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自由律ラジオ「はじまり」後半。

 さてさて、折り返しの後半です。
 

https://rec.audio/recs/bvldg5q23akg02hkjr9g


 何日も跨ぎながら感想を書いているので…。
 突然テンションが変わる部分が散在すると思います。
 その辺りも含めて、楽しんで頂けたら嬉しいです(笑)
 
 後半も素敵な作品でいっぱいです!
 それでは早速いってみましょう!!


自由律ラジオ「はじまり」感想みたいなお手紙後半。

 

 ・実験動物が逃げた月夜(たばささん) 
 
 怪しい句ですね。
 大手製薬会社が地下の隔離施設で裏の研究をしていたのでしょうか。
 地下の人工的な部屋の奥で獣の咆哮が聞こえてきます。
 何をしているのか。
 間違いありません。生物兵器を作っているのです。
 もしかしたら政府がバックにいるのかもしれません。
 しかし実験の最終段階で突然のアクシデント…。
 逃げ出した一匹の化け物。慌てふためく人々。
 …すみません、B級映画のパロディみたいになってしまいました。
 でも、それくらいこの一句は私の脳を刺激してくれます。
 どんな物語も最初の一文から。そんなことを改めて感じさせてくれる作品だと思います。

 ・ものまねで本物を超える(たまごさん)
 
 歌でもモノマネの人の方が味があるって時ありますよね。
 でも、それはもうモノマネではなくて、立派な個性になっているのかもしれません。
 どんな分野でも、最初はきっとモノマネから。
 他にも昔はあんなに憧れたのに、随分と遠ざかってしまったアーティストや作家。
 自分は誰のようになりたかったのか。誰のモノマネをしていたのか。
 今は触れなくなってしまっても、当時のモノマネは私の考えや文章に影響を与えている。
 そんな気がします。
 ちっとも超えられていないけれど。少しでも近づけたらいいな。
 そんな昔のことを、ふと思い出させてくれる句でした。
 
 ・良いことばかりはないけれど朝はいつも新しい(月兎耳さん)

 人があまりくよくよと引きずらないために朝って来るのかな。
 この句を読んで、そんなことを考えました。
 きっと、こちら側の気持ちの次第なんですよね。
 ネガティブな私はどうしても昨日を今日まで引っ張り込みがち。
 でも月兎耳さんの句にあるように、「朝はいつも新しい」と思うことが大切な気がします。
 でも、『朝って新しい一日!昨日とは別の世界だよ!切り替えよう!』
 と言われると押しつけがましい。
 『良いことばかりじゃないけれど』
 この距離感が私にはとても心地良いんじゃないかと思います。 

 ・乾杯までが長すぎて(哲さん)

 乾杯までめちゃくちゃ長い人っていますよね。
 会社の業績だけじゃもの足りなく…会社の歴史を語りだして、いつの間にか自分の武勇伝にいたって…最後には幼少期の記憶まで遡る…。
 美味しそうだったビールの泡もすっかり消え去り、ジョッキがぬるくなっていきます。
 でも、昨日寝る前に準備してきたのかなとか、お風呂で練習したのかなとか。
 なんだったら奥さんとスピーチの原稿を何度も推敲してきたかもしれません。
 そう思うと、無下にもできなくて…。
 今のこの状況を一番嘆いているのは、スピーチ大好きおじさん達なのでしょう。
 もしいつか宴会が復活した時。
 彼らの大暴れを想像すると、今からぞっとします。

 ・最初はグーを入れない人か(哲ロマさん)

 めっちゃわかります…。
 きっとご当地ルールの一つなんでしょう。
 大富豪や七並べは地域によってルールが違うのが一般的のため、むしろ最初にルールを統一したりします。
 でも、じゃいけんは(じゃんけん)は基本的には「最初はグー」じゃないですか。
 だから、いきなり「じゃいけん」って言われると、こちらは不意を突かれるわけですよ。
 その不意が己の意思の揺らぎにつながり、
 最初に出そうと決めていたものと全く違うものを出してしまう。
 結果、敗退。
 でも、もしかしたらそれも彼らの作戦なのかもしれません。くそ…。
 子供の頃の記憶の裏側を触れられたような句で、好きです。

 ・妻がなにかしらググっている(トヨさん)

 なんでしょう…。
 妻は何も悪いことしていないのに、嫌な予感がしてしまうのは。
 アマゾンで高額な服を購入しているのか、それともイケメン俳優のブログでも見ているのか。
 自分の知らない妻の一面を垣間見ているような心地。
 それにしても何を調べているんだろうか…。
 駄目だ…こちらまで疑心暗鬼になってきました。
 でも、くすりと笑ってしまう。
 トヨさんの意図とは違う捉え方をしてしまったかもしれません。
 だけど面白いです。読めば読むほど好きになります。

 ・ショートケーキに一本だけのろうそくを灯す(とらみな(寅三奈)さん)

 お子様の初めての誕生日でしょうか。
 それとも大切な記念日を過ごしているのかもしれません。
 派手ではないけれども、小さな幸せを抱きしめてくる様子が伝わってきます。
 ショートケーキって言うのもいいですよね。
 素朴だけれども、ずっと食べ続けていける味と言いますか。
 一本のろうそくが照らす光は僅かだけれども、そこに灯される笑顔。
 優しい気持ちにそっと導いてくれる句を投稿くださり、ありがとうございます。

・君アレンジのLast Christmas(ナカムラロボさん)

 切ない失恋ソングの代表曲である『Last Christmas』
 そんな歌をアレンジして歌う君と聞く私。
 君はもしかすると大切な相手を失ったばかりかもしれない。
 そして私はそんな君を励ましながら、少し好きなのかもしれない。
 小さなカラオケ店で過ごす二人の光景が浮かんできました。
 君と私の関係が今度どうなっていくのか。
 テーマのように、始まっていけばいいなと思います。
 「はじまり」のお題に『Last Christmas』のワードをもってくるのが素敵だと思います。

 ・思いとどまれと言われた冬の日(七屋 糸さん)

 暗い冬の川を前にして立ち尽くす人の姿が浮かんできました。
 仕事・人間関係・将来などの全てを考えることに疲れてしまったのかもしれません。
 そのような中に聞こえた『思いとどまれ』の言葉。
 直接誰かに声をかけられたのかもしれないし、過去の声を聞いているのかもしれません。
 いずれにしても主人公はその言葉で立ち止まり、もう一度人生を歩んで欲しいと願います。
 傍目からは何も変わっていなくても、主人公の中では大きな変化のある話。
 そんなことを考えさせてくれる句がとても好きです。
 
 ・歳時記を買いに行く(猫原えみさん)

 同じく自由律俳句を作る身として、とても共感します。
 本屋で歳時記を開いた瞬間、知らない世界が海原のように広がっていく感覚。
 定型句を作る方にとっては、必須の本なのかもしれません。
 結果的に季語とは関係ない句を作ったとしても、
 知識・経験として基礎を知っているか否かで作品の重みは大きく変わるように思えます。
 自分が自由律俳句を作ろうと思ったきっかけについてふと思い出しました。
 素敵な作品をありがとうございます。

 ・ここにはいつもあなたの声が居ました(猫家ねこはちさん)
 
 大切な人を思う温かい気持ちがじーんと伝わってくる句。
 声が「居る」って表現がとてもいいと思います。
 声って、いつか消えてしまうものだとばかり考えていたから。
 でも、ふと呼び起こる声ってありますよね。
 誰もいない部屋なのに、ふと大切な人の声が聞こえてきたり。
 きっと声はどこにもいってなくて、ずっとそこにいたのかもしれません。
 あとは、こちらが聞こえるかどうか。
 声について、もっともっと考えてみたいなと感じました。
 この句が出来たきっかけを機会があれば聞いてみたいです。  
 
 ・朝呑む当たり前こそほろ苦く(八条さん)

 朝が始まった瞬間から、色々な制限や決まりを呑みこみながら過ごす日々。
 耐えられない訳ではないけれど、その味は「ほろ苦い」
 八条さんの句が昔からツボです。
 大げさな表現ではなく、それなのに日常がちゃんと伝わってくる、と言いますか。
 そうした句って、積み重ねた技術と才能としての感覚がないと作れないと思うんですよね。
 (偉そうにごめんなさい…。)
 こんな句を自分も作りたいなと思います。凄く好きです。
 はじまらざるを得ないという視点も珍しかったように思えます。
 
 ・マイクの不調に終始する(はにわさん)

 全校集会時に校長先生のマイクがずっとハウってる時ありましたよね。
 キイーンと体育館に響く不快な音。前に座る女子は気だるげに耳を塞いでいます。
 慌てて若手の先生がマイクの調整にくるんだけれども、全然改善されない。
 ハウりを挽回するために校長先生の話はどんどん伸びていきます。
 でも、心に残るのは校長先生の言葉よりもマイクのハウリングばかり。
 始まらないまま終わっていく様子というのでしょうか。 
 その感覚をとても楽しみながら読めました。
 後、歌が上手な人のカラオケでマイクがハウると私はなぜかひやひやします。

 ・布団の中まだ寝ていたい暖気運転(はやしさち子さん)

 冬の朝に布団の中で「もう少し、あと少しだけ…」
 ともぞもぞする微笑ましい光景が浮かんできました。
 朝に布団の中から出れない様子を『暖気運転』と表現されています。
 そこがこの句全体を包む品のようなものにつながっている気がします。
 ちなみに私も朝が苦手でよく暖気運転を言い訳にして、ごろごろしています。
 早く春がこないかな。
 そんな春への思いも同時に読み取れるような句で、とても好きです。

 ・最後の一枚ごと はずす日めくり(ぴぃさん)

 大晦日にカレンダーの表紙ごと外す瞬間。
 思えば、あの瞬間に本当に今年が終わるのかもしれません。
 新しいカレンダーはまだ貼られておらず、裸の壁紙は少し寂しい。
 でも逆に言えば、真っ白な壁紙はこれから彩る新しいキャンバスのようにも見えます。
 よくある風景なのに、言語化されていなかった感覚。
 凄く羨ましいです。この一瞬を切り抜こうと思えたことが。
 ぴぃさんの作品のおかげで、新しい気持ちを言葉にできた気がします。
 素敵な作品をありがとうございます。

 ・だらしないおなかを記念撮影(ビールおかわりさん)

 中年のはじまりでしょうか。
 私も若い時に比べて、確実に代謝が悪くなるばかりの肉体に溜息が出るばかりです。
 特にお腹は目で見て本当に分かりやすい…。
 でも、ぽっこりと膨らんだお腹ってどこか愛らしいような気がします。
 自分の身体のようで、どこか他人事のような。
 いっそ記念撮影したい気持ちもわかります。
 そうやって自分を甘やかして…私はどんどん膨らんでいくのでしょう。
 そろそろ本格的になんとかしないと。

 ・雨に叩かれ起きたか蛹(昼行灯さん)

 庭先で雨に打たれる蛹を見つめている光景が浮かんできました。
 成虫になり羽ばたく直前の蛹。
 逃げることもできずに、ただ耐え忍ぶことしかできません。
 この句の主人公はそんな蛹に自身の姿を投影したのかもしれません。
 『起きたか蛹』
 この言葉に、私は思わず胸がぐっときます。
 もうそろそろ羽ばたいてもよい…起きろ。
 シンプルなのに力強くてとても好きです。
 この句が出来た背景など、機会があれば昼行灯さん、教えてください。

 ・はじまりのおわり おわりのはじまり はじまりのはじまり はじまりのおわり...(宥樹[記]さん)

 「はじまり」の成り立ちを全て表現したような句。
 今回、多くの人に投稿頂いた作品も大きく四分類出来てしまうのではないか…。
 そんな心地さえしました。
 宥樹[記]さんらしい作品だなと思います。
 興味深い作品を投稿頂き、ありがとうございます。

 ・もがいていた頃の欠けらを拾う(富豪閣さん)

 この句を見た時、胸がざわっとしたのを覚えています。
 それほど自分のこれまでの境遇と近いものを感じたからかもしれません。
 私は今でもその欠片を見るのが辛くなってしまいます。 
 でも、その欠片をちゃんと拾えた時。
 人は新しく前に進んでいけるのでないかと思いました。
 富豪閣さんはくすりとする作品から、重いテーマの作品と幅が広い。
 しかし、その全てに富豪閣さんの香りがします。
 そうした句を自分も作りたいと思います。

 ・耳鳴りだけ残して明日がやってくる(ぷっしろさん)

 年を重ねる度に、日が過ぎていく速さに驚くばかりです。
 昨日と今日が入れ替わっても、何も気づかないような。
 ぷっしろさんの句を読んで、そんなことが浮かびました。
 そもそもやってきた明日は本当に新しい一日なのか。
 でも、キーンと戦闘機のように鋭く響く耳鳴りは幻聴と言われるばかりで確かめようがありません。
 どこか無機質な響きのある句でカッコよくて、好きです。
 
 ・イントロのまま三十路(平安まだらさん)

 私ごとですが、昨年の十月で三十歳になりました。
 だからでしょうか。この句を見た時に一人でくすりと笑ったのを覚えています。
 三十歳って一つの区切りですよね。
 これまでの人生を一度、見つめ直すといいますか。
 この句って二通りに解釈できる気がします。
 一つは、イントロのままで全然始まっていない人生をユーモアのある比喩で表現したもの。
 もう一つは、まだまだ人生のサビはこれからだと未来の自分に期待したもの。
 どちら(もしくはどちらでもない)にしても、私はこの句を見て、とても元気になりました。
 素敵な作品をありがとうございます。

 ・正座して番組のジングル鳴るの待ってた14の冬のFMラジオ(みちるさん)

 みちるさんの句、凄くよくわかります。
 なぜなら私も十四歳の時、同じようにラジオが始まるのをずっと待っていたからです。
 でも我が家にはラジオが無かったので…。
 父から車の鍵を借りて、寒さに震えながら車内で聞いていたのを覚えています。
 『14の冬』。
 もしかしたら私達が一番多感で傷付きやすい時期だったかもしれませんね。
 人間関係が上手くいかない時。理不尽な物事と衝突した時。将来が不安な時。
 ラジオはいつも優しく受け止めてくれました。
 懐かしい記憶を呼び起こさせてくれて、ありがとうございます。
 
 ・ペンネームで手紙を送るあなたが居ました(深雪さん)

 文通のはじまりでしょうか。
 「はじまり」のテーマとして手紙を持ってくるのが素敵だなと思います。
 ペンネームって不思議ですよね。
 普段の自分とは別の名を借りて、文章を書く。
 「金魚風船」という名前ももちろんペンネームです。
 会社の同僚は、私が毎日俳句を作っていることは当然知りません。
 知らないからこそ、思い切って句を作れるのだと思います。
 一方で、ペンネームの本人を既に知っている人の場合。
 ペンネームは、ミステリアスな意味を帯び始めます。
 私の知らない一面のあなた、といいましょうか。
 今回の句も、『あなた』と私の関係を色んな角度で読むことができました。
 想像がとても膨らむ句をありがとうございます。
 
 ・いつか来るサヨナラをセットで飼う(むーむーさん)

 はじまりがあれば終わりがある。
 これまでの人生でこの言葉をたくさん耳にしてきました。
 それでも、この句を見た時に胸がざわついたのを覚えています。
 理由はきっと「飼う」という言葉。
 サヨナラに餌を与えて、養い育てる。
 じわりと、終わりが実感を持って私の日常に影を忍ばせる予感がしました。
 子供の頃から聞いていた言葉を私は表面的にしか捉えていなかったのかもしれません。
 それくらい「飼う」という言葉に惹きつけられました。
 自分の考えを今一度問い直すことができた作品の一つ。
 とても好きです。

 ・重そうに見える扉も案外軽い(やな らいやさん)

 自分には無理かもしれない、と最初から諦めていたこと。
 でも、ほんの少し勇気を出して、一歩踏み出したら変わるかもしれない。
 そんな前向きな気持ちにしてくれる、爽やかな一句。
 扉って遠くから見てる時が一番重く見える様な気がします。
 しかしドアノブに触れると、材質が分かってきて、その先の可能性が広がります。
 すぐには無理だとしても、こうしたら開くかもしれない。
 もしかしたら既に開く可能性だってある。
 そんな風に考えるだけで、物事は明るく、自分が柔軟になるような気がします。
 
 ・あなたと結婚できて幸せでした 空を見上げて(ゆうこさん)

 幸せな結婚生活を思い返す人。
 少し寂しい心情になるのは、空のためかもしれません。
 大切な人を失ったようにも読める句。
 それなのに、どこか清々しいのは、「私」があなたと結婚できて幸せだったと前を向いているからかもしれません。
 大切な人がいなくなってからも、人生は続きます。
 その時にただ悲しみに暮れるのではなく、上を向いて空に優しく語りかける人になりたい。
 そして、この句の主人公にこれからも力強く生きて欲しいとそっと祈ります。

 ・引きこもりにも朝は来る(ゆりのはなこさん)

 人生で二週間だけ部屋に閉じこもったことがあります。
 詳しいことを話すのは避けますが、
 外に出るのがしんどくて、ずっとスマホでアニメの動画を見ていました。
 そんな引きこもり中、最も苦しかったことの一つが朝がくる瞬間でした。
 外の世界が動き出す音は聞こえるのに、部屋で眠っている自分。
 とても情けなかったことを覚えています。
 でも敢えて前向きに捉えるならば、
 こうして朝が何度もやって来るおかげで、私はもう一度人生をやり直せたような気もします。
 ゆりのはなこさんにも、もしかしたら同じような経験があるのかもしれません。
 朝は非情な時もあるけれど、始まるきっかけを与えてくれる。
 そんなことを思わせてくれる素敵な句でした。

 ・始まらない物語 終わりの来ない恋心(宵月さん)
 
 始まりもせず、終わることも出来ない苦しい気持ちが伝わってきます。
 思えば、「始まり」や「終わり」は人にとって救いなのかもしれない。
 今回の企画を通して感じたことの一つです。
 いつまでも、そこにとどまり続けないために。
 と、昔は素早く切り替えできる人が羨ましかったことを思い出しました。
 いつまでも、うじうじと考える性格だったので。
 でも、そんな恋を出来るのは人生できっとそう何回もないのでしょう。
 だから、苦しむだけ苦しめばいいように思えます。
 そうした過去がある人を私は信頼しますし、愛おしさが湧きます。
 宙ぶらりんになった恋心を的確な言葉で描いた句を応募くださり、ありがとうございます。

 ・始発駅に漂う昨日の残り香(羊子さん)

 昔、恵比寿で夜勤のアルバイトをしていたことがありました。
 夜の十九時から働き始め、朝の五時に退勤。
 帰りの電車は自然と始発列車となりました。
 始発って不思議な空間ですよね。
 早朝に出勤する人達と家に帰る人達。
 それは始まりと終わりが入り混じった世界のように見えます。
 酔っ払いの吐しゃ物を避けて、電車に乗り込んだ記憶は今でも大切な体験です。
 まだ少し眠っている東京の街は、少しだけ私のものでした。
 今は日勤なので、始発の経験はもう何年もしていません。
 だからでしょうか。あの瞬間は私の青春となぜか重なるのです。
 二つの世界の境界を淡く描いた句で、好きです。

 ・お隣のアラームで目覚める(吉田髑髏さん)

 私も学生時代、同じ経験をしました。
 安アパートを契約したツケが回ってきたのかもしれません。
 で、そういう時に限って隣の人が朝弱い。
 全く起きない…。
 いっそ隣のドアを蹴飛ばして、止めてやろうか…。
 と思ったら音が止んで、ほっとした瞬間。スムーズによる悪夢再びみたいな。
 隣人のアラームで始まる一日って最悪ですよね。
 でも、やっぱり少し笑ってしまいます。
 余談ですが、隣人のアラームの方がすぐに起きることが出来るのはなぜなんでしょうか…。
 
 ・ひとつめの波からはじまる海の曲線(リカオン28さん)

 ひとつめの波が段々と続いて、やがて大海原の曲線へと繋がっていく光景。
 それが無駄のない言葉でしっかりと描かれていると思います。
 句の着眼点も凄く好みです。(好み過ぎると逆に他の言葉が出てこなくて、すみません…。)
 風景を読んでいるのに、誰かの心を表しているような。
 本当に不思議ですよね。
 海岸に静かにやってくる白い波が全てを飲み込む海の先っぽだと思うと。
 それがある時は怖くもあるし、ある時は希望に思えたりもする。
 海は人の心に様々な想像を抱かせてくれます。
 今度、海に行った時にリカオンさんの句が胸にじんわりと浮かんでくるような気がします。
 
 ・スーツの寝ぐせにキュンとする(るびいさん)
 
 きちっとしたスーツ姿の上に見えるクリっとした寝ぐせ。
 気になる人の素の部分が垣間見えて、嬉しくなる恋心が伝わってきました。
 とても可愛らしい句だと思います。
 ところで、ギャップってなんなんでしょうか。
 おそらく私が寝ぐせで、会社に行っても「早く直してこい」の一言で終了。
 その人のキャラクターに合ったものが必要なんですよね。
 出来れば、その人と反対に位置するもの。
 でも…普段の自分と反対の物事なんてそうそう起きない。
 つまり、ギャップとは作戦的に形成されるものかもしれません。
 と、モテない男が語っても…ただの遠吠えなので、これくらいにしておきます。
 でも欲しい…ギャップってやつが…。


 

 以上となります。
 至らないところは数えきれないほどあったと思います。
 それでも、私は書いていてとても楽しかったです。
 同時に、やっぱり自由律俳句って面白いなって、思いました。

 だから、これからも少しずつ作っていきたいと思います
 たくさんのご参加、本当にありがとうございました。
 それでは、皆さんまたどこかでお会いしましょう。

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