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KLab、ネットマーブルのハイパーカジュアル進出宣言、ハイパーカジュアルの新たなトレンド

先日、KLabが決算発表の場でハイパーカジュアルゲームにも取り組むと言及しました。海外でもネットマーブル(EMEA拠点:ヨーロッパ・中東・アフリカ)が同じくハイパーカジュアルに取り組むと発表しています。

ネットマーブルが目指すハイパーカジュアルとは


「リネージュ2 レボリューション」などMMORPGタイトル群で有名なネットマーブルが、真逆の性質を持つハイパーカジュアルに進出とは驚きですね..。以下、発表の要旨です。

・MMORPGで培った強みとハイパーカジュアルの良さを融合したタイトルをつくる
・RPG要素を盛り込んだ新たなハイパーカジュアルを
・LTV(の高さ)と、(期間長めの)継続率にフォーカスしたハイパーカジュアルを
・それを我々は"ハイパーカジュアル2.0"と呼びたい
・一緒に取り組んでくれるインディー開発者/開発会社を求めている

2.0という呼称はさておき、自社の強みを活かすかたちでハイパーカジュアルの一つの発展形態を創造していこうというのは、純粋にすばらしいなと思います。
「始めはほとんどの人が否定した新たなビジネス/取り組みは意外と成功している」的な話も聞きますし、上の箇条書きだけでは想像しえなかった「そうきたか!」というタイトルがぜひ生まれてほしいです。

よく引き合いに出されるアーチャー伝説。何がキーになっているのか?

このネットマーブルの話で「アーチャー伝説」を想起した人も多いのではないでしょうか。
2019年のグローバルヒットタイトルの一つであり、様々な観点で注目が集まったタイトルですが、特に話題になったのは「カジュアルタイトルなのに、課金額がハンパない」という今までなかなか見られなかった一見相反する組み合わせに対する驚きでした。

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人によっては「あれもハイパーカジュアル」「あれはカジュアル」「カジュアルじゃない」と呼び方は色々ありましたが、カジュアル要素観点ですごいなぁと思うのを一言でいうならば「操作、ルールを極限まで削ぎ落としきったシンプルさにしている」ことです。
「指を離している間は自動的に攻撃してくれる」という仕様は代表的な削ぎ落としです。ステージをクリアしてパワーアップをするのもシンプルな選択が基本といった削ぎ落としです。それにより、覚えることが少ないという点で「入り口はカジュアル」が維持されています。

一方で「このゲームのおもしろさは、もうちょっと進んだとこにあるのに..」という、ルールを覚えて先まで進んだらものすごくおもしろさがあるゲームも多数あります。
ただ、新たなゲームをやる時に、ルールを覚えるというのは大きなハードルです。これが苦痛でそもそもやらない人も多数、始めても早々にやめてしまう人も多数です。本来楽しんでもらいたいところまでプレイヤーが到達してくれないというのは開発者にとって、もどかしいことの一つだと思います。
もちろんジャンルによって可能な度合いはあります。それでも、

・思い切ってたくさんの要素(操作、覚えてもらうこと)を削ぎ落とすことは、本当に味わってもらいたい楽しさを浮き彫りにする
・ルールを覚えるハードルをなくすことは、すぐに楽しさを感じて遊んでくれる人を増やし、結果長く遊んでくれる人を増やすことに繋がる

という点で、極限まで突き詰めたい大事なブラッシュアップといえます。機能を増やすのは簡単、減らすのは難しいものの、です。カジュアル & ハイパーカジュアルには、この観点で参考になるタイトルが多々あります。

アーチャー伝説に話を戻すと、課金モデルメインの他のアクションRPG同様に、ステージを進めていくなかで俺TUEEE欲を掻き立てられる要素がふんだんにあるのですが、ここだけ切り出すなら同様の工夫がなされたタイトルは多々あるといえます。ただ「入り口/操作/ルールは削ぎ落としきったシンプルさ」が、ついつい課金したくなるゲームでも成立するという好例です。

つまり、ネットマーブルが目指す「ハイパーカジュアルなんだけど、課金額も高い」というのは一見相反するように見えて、充分に可能性がある狙い所なんだろうな、新たなフィールドを切り拓いてほしいな、という話です。

カジュアルなのに課金額が多いゲームは多々

カジュアルゲームなのに課金額も高いゲーム、長期運営されているゲームは多々あります。日本でも「にゃんこ大戦争」はその最たる例ですし、パズルゲームもカジュアルゲームだよねという話でいえばいくらでもあるということになります。
数字が公開されている例でいえば、Supercellの子会社であるSpace Apeの「Fastlane: Fun Car Racing Game」は月間課金収益が1億円超、広告収益も1億円超という数字を出していました。ゲームは極めてシンプルな縦スクロールのシューターです。操作は左右にドラッグするだけです。

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つまり「(ハイパーではない)カジュアル x 高課金収益 & 広告収益」は別に目新しいわけではないといえます。
では、ハイパーカジュアルだとどうでしょう?

もし「Hole.io」が長期運営型モデルだったら

ハイパーカジュアルで高課金収益をあげるタイトルはまだ出ていないものの、例えば「Hole.io」だったらいけた、新境地を開拓できただろうなぁ..と思っていました。2018年当時。

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それまではハイパーカジュアルといえば大概がボールがでてくるやつ、おもしろいけど飽きも早いやつというのが多かったなかで、io系ゲームをハイパーカジュアルというジャンルでも火をつけ、ハイパーカジュアルを第2ステージに引き上げた立役者だと思っています。

2018年当時はバトロワ系ブーム、カジュアルでもオンラインマルチプレイ対戦ゲームが特に流行った年という時代背景もありますが、相手はNPCであるものの対戦もので大人も楽しめる・長く遊びたくなるハイパーカジュアルもあるんだ!ということでジャンルの可能性が一気に拡大した転換期です。

ただ、もし私が開発者 or Voodooの担当だったら、典型的なハイパーカジュアル型としてのリリースはさせないで長期運営を見据えた仕組みも盛り込んだ上でリリースしたかったです。より多くの人に、もっと長く遊んでもらえる可能性を持っていたゲームだったなぁ、と。
当時たまたまその時期に登壇したセミナーで、そんな思いも込めて「もしもHole.ioをハイパーカジュアルから運営型カジュアルに変えるなら」ということを話していたこともありました(下記資料 P19〜)。
ネットマーブルの言う「ハイパーカジュアル x 高課金 & 長期継続」の可能性と同様のものを感じ取って頂けるならありがたいです。


ハイパーカジュアルはどう変わっていくのか

以下は「無料ダウンロードTop100に入ったハイパーカジュアルの本数」の月別推移です。2018年に急拡大し、2019年前半にピークを迎え、以降は下りトレンドです。つまりグローバルトレンドとしては「とりあえず出すというステージは終わった」「本格的プロモーションを打てるほどのテスト突破タイトルが生まれづらくなっている」「ヒットタイトルの開発に要する時間の長期化」といった状況といえます。

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(参照:「mobilefreetoplay」)

一方で、日本では本腰を入れ始めたデベロッパーが増えてきて、そしてグローバルトップを取るタイトルが続々と生まれているというタイミングです。元々ハイパーカジュアルが軸足ではなく、それ以外の部分に強みを持つというデベロッパーが乗り出してきた、ということが海外との違いの一つでもあり、後発であってもトップが取れている要因の一つといえます。ゆえに、日本のデベロッパーによるハイパーカジュアル本流といえるタイトルでの成功はこの後も続々と出てくるに違いありません。

同時に、海外でもネットマーブルのような他の領域で強みを持つ企業が新潮流を作り出そうと動き始めている状況です。
仮に最初は亜流だったとしても、ハイパーカジュアルに特化しているわけではない様々なゲーム会社が、これまで培ったそれぞれの強みが生きるスタイルでハイパーカジュアルの新境地を開拓していく。そういった動きで、このジャンルがどんどん定義が変化しつつ、幅が拡がっていくのが楽しみです。

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