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古建築さんぽvol.2 岩上神社

岩上神社にたどりつくまで

誰もいない神社やお寺を散策するのが好きです。

仕事で訪れた淡路島のとある小さな集落で、たまたま教えてもらった神社に行ってみました。前情報なく訪ねて歩くと、素晴らしいものに出会うこともあれば、がっかりする確率もまあまあ高く、その日の運試しみたいなところもあります。

タイトルの写真は神社の鳥居の前から、神社の方向を見たものです。
一応は手書きの看板がかかっており、それによると鳥居から神社までは、
約200m程度山を登るらしい。
神社へのアプローチは、時として鬱蒼としたなのです。

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途中に、山桜の倒木が。
樹皮は腐りにくいので中身だけが先に朽ちています。樹皮だけになっている枝が多数転がっている所をみると、倒れて久しいようですが、誰も撤去にきた形跡はありません。
本当に神社あるのかな?とちょっと不安になりつつ、登り続けます。

道しるべになる巨樹

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人の気配のない道を歩いていると、道標や建物といった人間の作ったものがあると安心しますが、目印になるような大きな木に出会うことでも、ほっとします。山道を登り、少し拓けた場所までたどり着くと、岩神寺というお寺のお堂があり、大きなイチョウの木が出迎えてくれました。

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岩神寺から更に上に伸びる階段の先が、どうやら目的地。
階段の左手には大きな楠が生えています。
楠の大木は決して珍しいものではありませんが、淡路島は暖かいためか、
比較的大きなクラスの楠を見ることが出来ます。

ようやく神社境内へ

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階段を登るとすぐに拝殿。それほど古い建物ではなさそう…
まずは「見せてください」と拝んでから見せて頂く事に決めておりますので、お参りをすませて拝殿の裏にまわります。
と、なんか普通の建物(失礼)が建っていました。あれ?

本殿は保護の目的で覆い屋に囲まれて、見えない事がありますので、ここもそういうパターンかな?と中を覗いた所、中に本殿はありません。
ということは、この普通の建物は幣殿(拝殿と本殿の間で祭祀を行う建物のこと)ですので更に裏へまわると…

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おおーっ!!!

本殿です!キラキラです!これは嬉しい予想外。
こちらの本殿は春日造で、本来はとてもシンプルな様式なのですが、
これでもかというくらい複雑に組まれた組み物と、凝った装飾。
彩色も色鮮やかで、彫刻にも細部にまでこだわりがあります。

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本殿のそばに手書きの解説板があり、「尾棰鼻をア・ン(注:ママ)の象鼻にした特異の意匠」と書かれているので組み物を見てみましょう。
青い色で塗られた斜めに下がった部材が尾棰(尾垂木)です。
先端に白い象が彫刻されており、確かに口の形が「阿(ア)」になっているものと「吽(ウン)」になっているものがあります。
このあたりの意匠も、神仏混合の名残なのでしょうか。
こちらの本殿は兵庫県指定の重要文化財、室町時代の建造。社伝によると、奈良県よりの移築で、平成15年に解体修理されたことにより、組み物の極彩色が蘇ったそうです。

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本殿の裏にまわると「神籠石(ひもろぎいし)」という大きな岩が。
同じく神社の解説板によると、室町時代に社殿が出来るより以前から、この岩は神聖な神様として祀られていたそうです。

鎮守の森を歩く

無事に建物に巡り会えたあとは、周りの森にどんな木が生えているのかを
チェックしながら帰ります。
私が判別出来たのは、ヤマモモ、楠、スダジイ、リョウブ、山桜、ソヨゴ、クロガネモチ、アキニレなどですが、この森の中で印象的だったのが、写真の「カクレミノ」

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同じ1本の木でも全縁(葉っぱのふちがまるい)の葉っぱと、分裂葉といって、分裂した葉っぱが混在している不思議な木です。
カクレミノは神社の境内などに植えられることがあるようですが、この森ではとても沢山生えていました。

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神社を降りて車を少し走らせたならば、すぐに
淡路島は、山と海のどちらにも恵まれた、本当にいい島ですね。

岩上神社所在地: 淡路市一之宮柳沢乙614



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