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色に沿う

自分が寝ている家が見える。
僕は群青色の朝に居る。音はなく視点は動かない。
僕は確かにその家の自室のベッドで寝ている。
それと同時にその家を見ている。
この映像は誰が見ているものだろうか。何故僕に見えているのか。
僕の魂ってやつが抜け出したのか。
それとも単なる夢だろうか。
次の瞬間、意識がベッドの上に移る。毛布の肌触りが心地いい。
鳥がピーユルッルッルピーユルーリッリッルと鳴く。
ベッドからゆっくり体を起こしカーテンを開ける。寒い。
辺りは群青色のまま何かを待っている。風の音もなく、空気の動きはほとんどない。僕の周りだけだ。地面の上に溜まって濃くなった空気が見える。
鳥がいる場所で空気が少し揺れているが大したことはない。
先程の視点の位置を確認する。誰もいない。気配もない。痕跡もない。

ベッドから降りると足の裏にフローリングがひんやり張り付く。
そこから逃れるように電気カーペットをつけようとするがコードがコンセントに届かない。
僕はベッドに腰掛け、上体を捻り毛布と敷き布団の間に手を滑りこませる。暖かい。
扉を叩く音が二つ聞こえ、返事をする間もなく開いた。弟が入ってくる。
『スーパーファミコン持っていくよ』と言い、DVDプレイヤーとプレイステーションの配線とゴチャゴチャと絡み合っている中からスーパーファミコンをすんなり解放した。それはまるでベテラン産婆が赤子を取り上げるかのごとくスムーズだった。
弟は我が子のようにスーパーファミコンを抱きかかえ部屋を出て行った。
僕はもう一度電気カーペットのコードをコンセントに近付けてみた。
今度は何故だかすんなり届いた。コードの先をコンセントに差し込む。
弟のコードを扱う技術を見て僕は何かを得たのだろうか。
僕は電気カーペットの電源を入れた。

続く

僕の言葉が君の人生に入り込んだなら評価してくれ