村「ノンバイナリーをテーマにした本も翻訳書以外なかったんですよね。ちょっと学術的だったり翻訳で専門的なものは他の出版社さんからもあったんですけど、もうちょっと身近に当事者の視点から語れるようなものがあったらいいんじゃないかって編集から話があって。それこそほんとに類書が全然ない中で、いままさに発売したばかりなんですけど」

見野「でも営業をするうえで棚をまたぐ本だと思うんですよ。マンガがあったりイラストがあったり、実用なのかコミックなのか人文なのかエッセイなのかみたいな。でもそういう本、柏書房はすごく多いです」

木村「前に大阪の書店の店長さんにイベントで声をかけてもらって、本を作った編集者と行ったんですけど、もうどんどん作れと。棚に分類できない本を。書店は、その棚を新しく作ればいいんだからと。その言葉にはすごく勇気づけられました。でもやっぱり本屋さんも全然わからない本を置いてくれるわけではないので、それはこちらもしっかり編集者の考えていることと書店さんのギャップを埋める作業も営業……の仕事なのではないでしょうか(笑)」


チラシのすみっこにいた「かしわらし」

千葉「一番最後に、この「かしわらし」ちゃんは、ホームページとかに見つからない気がするんですけど、このチラシ以外のどこにいるんですか(笑)」
見野「私の先輩がデザインしたんですけど、」

木村「コンセプトとしては、どこに飛び出すかわからない、妖怪座敷わらしなんですよ」

見野「X(Twitter)にいるかもしれないし、noteにいるかもしれないし、ホームページにも時々出るかもしれないし。ときどき4コマで登場して、みんな楽しみにしているっていう」

木村「たまにどこかにでてきたり、チラシの片隅にいたりするんですけど、それを見つけた方は非常にハッピーだと」

千葉「そんな楽しいコンセプトがあるとは知りませんでした。
今日は長い時間本当にありがとうございました!」

木村・見野「ありがとうございました!」
 
(2024年3月29日 東京都文京区柏書房会議室にて)

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