プリセットに頼らないPADサウンドの作り方
作曲やアレンジの最中に、PADの音に悩んだ経験はないだろうか?
シンセPADのサウンドは様々である。例えばノコギリ波にローパスフィルターを適用したSaw PADは隙間を埋めるのにぴったりだが、もっと存在感があって豊かなキャラクターを持ったPADがほしいときもあるだろう。使用しているシンセのプリセットにピンポイントで求める音があればよいが、そもそも探す手間と時間がかかるうえ、あるかどうかもわからない。
そんなときは、様々な音をレイヤーした複合的なPAD(Complex PAD)を作ろう。そうすれば、1つの音だけでは決して実現できない、楽曲の中で大きな存在感を発揮するユニークなキャラクターのPADを作ることができる。
本記事では SynthHacker様の動画「How To Make Deep Organic Pads Like RUFUS / Flume / ODESZA (Serum Tutorial)」を元にして、Serumを使った複合的なPADの作り方を考えてみたいと思う。
複合的に捉える
動画で解説されているのは、4つのトラックをレイヤーしたかなり作り込んだPADのサウンドだ。トラックの内訳は、ベース、コード1、コード2、ノイズ。それぞれのトラックの目的について動画では詳しく触れられていないが、ここでは次のように解釈してみた。
1. ベース:低域
PAD内での低域を担当するベースのトラックは、ノコギリ波をMONOで鳴らすだけのシンプル設計。
サブオシレーターをオンにし、アンプエンベロープのアタックを2秒弱とかなり遅めにしてスロープを緩やかにするのがポイントだ。
2. コード1:キャラクター
1つめのコードトラックもノコギリ波。ユニゾンを上げてわずかにデチューンをかけ、スロープ18dのローパスをかける。
最大の特徴は、周期やカーブの異なるLFOを2つ適用している点で、詳しくはショットを参照してほしい。特に2つめのL4は、初期のアナログシンセの揺れや、テープレコーダーのワウフラッターを模したような揺れを表現していて、音のキャラクターづくりに大きく貢献している。
全体的な音作りを終えたら、最後にリバーブとEQを足してバランスを取る。
2つめのコードトラックのステレオ幅を「100」にするため、1つめのコードトラックのステレオ幅を40付近に狭めておき干渉を低減する。
3. コード2:高域
2つめのコードトラックは高域担当で、オシレーターにデジタル系の波形をアサイン。ユニゾンを上げてわずかにデチューンをかける。OSC Bにはデフォルトのノコギリ波を採用し、ユニゾンを7とやや多めのボイスにして、デチューンを50-60%程度かける。
フィルターはスロープ12dBのローパスで、カットオフは1KHz付近。
アンプエンベロープは800msほどでなだらかに立ち上がるようにし、スロープを持ち上げて立ち上がりのタイミングをやや早め、馴染ませる。LFOは8小節と長めに設定し、ゆったりとしたゆらぎを表現。FXではホールリバーブをかけ、EQでローカットを入れる。
OzoneのImagerなどでステレオ幅を広げて、中高域のサウンドに広がりをもたせる。
シマーリバーブで広い空間を演出する。設定はデフォルトでもOKだが、モードはステレオにしておこう。
4. ノイズ:プラスαの個性
最後のノイズは、レコードノイズのようなノイズを追加するためのいわばFX的トラック。
ノイズのユーザープリセットは以下のフォルダにWAVファイルを保存することで読み込まれるようになるので、元の音源をこちらに保存しておこう。
/Library/Audio/Presets/Xfer Records/Serum Presets/Noises
なお、Foley系のサウンドは「https://freesound.org/」からも入手できるようなので、持っていない人はこちらで入手するとよい。
まとめ
いかがだっただろうか?シンセのPADといってもシンプルなものからレイヤーされた複合的なものまだ様々だ。作れるようになるといろいろ応用が効くだけでなく、今のPADに足りないものも見えてくると思うので、ぜひ音作りにチャレンジしていただければと思う。
それでは、よいDTMライフを!
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