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出版社の人に会いに行く~柏書房~ ②


第一弾『24歳新入社員がガチで選んだ同世代に絶対読んでほしい柏の本フェア』誕生秘話

フェアの案内チラシ。「ひとことPOP」としてPOPの文面も提示されている。

千葉「では、いよいよ『24歳新入社員~』フェア誕生の経緯を教えてください」

木村「柏書房は「古文書」や「くずし字」のような、しっかりした歴史書を刊行しているというイメージを持つ人が多いじゃないですか。それが見野の話のように実は新しい世代の人たちに柏書房が違うイメージで響いているっていうのを、なんとか書店さんを通じてお客さんにもっと広められないかなと考えていたんですね。で、私が転職して半年後くらいから何か仕掛けの
フェアを考えようと、お正月明けにみんなで案を出し合うことを宿題にしたんです。それで年明けてじゃあフェアどうするっていう時に、大学のブックセンターにも通っていた見野が考えた「学生に読んでほしい本フェア」みたいなのが土台になったんです」

見野「そうですそうです。何か考えて来いって言われて思うがままに企画書を作ったんです。多分却下されるだろうけど、とりあえず提出してみたら社長が面白がってくださって、即「これで行こう!」っていう感じでしたよね?」

木村「ただ「学生に読んでほしい本」っていうだけじゃインパクトがないし面白みに欠けるなというんで、この会議室でみんなでああだこうだと話しあってたんですよ。そうしたら、(学生に近い)若い新入社員なんだから見野さん個人を前面に出してやろうよ、となったのが一番最初の『24歳新入社員がガチで選んだ同世代に絶対読んでほしい柏の本フェア』ですね」

見野「原型は学生時代からずっと、こういうフェアがあったらいいのになーと思ってきたものでした。就活がつらかった時期を思い出して、本屋さんにもきっと新人で働いている人がいて悩んでて、そういう「個」の人がPOPで本当に推している本があったら面白いなと思ってたので、そういう本を集めたフェアがあればいいのになーって。それを企画書にしてみたら、やっていいよと言ってくれたという感じですね」

木村「それで、書目を見てもらうとわかるんですけど、フェアのジャンルとしてはかなりバラバラなんですよ」

見野「エッセイがあったり……」

木村「理工書もあったり、ジャンルを超えて刊行しているので、あえてまぜこぜにしたフェアにできないかなと。だいたい理工ジャンルだったら理工書のフェアみたいな形に書店さんではなりがちだし、そういうのがまあセオリーだったりするじゃないですか。で、この難題をどうくぐりぬけるかっていう(笑)」

見野「(笑)」

木村「考えたのが、じゃあ見野さんを前面に出そうと。それで、見野さんPOPを作りたかったんだよね?」

見野「はい、POPが大好きなんですよ

木村「そのPOPを武器にして、それをフォーカスできるようなテーマを組んで、どうせだったらこの注文書に最初からPOPの文言を入れて書店さんに見てもらって、この本はこういうふうに推したいんですっていうのを最初の段階で提示しようよと。そういうような建付けを考えてきたんですよ」

木村「そうしたら、彼女のこの勢いのある手書きのPOP文字と、この爆弾(フェアタイトルのこと)を」

見野「爆弾(笑)」

木村「爆発を、面白がってみてくれる書店さんが思いのほか多かったんですね。それをSNSで拡散したら、面白いからやりたいって受け入れてくれる書店さんが徐々に増えていって、結局何店舗くらいいったんだっけ?」

見野「100超えたと思います」

木村「100店舗まであれよあれよと…。これはすごいことだと(笑)。
最初は20店舗いければいいよね、という感じだったんですけど。小さく動き出したフェアが、だんだん話題になって、業界紙にも取り上げられて」

千葉「完全にタイトル勝ちですよね(笑)」

見野「(笑)」

第二弾『3年目の壁にぶち当たった私がガチで選んだ仕事とか恋愛とか人生とかについてモヤってる同世代に絶対読んでほしい柏の本フェア』

第二弾フェアの案内チラシ。『24歳新入社員~』がパワーアップして帰ってきた!

木村「それで、じゃあ次どうするかってなるわけですよ。100店舗でこの20点規模のフェアが取れるという事は、売上的にも、結構大きな売上になるじゃないですか。で来年どうする?っていうことで、次が」

見野「これですね(『3年目~』のチラシを出す)。一回目が成功したので、二回目もまた「ガチ本」やろうということになったんですけど、全然アイデアが出なくって。藁にもすがる思いでいつもお世話になっている埼玉の書店員さんに「フェアのアイデアが出なくて悩んでるんですけど、どうしたらいいと思いますか?」って聞いてみたんです。そしたら、前回のフェアもジャンルがあったわけじゃなくて、生き方という軸をもとに集めた本のフェアだったんだから、今回も「あなたの生き方をフェアにしなさい」っていう、まさに目からウロコな啓示をいただいたんです。じゃあ私は今3年目の節目でいろいろ悩んでいるから「3年目の壁」をテーマにしたフェアを作ろうと思いつきました。なので、これはその書店員さんにヒントをいただいてできたフェアです」

千葉「凄腕のアドバイザーですね(笑)。ラインナップはわりと変わってるんでしたっけ?」

見野「そうです。新刊を結構入れてみたり」

木村「『ストーリー・オブ・マイ・キャリア』という少し前の本を入れてみたら、これが意外と売れたりとか」
見野「売れましたね」

見野「かなり前の既刊も掘り出してきて入れましたね。それで、これまだ売れるんだ!というのが結構発見できた、というのが『3年目の壁』のフェアだったと思います」

千葉「じゃあこれは前回の100店よりもさらに伸びた感じですか?」

見野「同じくらいで、100ちょっとですね」

千葉「面白がる書店の数が全国にそれくらいなんですかね?(笑)」

見野「ほんとに(笑)。今年もやりますとX(Twitter)で言ったら「今年もやるならやりますよ」って言ってくださる書店員さんがすごく多かったですね。前回売れたから今回もやりましょうって。だから、とても営業しやすかったです」

紀伊國屋書店新宿本店でのトークイベント

(2023年3月30日に行われた新宿本店3階アカデミック・ラウンジでのトークイベント出版社営業の若手女子が語る「出版営業って何!? から始まった私が3年目を前に今感じていることと、これから挑戦していきたいこと」

木村「この『3年目の壁』の時、(紀伊國屋書店新宿本店の)星店長が、フェアをやるにあたってイベントで見野さんと話そうよと言ってくれて、いろいろと根掘り葉掘り聞いていただいて」

千葉「トークイベントに誘われたときはどんな感じだったんですか?」

見野「星店長は第一回の『ガチ本フェア』を知ってくださっていて、木村が第二弾をご案内した時に、せっかく二回目を開催するなら一回目とは違うアプローチ、特にもっと自分を前面に出してフェアプロモーションをしてはどうか、ということで新宿本店アカデミックラウンジでの対談をご提案いただきました」

千葉「提案されて、どう思いましたか?」

見野「正直、「星店長は正気なのか」と思ったことをよく覚えています(笑)。有名でもなんでもない私がトークイベントを開催したところで、誰も来場するわけがないと思ったからです。でも、星店長から教えていただいた金井美恵子さん「物を書くのに名を惜しむ権利なんてないのよ」という言葉が私にとってすごく新鮮で、有名人でもない個人、特に著者や編集者が前に出がちな出版業界で営業部員がでしゃばることは内輪ネタっぽくなってしまって良くない、と考えていた私の価値観を完全にひっくり返されました」

木村「イベントにはけっこう友だちも来てくれたんだよね」

見野「(笑)私は人が集まるわけないと本気で思っていて……、誰がこんな謎の新人の謎のイベントに集まるんだと思っていたし、会社のみんなにも心配されていたので、友達7人くらいにサクラを頼みました(笑)。お願いだからイベントに来てくれってことで(笑)。結果的に友達以外にも50人近くの方に来ていただきましたが、星店長をはじめ紀伊國屋書店のみなさまが周知してくださったおかげです」

木村「友達からは、あのあと感想とかあったの?」

見野「ありました。謎のフェアをしたと思ったら謎のトークイベントを開催して本当に謎なことをしてるねと(笑)。でもよかったよと。見野のフェアを見に来たついでにいろんな本買っちゃったとか」

千葉「イベントに来てくれた他の出版社の方とも交流ができたと聞きました」

見野「今でも連絡をとったりしていて、あのイベントは他の出版社の若い編集さんともつながりましたし、よかったですね。私が思ってるよりもたくさんの方に来ていただいて本当にありがたい機会をいただいたと思っています」

千葉「出版社の若い方たちで集まっていろんな面白いことを考えてもらって、合同でなんか新しいことができたらいいですね」

見野「できたらなーって思いますね」

千葉「その時はフェアやりますので(笑)実験的にでもいいんで、ぜひ声をかけてください」

③に続く

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3年間の「ガチ本フェア」の書目はこちら!!


アーカイブページとして、見野さんの書店向けフェア案内メッセージと、
各書籍につけられたフェアPOPと同じコメントを読むことができます!
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第一弾『24歳新入社員がガチで選んだ同世代に絶対読んでほしい柏の本フェア』

第二弾『3年目の壁にぶち当たった私がガチで選んだ仕事とか恋愛とか人生とかについてモヤってる同世代に絶対読んでほしい柏の本フェア』

第三弾『後輩に抜かれつつある私がガチで選んだ同じプレッシャーに苦しむあなたに絶対読んでほしい柏の本フェア』