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バスキア展で説明不足すぎて泣きそうになった話

ちょっと前の話になりますが、先日滑り込みでバスキア展に行ってきました。友人たちから「激混み」と聞いていたので、前日に入場券だけ購入。待たずに入場できました。入り口では音声ガイダンスを無料で配布している太っ腹ぶり。なぜかというと、驚くべきことにこの展示には一切説明がないのです!

説明なしのシンプル空間

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真っ白な箱の空間に、規則正しく並ぶバスキアの約130点におよぶ作品たち。数分の音声ガイダンス(13個)以外は何もなし。清々しいくらい無。

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…も、物足りない!圧倒的に説明不足~!!!もっと勉強してくればよかった~!

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もちろん、バスキアの作品は凄かった。一つ一つが大きく色彩豊かな彼の作品は大迫力!目の当たりにすると強烈なインパクトと、まるで触ったらペンキがつきそうな「リアルタイム感」がありました。体の中から溢れ出てくる言葉やイメージを、口にするより先にたまらずキャンバスに吐き出しているみたい。

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でも!それ以上にバスキアの芸術の中から何を訴えたいのか汲み取るには、専門家の力が必要でした…。タイトルは無題も多いので、絵から感じ取るには限界があります。

バスキアに関して、絵とぼんやりとした概要しか知らないという人は多かったはず。恥ずかしながら私がそうです。作家活動は10年あまりにもかかわらず、ドローイングを含め4000点近くの膨大な作品を残したバスキア。彼をそこまで突き動かした創作の源はなんだったのか。一気にスターダムの階段を駆け上がったのはなぜだろう。モヤモヤしたまま作品の海を泳いでいたら、あっという間に展示は終わってしまいました。

素晴らしい図録

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情報不足でクラクラしていたわたし。これから東京の街を練り歩くというのに、ゼクシイ三冊分ぐらいある分厚い図録を購入してしまいました。(厚み比較のため友人からもらった柿と比較。)図録の編集は今回の展示キュレーターも務めたオーストリア出身のディーターブッフハートさん。バスキア研究では世界的権威だそうです。

これが、とてもとても良かったです。まず、今回の展示タイトル「メイドインジャパン」に込められた意味と、バスキアと日本の関係性、バスキアの作品に共通する信念が書かれています。そのあと、今回の展示を8つのキーワードでセクション分けし、作品を深堀する解説が続きます。ヒルズのスタバで、時間を忘れてかぶりつく様に読んでしまいました。

浮かぶ疑問

しかし…なんでこれが展示で再現できなかったの~~~!?わからない~~!なんでこんな図録と展示で差があるの~~~!?!?(2度めの混乱)

完全なる憶測だけど、私の見解は2つ。
1.日本でバスキアは人気があるので、来場者はすでにバックボーンは知っているため、十分音声ガイドで足りると開催者は思っていた。
2.説明や凝った展示で立ち止まる人を作りたくなかった。

特に2に関しては、立ち止まる人が増えると、一度に入る人が減り、ただでさえ数時間待つような人数を捌ききれません。この展示で最も達成したい最重要KPIは、来館人数だったのでしょう。

でも、せっかくあんなに貴重な作品がたくさん集まったし、すばらしい有識者の知見も集まっているのに、来場者の心にバスキアの信念が伝わらず、スマホに写真保存で終わりじゃあんまりです。天国のバスキアも浮かばれないよ。

もし次回開催するなら…

次開催することがあれば、図録に沿ったキーワードことのセクション(説明あり)に加え、もっと空間をふんだんに使って、多角面から考察した展示が見たいなあと思いました。

以前森美術館で見たコルビジェ展で、ユニットタイプの集合住宅の1つが丸々再現されたコーナーがありとても面白かったので、作品と同じぐらい有名なあのアトリエでバスキア気分を味わいたいな!(インスタ映えもしそう!)
あとは、意外とジャズ好き(ヒップホップ創世記とドンピシャな時期&場所(Brooklyn)なのにね…笑)なバスキア。サッチモやCパーカーをレコードで作品と元になった曲をあわせてを聞いてみたい!(会場は無音でした)あとは日本電化製品が飛ぶ鳥を落とす勢いだったそうで、そう言った作品も多かったから、どんなラインナップがあったか並べたら面白そう!

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<余談>

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今、キャプションなしの美術展って流行っているのかもしれません。先日東京オペラシティーで見た「ジュリアンオピー展」は、作品解説は一切ありませんでした。新国立美術館で行われた「クリスチャン・ボルタンスキー展」も、作品解説やキャプションがない代わりに、来場者には新聞のような会場地図が配られたといいます。

ただ、どちらの展示にも共通するのは、作者自身が会場プロデュースしていて、会場全体もひとつの作品であるということ。キャプションがなくても、作品のセレクトや並べ方から、作家の意図が伝わります。

今回のバスキア展のような、一人のアーティストの作品を生涯にわたって紹介する回顧展は、やはりキャプションで導線を引くのは未だにスタンダードな形ではないでしょうか。

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今年の正月に行ったNYのMomaイベントスペースでも、説明は数多く見られました。写真だと分かりづらいですが、奥の作品の隣に小さい字でおびただしい量の作品解説がされています。

ただここまでの解説なしじゃなかったら血眼で情報を集めてなかったと思うので、逆にバスキアを深く知れるいい機会になったかな?

きん

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