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挨拶するほどではない

なぜか頻繁に会ってしまう人はいませんか。

急用で仕事を休む事になり、時間ができたのでいつもは行かないスーパーに行ったらマヨネーズのコーナーで向こうから歩いてきたあの人。

別の日、ダイソーの棚を眺めていたら後ろの棚を見ているその人に気付いた。
スーパーの自動ドアですれ違う、など。

ここ1週間、同じ人に会い続けている。
生活エリアが近いのでそういうこともあると言われればそれまでだが、何とも言えない妙な気分である。
しかも顔見知り程度。
内向的マスターとして生活している私は決して笑顔で挨拶などしない。

間違えた、できない。
顔を伏せながら通り過ぎるだけである。

以前、別の人にだが、うっかり挨拶してしまった時に5秒ほど間をおいて「ああ、どうも」とこの人誰だっけ、という感じで作り笑いされ、穴があったら入りたかったし、壁があったらめり込みたかった。

私は人として認知されていないのだと思い知った悲しい過去を持つモンスターなので、絶対にこちらから挨拶はしない。

なので顔見知りを見かけた時は、いつにも増して気配を消す。
気軽に挨拶などしてはならない。

私は体が大きい方なのでスーパーではとりあえずそっとしゃがむ。下の棚を見ているかのように。
幸いあまり目立たない無印良品を好んで着ているため成功率は高い。

そういえば、黒は暗黒の色なので着ない、と美輪明宏さんが言っていた。
モンスター向きだ。

忍者が壁と同化するように、私もスーパーの棚に同化する術をマスターしたい。
顔見知りとは、私にとってそれほど危険な存在だ。

顔見知りとエンカウントしそうな場所へ行く時は、節目がちに2メートルほど先を見つめ早歩きで行動する。
服装は黒。素早く踵を返せるように履き慣れたスニーカー。

そうしているとウォーターサーバー勧誘のお姉さんや、サンプルを配る美容部員さんも声をかけにくいらしく、買い物は快適だ。

ふと思った。
そもそも人として認知されていないのなら、堂々と歩いても気付かれないのでは。
あちらは私のことなど背景の一部としか思っていないはずだ。

それなら、と堂々と顔を上げ、ゆったりと精肉コーナーを歩いていたら顔見知りに声をかけられた。
手には半額シールの貼られた鶏肉を持っていた。どうしてまたこんなタイミングで。
二言三言の会話をしたが、記憶がない。
失礼のなかったことだけ願う。

そしてまた私はモンスターとして行動する事を心に誓った。

今日の執筆のお供
週末縄文人
[縄文人の高みへ]進化した縄文土器づくり#26












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