怪奇ベビースター

ただいま、と玄関の扉を開ける。
今日も一日頑張ったと自分を労いながら足を一歩踏み入れる。

「ペキッ」という音。
足を持ち上げるとそこにあったのは1センチ程のベビースターだった。

なぜだ。ここは玄関だぞ。

不思議に思いながら拾い上げ、ゴミ箱に捨てた。
鞄を置き、我が子が毎日何枚も学校から持ち帰るプリントをチェック。
3枚目をめくると同時に何かが落ちた気がした。
足元を見るとそこにはベビースター。
あれ、二つ目だ。

最近忙しくて掃除が行き届いてないからな、と思いながらまわりを見渡す。
ホコリは気になるが、ベビースターらしき物は見受けられない。

夕飯の支度の前にシャワーを浴びようと思って風呂の扉を開ける。
至って普通、何もない。ちょっとカビてるけど。
風呂上がり、頭をガシガシ拭いていると、タオルと頭の間に硬い何かがある。

え、いつの間にベビースター。
家族が食べたのか。だとしてもなぜここに。

夕飯の支度を始める。
ある物でどうにかしよう。
冷蔵庫を開ける。鶏モモ肉のパック、豆腐、白滝、ベビースター。

おいおい、ここにも？
つまみ上げてゴミ箱に捨てる。

今日は鶏モモ肉で、すき煮にしよう。
やれやれ、すき煮で一杯やるかな。こたつでビールは冬の楽しみだ。
疲れた体をこたつに入れれば、ほっとひと息つけるはずだ。

だがしかし、足に当たる硬い感触。
これはおそらくアレだな。
こたつに手を入れ拾い上げる。
ほらね、ベビースター。

どうして。どんな食べ方したらこうなるの。
なんかもう怖いんだけど。
まあ、明日は掃除機かけよう。掃除サボりすぎたな。

はあ、今日も一日乗り切った。
やっと布団に入れるわ。シーツも洗濯しないとな。今度の休みは掃除と洗濯だな。
ん？なんか足に当たる、これアレじゃない？
アレだよね、嘘でしょ。
ここ布団の中だよ？どうしてこうなったのよ。
食べ方の問題じゃなくない？

すぐ隣でゲームをしている我が子に文句を言おうと声をかける。
「ベビースター散らかってるよ、気をつけてね」
「え、食べてないけど」

どういう事だ。じゃあこのベビースターはどこから来たのか。
食べて確かめた訳ではないが、絶対にベビースターだ。別の何かではない。

以前食べて落ちた物が何かの拍子に出てきた。
上着などにずっと付いていた物が落ちた。
時空を超えてきた。
パラレルワールドと繋がった。
自分が食べた事を忘れていた。
様々な要因が考えられるが、結局正解はわからない。

とりあえず犯人に違いない、と疑った我が子に謝った。
しかし解せない。
もしかするとまたどこかから出てくるのではないか、としばらく警戒していたが、それからベビースターに会う事はなかった。

休日になり、サボっていた掃除をいつもより丁寧にやってみた。
隅々まで掃除機をかける。
「カチカチ」と音がして、何か固いものを吸い込んだ。
もしやと思い、吸い込まれたゴミを見てみるとそこにはベビースター。

まだいたのかお前、となぜか会えたことに少し喜びを感じてしまったが、掃除はまめに頑張ろうと思った。

今日の就寝のお共
和山やま　ファミレス行こ。(上)