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ライブレポート:サカナクション「SAKANAQUARIUM アダプトTOUR」

2022年、2本目のライブはサカナクション。
サカナクションとしては実に2年ぶりとなる有観客ライブ。
個人としては、サカナクションのライブは2018年の5月に見たJAPANJAMの大トリと、2020年の夏にあった光ONLINEの配信ライブで見た過去二回。
それ以来と考えると、生で見るのは4年半ぶりでした。
なお、ヘッダーは公式サイトから拝借しました。

全身黒い服を着て家を出た。
多分、山口さんと言えば、黒い服のイメージだからだ。
会場に着くと案の定、他のお客さんもほとんど黒い服を着ている。
もちろんそれは、ツアーTシャツが黒のみの販売というのもあるかもしれないが、ちょっと驚くほど黒かった。

更にもう一つ驚いたのは会場の落ち着き具合だ。1時間ほど前から入場して開演を待っていたが、誰も浮かれていない。これがサカナクションのファンなのか、、やはりファンとアーティストは似るものなのかもしれない。

開演。
光の中から登場するメンバー、会場を照らす照明は深海を思わせる青。

一曲目はmultiple exposure。
胸の辺りにぐんと響く低音に、ようやく生のライブであることを実感する。あまりにも良すぎる音響設備。サカナクションのライブに行ってしまったら、他のライブにいけなくなるんじゃないかと不安になるほどの音の聴こえ心地の良さ。
「リアルライブに来てよかった」、絶対にそう思わせてやろうという彼らのプライドには感無量である。

二曲目はなんてったって春。
この曲を初めて聞いたのは多分中3だと思う。例によって幼馴染から勧められて、一緒に口ずさみながら下校していた。どう考えても私の音楽人生に最も強い影響を与えた人物は彼女である。この曲を生で聴ける日が来るとは。
一緒に行った友人の受け売りだが、やはり南西スタンドに立って聞くなんてったって春は最高だった。

続く曲のほとんどが死ぬほど踊れる曲だった。
人生で初めて頭の中に「Dope」という単語が浮かんだ。
昨今では「emotional」を意味する「エモい」が使われることが多いが、正直「エモい」では足りない。
これもまた、リアルライブに来たことを絶対に後悔はさせないぞという彼らのプライドのように思えた。
そして、その想いに応答するかのように、一言も声を出さず、ハンドサインと手拍子を返すファン。世界一尊くて、美しいコミュニケーション。

二階席だったこともあり、ライブ中は終始、人々がステージに手を伸ばすのが見えた。
それはまるで、深海の魚たちがその世界の神に向かって泳いでいるようで、我々の前世はきっと魚だったのかもしれない、と思った。
そして、人間に生まれ変わって、サカナクションの音楽に出会えて良かったと心底思った。いや、もしかすると魚も音楽を聞くのかもしれないが。

今回のツアーテーマである「アダプト」は、コロナへの適用を意味する。
コロナ禍において、音楽業界は大きな影響を受けた。サカナクションも2020年のツアーキャンセルを余儀無くされた。
そこからずっともがいて、もがいて、このアダプトプロジェクトを始めたと山口さんは話した。

通常であればアルバムを発売して、リアルライブをして、オンラインライブをする、という流れに対し、オンラインライブをして、リアルライブをして、アルバムを発売するという逆行を魅せるアダプトプロジェクト。
そんなことは、サカナクションでなければ実行できないように思える。

やはり、日本の音楽業界に革命を起こすロックバンドは、サカナクションなのかもしれない。今回のライブを通して、日本のロックバンドとして、彼らにしかできない革命を目の当たりにしたような気がした。

今回のアダプトプロジェクトは3月30日のアルバム発売を持って完成されると見られる。その次は、応用を意味する「アプライ」が始まる。
コロナ禍におけるサカナクションの「アプライ」とはどのようなものなのか。彼らの革命を見逃してはならない。














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