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火の鳥における「未来」の設定

夏休みなので、久しぶりに手塚治虫の「火の鳥 未来編」を読みました。

1967年に連載開始したシリーズから見た西暦3404年の世界が舞台です。私が初めてこの本を読んだのは、まだ小学生だった30年くらい前だったので違和感なく読めた部分も、今はいろいろ気づかされます。
(否定的な気持ちはありません。現実世界の変化への発見です。また、設定に関して記述しますが、ストーリー本筋のネタバレはほとんどありません)

今でも受け入れられる設定

まず、今でも特に気にならずに受け入れられる設定があることも挙げておきます。

・宇宙への進出/地球外生命体
・人語を解するロボット
・体外受精で誕生
・地上の荒廃と地下暮らし
・文明の発展に限界があったこと
・寿命が延びてる
・体力がない人類

まぁ、正直なところ受け入れられている設定のほうが多いと思います。宇宙やロボットなど、あと1400年後にどうなっているかなどわかりませんので、どんなに荒唐無稽でも問題はないのです。

今受け入れられない設定

これは2021年の現在だから受け入れがたいのかもしれませんが、次のような設定については1967年には想像できなかっただろうなと思いました。

・非番の日に、プライベートなことで呼び出し
・Webで会話しているのに、わざわざ対面
・要件を言わずに呼び出し
・上司が話を聞かずに一方的に通告

ほぼワンシーンの出来事ですが、要はハードの部分ではなく「職場における上司部下」というソフトの部分が進化していないということです。

1967年の職場をもとに、通信機材や交通インフラが未来化していましたが(オフィスチェアなんかも斬新でした)、2021年現在我々が現在進行形で受け入れている変化(パワハラ、リモートミーティング)は、かの手塚治虫先生でも描けなかったということでしょう。

とはいえ、手塚治虫先生は古代のシーンを描くときに、電話を小道具として使用したり、20世紀の金銭価格を持ち出したり、居住環境を「2LDK」と表現したりしますので、未来を読みつつもあえて1967年の人が読みやすくしたのかもしれません。

まとめ

ということで、今日の結論としては次の通りです。

・人はテクノロジーの進化のほうが想像しやすくて、社会システムや法整備の進化は想像しづらいのではないか
・人はテクノロジーの進化のほうが受け入れやすく、社会システムや法整備の進化は受け入れづらいのではないか

ほかの漫画や小説、映画でも時代設定が現代ではない場合、この辺を気にしてみてみると面白いかもしれません。


(アイキャッチ画像引用元:角川文庫 手塚治虫「火の鳥2 未来編」)

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