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レコーディングの勉強部屋④アコースティックギターのレコーディング

レコーディング勉強シリーズ。今回はアコースティックギターのレコーディングについて考えていきたい。

アコギはマイクの設定がシビアだといわれており、単にトーンホールの前にマイクを置くだけでOKというわけではないという。今回はNEUMANN KMS104を使用して、エンジニアの方と実験しながら音がどう変わるのかを検証していった。

アコースティックギターの特徴

そもそもの話になるが、アコギは「個体差が非常に大きい」ということ。これはバイオリンやウッドベースなどにもいえることだ。トランペットやサックスも個体差が大きいが、木製の楽器はさらに顕著かもしれない。

その意味ではメーカーごとの特徴はあまり当てにはならないのだが、門外漢の方のためにざっくり主要3各メーカーの特徴を記載しておくと以下の通りだ。もちろん固定ごとに大きく異なるため、あくまで参考程度なのだが。

マーチン:バランス良い音
ギブソン:ワイルドな音
テイラー:上から下までバランスよく出る

ポイントとして、その楽器が「低音がなる」個体なのか、「高音寄り」なのかという点があげられる。

良いアコギの条件

以上を踏まえて著者が考えた良いアコギの条件は、次の3つの条件が揃った個体だ。少なくとも自分が今度アコギを買うときはこれらの点をポイントに探そうと思っている。

1. 1弦から6弦までバランスよく鳴り
2. 高音が抜けつつ
3. 低音もしっかり出る

マイクの設定

アコギはとにかくマイクの設定がシビアである。ブリッジ付近で鳴っている音、トーンホールの正面から出ている音、ネック付近で鳴っている音でかなり出音は異なるという印象を持った。それに加え、個体によってベストなマイク位置が異なるという点も考慮しなければならない。

ゆえに、レコーディングするときに「とりあえずトーンホールの前にマイク立てとけばOKっしょ」で録ると、その楽器にとってベストの音が取れていない可能性が高い。

今回試したマイクポジションは以下の通り。マイクはギターに対して垂直に立て、ギターとの距離はすべて20 cmを保った。

①トーンホール正面
②ブリッジ付近
③15フレット付近
④7フレット付近
⑤ヘッド付近

テストでわかったことは、ホールから遠ざかるとボリュームが下がるという点と、ヘッドに近づくほどラインどりのような音になるという点。

今回使用した個体では、③の「15フレット付近」で集音した音が割といい感じであったものの、高音は良いのだが低音感が少なかった。これを踏まえて、マイクの角度を変えて検証するため、追加で以下のポジションにてテストを実行。距離は引き続き20 cmを維持した。

⑥トーンホール正面 - 斜め45度(ネック側から)
⑦トーンホール正面 - 斜め45度(ブリッジ側から)
⑧トーンホール上 - 斜め45度
⑨トーンホール下 - 斜め45度

この中では、⑥の「トーンホール正面 - 斜め45度(ネック側から)」が高音と低音が鳴るドンシャリ感があり、比較的良いことが判明。

最後に、固定していた距離20 cmを離して録ることもテストするため、60 cm離してみた。

⑩トーンホール正面60センチ

が、部屋鳴りがかなり目立ってしまい失敗に終わる。

(注意ストロークによる音のミュート

ブリッジ側から狙うと、ストロークでアップダウンする手の被さりで音がミュートされることがあるので注意しよう。

ボディ内部の板の貼り方(ブレーシング)

アコギの個体差でベストなマイクの位置が異なるのは様々な理由があると思われるが、主な原因に「ブレーシング」がある。内部の板がどのように張られているかが、いい音が出る位置や角度に大きく影響するようなのだ。

なお、レコーディング慣れしたプロのスタジオミュージシャンは自分の楽器の良いポジションを知っていることがあり、それが楽器の「斜め下」だった、なんてこともあるらしい。

マイクの指向性

今回使用したNEUMANN KMS104は指向性が狭いマイクだったが、角度によって入る音が異なる。そのため、たとえば⑥の「トーンホール正面 - 斜め45度(ネック側から)」など、指向性が広いマイクだとなお良い音が録れたかもしれない。

実際にレコーディングする際は、マイクの指向性の広さにも着目すると良いだろう。

マイクの本数

アコギはマイクの位置と手の振りで変化が大きいため、2本使いはあまりお勧めできない。理由は以下の2点だ。

・演奏中のサウンド変化が大きい
・それによる位相の問題が発生しがち

近い音同士で複数マイクを立てるとミックスされるにメリハリがなくぐちゃぐちゃになりがちなのである。複数マイクは取る音の音源の質の差がある場合に有効なテクニックだと言えるだろう。

アコギ用お勧めマイク

アコギを録るのであれば、以下のマイクがお勧めとのことだ。個人では簡単に手に入るものではないが、一応記載しておく。

NEUMANN 87、87i
NEUMANN 84(現行184)

まとめ

いかがだっただろうか?今回の検証結果をまとめると、アコギは使用するマイクの指向性を確認した上で、様々なマイクポジションをテストし、その個体にとってベストなポジションを探すところから始めるのが良いと思う。

難しいとは思うが、しかるべきギター、しかるべきマイク、しかるべきマイクポジションを把握して最高の音を手に入れよう。

次回はエレキギターのレコーディングについて投稿する予定。そちらもどうぞお楽しみに。

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