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「サウンドデザイン入門」3つの音色で自由な音作りの基本を学ぶ

DAWで作曲しようとシンセを立ち上げたものの、毎回似たようなプリセットを選んで使ってしまっている人も多いのではないだろうか?音作りをしたいと思いつつ、イニシャルから作っていっても「なんか違う」と感じる人は少なくないだろう。

シンセの音作り、つまりサウンドデザインをする上で重要なことはいくつかあるが、最も大事なことは基本の音の作り方を知ることである。

目標

ここでは「Pluck」「SAW PAD」「808」という3つの定番音色の作り方を学ぶことで、サウンドデザイナーになるための第一歩を踏み出すことを目標に話を進めていこう。この3種類の音の仕組みと作り方を練習して徹底的に磨き込むことで、幅広い音をプリセットに頼らずに作れるようになることを目指す。

使用するシンセはSerum。音質が良く操作性も良いのでサンプルにはバッチリだが、もちろん手持ちの他のシンセでもOKだ。

Pluck

「Pluck」はメロディー、コード、ベース、アトモスフィア、アルペジオなど、様々な用途に使える汎用性が特長。もはやダンスミュージックには欠かせないサウンドだと言っていいだろう。

①ベースとなるサウンドの作成

Serumを起動し、OSC Aで「Basic Shape」を選択して、WT POSを「2」にする。これにより波形をノコギリ波(SAW)にすることができる(もちろんデフォルトのSAWでもOK)。

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フィルターをオンにし、CUTOFFを左にほぼ振り切る(動画では値が「8」になっている)。フィルターのスロープは「12dB/Oct」から「24dB/Oct」に変更し、傾斜をきつくすることでよりサウンド変化が強まるようにする。

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ENV 2をCUTOFFに適用し、SUSTAIN LEVELをゼロまで下げる。

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この時点で一度サウンドを聴いてみよう。フィルターが開きすぎていることがわかるはずだ。

フィルターエンベロープを調整してフィルターが開く最大値を下げ(動画だと「72」)、音が必要以上に開きすぎ温かみを保つようにする。

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Delayを適用する。左右のステレオの広がりが欲しければ、必要に応じて「Ping Pong」をオンにするのも有効だ。

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Reverbを適用し、MIX値を程よい値に変更する(動画では「23」)。

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②リズミックなコードPluckの作成

この状態で完成だが、ここからさらに作り込んでいくのも良い。リズミックなメロディーやリズミックなコードにPluckを適用すると良い効果が得られる。

そのため、仮に元がピアノの次のような白玉のフレーズだったとすれば(例のコード進行:GbM-Bbm-Fm-GbM)、

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Pluckでは同じ音をリズミックに分割してレイヤーするのも良い。こうすることでピアノの伸びた音とPluckのパーカッシブな音が共存し、調和がとれつつ効果的なサウンドとなる。

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③メロディーPluckの作成

次はコードのトラックを複製してメロディーを作成。例えば以下のようなコードを補完するメロディーを作成する。

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➃コードPluckのサウンドをユニゾンに変更

メロディーができたら、コード側のサウンドを微調整しよう。メロディーと全く同じ音だと互いの音が強く干渉してしまうので、コードのサウンドをワイドにすることでメロディーとの干渉を減らすのが狙いだ。

ここではUNISONを「7」、DETUNEを「0.12」にしている。

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Saw PAD

PADもPluckと同じくらいか、それ以上に色々な場面で使われているサウンドではないだろうか。帯域を埋めるのにこれほど便利な音はないので、ジャンルを問わず様々な楽曲でそのサウンドを聴くことができる。

①ベースとなるサウンドの作成

Pluckと同様、OSC Aの「Basic Shape」からWT POSを「2」にしてノコギリ波を作成。

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フィルターをオンにし、フィルターのスロープを「12dB/Oct」から「24dB/Oct」に変更する。(CUTOFFはそのままでもOK)

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必要に応じてUNISONを上げていきSuper Sawにするのも効果的だ。

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808 Bass

808はヒップホップの専売特許のように思っている人もいると思うが、実は広くエレクトロミュージック全体において一般的なサウンドでもある。

①ベースとなるサウンドの作成

まずは波形。これまで同様OSC Aに「Basic Shapes」を選択し、WT POSはデフォルトの「1」のまま。

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ENV 1(アンプエンベロープ)のSustain Levelをゼロにする。

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このままだとクリック音がなってしまうので、AttackとReleaseをそれぞれ遅くし、Attack「6ms」Release「45ms」程度に設定する。

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さらにDecayを調節して、808の音の長さを調節。

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オクターブを下げ、ベースの音域にする。

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メモ:808に最適な周波数は40〜80 Hzと言われている。よって808がこの間の音域に収まっているときにベストなサブベースを鳴らすことができるのだ。

②ディストーションの追加

FXでDistotionを追加し、「Post」モードにして付属のローパスフィルターで300 Hzあたりでカットを入れ、DRIVEを「80〜90」前後の値まで上げる。歪みを加えることでより808らしくなるのがわかるだろう。

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③トランジェントの付与

さらに808らしくするため、アタックのトランジェントを追加してパンチを付与する。まずはENV 2をCRS(Coarse)パラメーターにアサインし、Shift+Optionを押しながらクリックして適用範囲を高域側に移動。Sustain Levelもゼロにしよう。

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最後にDecayを下げればパンチが出てきて、聴き覚えのある「あの」808サウンドの出来上がりだ!

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まとめ

いかがだっただろうか?サウンドデザインを上達する近道は、仕組みを知って練習することだ。そういう意味では楽器の練習と遠からずとも言える。Pluckを作るにはどこをどういじれば良いか、PADの場合はどうかなど、考えなくても先に手が動くようにしておけばしめたもの。1つのシンセでマスターすれば他のシンセでも同じことを実現するのに造作ないだろう。

面白いのは「Pluck」「SAW PAD」「808」の中でPAD以外は全てSustain Levelがゼロの減衰系サウンドだということ。白玉で音が伸びるのはPADのみだ。つまり音をどう減衰させるかはサウンドデザインに大きな影響がある。このように様々な観点で音作りを研究して見るのと、いろいろな発見があって良いかもしれない。

では、良いDTMライフを!

参照:Alex Rome様「3 Most Used Sounds In Electronic Music」


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