2018年5月の記事一覧
かしく
わたしは手紙が好きだ。
悪筆故にしたためるより待つよりがいい。
筆の根、その脳裏には紛うことなく、
寂寂たるや想いはからんとあるだろう。
わたしは、
その手紙を七夜ほど鞄に温めてから引出しにしまう。
かしくある。
アラーム
それは、
皮膚を掻くと、脳が神経伝達物質セロトニンを生成するに似ている。痒みに抗えず掻けば快楽となるも後に痛みが訪れ、そして更なる痒みを繰り返すばかりとなる。
それでもわたしたちは、ずっと共同体だった。痒みは、
家族でも他人でもなく常に自分だった。
これからもそうであるように、
こころを掻きむしるとしても、
孤独より幾らか退屈ではない。
ぬけがら
夜がみたい。
それは胸懐の声。
底は夜にあらず。夜がわからなくなったのはいつからか、わたしは泳いでいる。
月の底には小箱が散らばる。
開くことに飽いてしまったものたちが沈めた遺骸。
それは月の底から月は無いとおなじ。