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【無料記事】若手プロに知ってもらいたいこと 桜蕾戦と若獅子戦について

【開催の目的】

 桜蕾戦若獅子戦「推薦枠」がある非常に特殊なタイトル戦です。
 2021年に瀬戸熊直樹プロが森山茂和会長に直訴して設立された若手のためのタイトル戦なのですが、その詳細を決める際に会長から「推薦枠を作るのはどうか」という提案がありました。
 瀬戸熊さんからプレゼンを受け、会長がGOサインを出した理由の一つとして「新しいスター選手をタイミングよく世に出したい」という考えがあったからです。
 新しいスター選手の条件は「麻雀が強くて魅力的で、プロ意識が高くてプロ雀士としての人気が出そうな人」です。で、プロ連盟が主催してそれをやるわけですから、もう一つ「将来的にプロ連盟に寄与してくれそうな人」というのが付け加われば最強ですよね。
 そういう人が優勝すれば、タイトル戦の価値が上がり、ファンが増え、所属する他の選手たちにもメリットが生まれます。
 それに優勝できなくても、スター候補選手が準決勝とか決勝にいた方が試合内容もよくなるし、注目度も上がります。対戦相手にとってもめちゃくちゃメリットがあるんですよ。
 いわゆる「しょっぱい試合」で優勝するよりも「面白かった!」とファンに思われる戦いで、若手でも注目された選手に勝った方が「価値」が高くなるじゃないですか。
 そうなる確率を少しでも上げるために推薦というシステムを導入しているんです。

過去の桜蕾戦優勝者、伊達朱里紗(第1期)・菅原千瑛(第2期)・廣岡璃奈(第3期)は推薦からの戴冠


 「麻雀プロ業界」というエンタメ産業を成長させていくには、そうやって選手と団体を育て、ファンを楽しませていくという方法をとるのが王道なんですよね。
 プロ連盟は、タイトル戦以外の部分で、ではありますが、昔からそういう方法論でやってきて、今のような「たくさん面白いスター選手がいる団体」になっていったと私は思っています。タイトル戦で勝った人をスターにしていく作業と、最初からスター誕生を狙って開催するイベントの、その中間ぐらいが若獅子戦と桜蕾戦なのです。
 2つのタイトル戦が特殊なのは、推薦枠があることと、年齢が限定されていること、それと予算の出し方もちょっと違います。
 桜蕾戦と若獅子戦を開催するための費用って、賞金や番組制作費も含めると年間で結構な金額になりますが、それは現時点でスター選手な人たちと、会長とか私とか山井弘とか古橋崇志とか、ほかにもたくさんいますけど、裏方で働いている人の力で稼いだ事業の収益から出ているんですよ。あんまりこうやって「俺らがんばってるぜ」って言いたくはないけど、実際そうなんです。団体の会費を集めて、そのお金だけでやって、賞金はスポンサーにお願いするっていうやり方のタイトル戦とは、ちょっと違うんですよ。
 経済のことがよく分からない人がいるかもしれないので、架空の例を挙げて具体的に説明しますね。あくまでもフィクションですから誤解しないでくださいよ。

 たとえば白鳥翔さんをイベントにお招きしたいという話が連盟に来たとしましょう。分かりやすくするためギャラは100万円とします。その話を請けて、白鳥さんには90万円を支払います。ギャラ交渉やスケジュール調整、内容確認、当日の送り迎えなどをした担当者に3万円支払えば、会社には7万円が残ります。こうやって残った7万円は、普通の会社なら利益として残されて、課税されて残った分が株主に配当されたり社員のボーナスになったりするのですが、プロ連盟は株主配当のためにやっているわけではないので、ほぼ全額を次の事業に投資します。それがファンの楽しみになったり、所属選手への還元になるわけです。

 桜蕾戦や若獅子戦もその「投資」に近い感覚で開催されたんですよね。さっきの例(あくまでもフィクションですよ)で言えば、白鳥さんが97万円もらえばいいところを90万円しかもらわず、後輩たちのために7万円寄付しているようなものなんです。それが将来の連盟のためになり、ひいては麻雀界のためになるからこそ投資しているわけですよ。
 それで審査員の仕事やらされて、ギャラは1万円か2万円か知らんけど引き受けて、後輩たちのために真面目に審査して。その結果「えこひいきだ」とか言われたらやってられないですよ。いや、何度も言いますが、フィクションなので「もしそうなったら」って話ですけどね。
 それと、実際には普通の資本主義社会と同じで、知らない内に搾取されていますから、白鳥さん本人に「寄付してる」ってう感覚はありません。でも、よーく構造と仕組みを考えてみたら、そういうことなんですよ。

【炎上をおそれる必要はない】

 この2つのタイトル戦の内容を詰める会議の際に、会長と私は、現行のシステムよりも、もっと「推薦」が強い形を望みました。まだ見ぬ埋もれた才能を発掘するのも大切ですが、すでに力があって人気も出そうなのに、その日の運がないだけで世に出るのが遅くなるのは、全員にとってマイナスでしかありません。
 だから私の個人的意見としては、推薦の人数なども、もっと多くしてほしかったんですよ。それに、推薦する選手は予選を打たせなくても良いのではないかとまで言ったんです。
 でも、最終的には瀬戸熊さんの「推薦されない選手からの反発も予想できる」という意見を尊重し、現在の形に落ち着きました。あくまでも予選を打たせて、審査員が麻雀をしっかり見て、総合的に判断して推薦する方が良いという意見にも納得しました。

 それでも私は「予選の成績にかかわらず、力がある人はどんどん推薦してほしいです」という要望を出しましたが、実際には現場の審査員の人たちの意見の方が強くなります。
 こっちは現場のことも知らず、理想論であーだこーだ言っているだけです。でも、選手たちが戦っている姿を目の当たりにした審査員たちには、もっと別の「意識」が芽生えます。
 やっぱり、まだ技量が未熟で無名でも、惜しいところまで行った選手にもう一度チャンスをあげたい。
 そんな風に思うのが普通の人間ですよね。
 結局、運営担当者や審査員たちが新しいルールを決めました。それが「推薦は一度まで」というものです。何回も同じ選手が推薦を受けていると、批判が集まったりしてその選手にとっても良くない、というのが理由です。
 今回の件について批判している人の中には「推薦を受けたAさんよりも成績が上の人がいるのに」という論もありました。それはそれで気持ちは分かりますけど、成績順で推薦するなら、それ推薦って言わないじゃないですか。
 にもかかわらず、成績をたよりに推薦を決めるのであれば、審査員の仕事として「思考放棄」だし「事なかれ主義」だし「情にほだされすぎのえこひいき」だと私は思います。

過去の若獅子戦優勝者、阿久津翔太(第1期)・松本峻(第2期)・早川健太(第3期)も推薦からの戴冠

 逆に言えば「成績が下位なのに推薦された」ことに大きな意味があるのです。「えこひいきだ」というのはいかにもステレオタイプの短絡的な考え方です。現実はもっと面白くてイレギュラーなことだらけです。「自分から見たら力量が劣りそうなこの選手が推薦された。しかも成績があまりよくないのに」という事例を見つけたら、生放送でその選手の麻雀を観てみればいいんですよ。それでカッコいい麻雀を打っていたら「審査員の眼はさすがだな」と思ってください。逆にダメダメだったら「審査員、どこ見てんの」という批判をしても良いと思いますよ。
 予選の成績表だけを見て「不当だ」とか「えこひいきだ」っていうのは、自分も疲れるし他人も嫌な気分になるじゃないですか。何かしら興味を持たれたのであれば、ちゃんと見た上で批評をしていただけたら嬉しいです。
 推薦で選ばれた選手はここからが勝負ですよ。対戦相手だけじゃなくて、ファンや視聴者との勝負でもあります。堂々と胸を張って頑張ってください。ファンに良い麻雀を見せて、推薦者の判断が間違っていなかったことを証明してほしいと思います。

 批判者の中には「こんなことしたら炎上するに決まってるだろ」と言う人もいましたが、それって「炎上が嫌だ」っていう固定観念を他人に押し付けているだけなんですよ。放火魔に家を燃やされたら困りますけど、別にTwitterで炎上したって何にも支障はありません。炎上させたがっている人は、火をつけたら困るだろうと思ってやっているわけで、つまりそれは「嫌がらせ」が目的なのです。でも、実際に火がついて財産が燃えるわけじゃないので、どうでも良いんです。嫌がれば嫌がるほど、ネット上の放火魔が面白がるだけなので、放っておくのが一番ですよ。

 新聞が政府を批判するように、さも「公共性」があるような論調で批判をしてくる人もいますが、多くの麻雀ファンは素直に楽しんで観てくれます。良い麻雀を見せれば応援してくれるのです。
 推薦されたことで批判を受けて、嫌がらせをされている人たちも、まったく気にする必要はありません。
 むしろ批判する人が多ければ多いほど注目が集まっているのですから、活躍するチャンスだと思ってください。
 それでも精神的につらいなど、困ったことがあれば理事の誰かに相談するなどしてください。必要があれば名誉棄損で訴えることもできますし、その手助けもできますから、法務部長でもある私にご連絡をください。

※記事の一部を削除しました
 
(了)

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