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天国に空席はない
天国に空席はない。
そうだったのか、とそのまま飲み込んで生き方を変えることにした。すんなり飲み込んだのは、どこかにそうであって欲しいという思いがあったのかもしれない。
誰かに求められたことに応えて褒められてもポイントゲットにはならないようだ。なったとしても景品交換はないんだ。むしろスタンプを押した側のポイントなのかもしれない。そうだとしたら僕は与えてきたのか。与えたことは記録されるだろうか。いやいや、まだ今までの感覚が抜けきれていないな。
という話を恋人の恵美に話すと「えっ?!抜かなきゃいけないの?」と言った。
「違ったと認めたなら変えるべきじゃないの?」
「んー変わってもいい、くらいじゃないかな。天国に行くって目的がなくなっただけで、言動を変えなきゃいけないってことはないと思う」
そうか、そうだな。んーそうか?
「じゃあ、天国に行くためにその言動をしてる時の僕と、天国に行くためじゃないけどその言動をやってる僕に違いはある?同じ場所に辿り着きそうなんだけど」
「目的がなくなれば、自然と言動の質が変わってくると思うよ。そこを意識的にやるとやっぱり天国への意識が逆に働いちゃうっていうか天邪鬼みたいにさ」
「逆に?」
「目的への意識とこうちゃんの素の部分は完全に別のものじゃないじゃん。重なってる部分があると思うから、素の部分から生まれた思いを“取り下げた目的”に当てはまるからって抑えなくてもいいって感じ」
「そういうことか」
「でどうするの?」
「何を」
「ポイントカード。捨てちゃうの?」
「そうだね、もう要らないから」
小学生の頃、帰りのホームルームで友人の山ちゃんが【花壇の花にサッカーボールを当てた】ということで議題に挙げられた時に擁護したポイント。
高校受験の時に、親から進学校を目指しなさいと言われ実行したポイント。
休まずサボらず大学に行ってるポイント。
こういうのはもう数えなくていい。
「ねえ、捨てちゃうの?だったら私にちょうだい」
「えっ?」
「そのポイントカード、私が管理するから」
「どういうこと?横取り?」
「違う違う!ポイントが溜まったら私がこうちゃんにご褒美をあげましょう!」
そういって恵美は自分の唇を指差す。
「それって特別なキス?」
「天使のくちづけ」
「自分で言うかよ」と言いながら僕は本当に笑っていた。
僕の言葉が君の人生に入り込んだなら評価してくれ