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補聴援助システム試用してみた。(in 67回聴覚医学会)

補聴援助システムって?

先ず「補聴援助システムって何」という方が多そうなので簡単に説明。
フォナック社のロジャーシステムなんかが代表的ですが、送信機と受信機(概ね、「マイクとレシーバー」という認識でOK)で構成される聞き取りを改善するためのシステムの事を指します。

システムだけでの使用も、補聴器等周辺機器との接続も可能です。
公式説明はこちら等から

試用者の特性

聴力正常、APD/LiD(聴覚情報処理障害/聞き取り困難)当事者です

試用した機器

送信機

フォナック社製
・ロジャーオン
・ロジャーセレクト

受信機

・ロジャーフォーカスⅡ(片耳装用)
・ロジャーネックループ+ノイズキャンセリング(NC)ヘッドホン *BOSE製

試用シーン

・ホール会場での情報保障として
・打ち合わせ会場で

試用しての感想(あくまで個人の感想です)

・良い点

特にホール会場では、雑音が多少減って音声の音源が近くなるので聞き取り易さはどの受信機でもアップする。
雑音の抑制具合としてはネックループ+NCヘッドホンに軍配が上がる、音質もこちらの方が優れていたように感じる。
ステージ脇にUDトークによる字幕表示もされており、裸耳では字幕と音声双方に注意しないと話の内容についていけなかったが、ネックループ使用時は字幕を殆ど見なくても内容にほぼついていけた。

ネックループはかなり小さいので、上着を着ていれば胸ポケットに入れての使用が可能。
内ポケットに入れてからNCイヤホンを繋ぐと、有線でもかなり目立たない形での使用も可能かも。

打ち合わせ時、そこまで雑音が多い状況ではないので入ってくる音声の質そのものは大きくは変わらない
但し、音源の方向が頻繁に変わる状況(話し手がコロコロ変わる)では誰が話者なのかを確認する為、一瞬周囲を確認するストレスが減少したように思う。
ロジャーオンの方がホワイトノイズが少し小さかったように感じた。

全体としてはどの機器の組み合わせでも裸耳よりは聞き取り易く感じた。

・改善の余地がありそうな点

APD/LiDの当事者の場合、フォーカス2はイヤーモールド使用前提で比較したほうが良かったかも。
ホールでの使用の場合、ネックループではBluetoothが入るのにフォーカス2だと入らないという場面が頻発した、たまたまの可能性もある。
ロジャーセレクトは意外と音声を拾う範囲がそこまで広くない、
カフェテーブルで話す程度ならいいが会議室で机をロの字に並べるような状況では反対側の音声はほぼ拾えない、そういうシーンならテーブルマイクかロジャーオンが必要。

ネックループはオーディオプラグの差込口の接触が悪い(これは共通らしい)、音が出なかったり片耳だけ聞こえる事が割と頻繁に発生する。
コツとしてはぐっと押し込む事、一度安定して音が入るようになればそのままで大丈夫。

音質的にはフォーカスⅡはややメカっぽい音声、エッジが立った音に聞こたので音質的に合わない人はいるかも。
あと、フォーカスⅡに限らないが眼鏡+マスク+フォーカスⅡだと耳回りが大変にうっとおしい。

最後に個人的感想、あくまで個人的感想

私が試してみて、ホールでの情報保障としてはネックループ+NCヘッドホンが最も聞き取り易かったです。
打ち合わせ時はロジャーオン+ネックループ+NCヘッドホンが最も安定、セレクトの音声を拾う範囲が思った以上に狭かったのは以外でした。

ロジャーシステムは音声の増幅こそしないものの、ヘッドホン側やフォーカスⅡでも多少の音量の増減はできるので微調整は可能です。
マイク側としては、ロジャーオンの方が安定してどんなシーンでも使える感触
置きっぱなしで拾えなくても、インタビューモードなんかに固定して手持ちで話者に向ければまず問題なく声は拾えると思います。

また、ネックループはUSB差込口があるので、出先でバッテリーが切れても外付けバッテリー等から給電しながらの使用が可能です。
長時間つけっぱなしにする方はこちらの方が使い勝手がよさそう。

ただし、じゃあ情報保障として聴覚に何らかの弱さがある方の場合
ロジャーだけあれば何とかなるかというとそれだけでは十分とは言い切れない感じ

複雑な話や専門用語、人名が飛び交えばやっぱり字幕が欲しいですし
聴覚のワーキングメモリに弱さがある方なら質疑時に「あれなんの話してるんだっけ」となるので、やっぱり字幕でログが読める方が便利。

ただ同時にBluetoothは直進性が強い性質もあって人に遮られやすいらしく、ホールでは事前準備でクリアに受診出来ていても、本番だとほぼ受信できないなんて事態も多発していました。
この辺はもっと運営側が情報保障用の座席を確保する等すれば、十分改善できる部分だと思うので
企画段階でメーカーさんと情報交換する事で発生を抑制できそう。
単に機器の性能云々だけではなくて、どう運用するかのノウハウの蓄積とその共有も必要だと感じました。

学校環境だとまた違うとは思うのですが、どちらかというと今回は成人の使用に関しての面でのレポートとなりました
何か他にも感想などお知りになりたい事がありましたら、お気軽にコメント頂けると幸いです。

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