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ロックバンドチャイティーヨ 激励と君達と。

Buddies。
乃木駅の周辺に唯一あるライブハウス。
スタジオが併設されていて、楽器を弾く以外にも、大人数で踊れる広いダンス用ブースもある。
約1年前まで、たくさんお世話になった場所。
特に高校3年生の1年間はチャイティーヨに次ぐ居場所だったと思う。
そんな場所でも、ギターが弾けなくなった、
いや、弾かなくなったあの日から、一度も顔を出していない。
何故飛鳥さんは此処に僕を呼び出したんだろう。
結局、ギターを背負っていざ入口をくぐるぞという今現在まで、LINEに既読はついていない。
覚悟を決めるか…。
意を決して自動ドアを潜ると、ライブホール側から音が漏れてくる。今日も誰かがライブをしているんだろう。
懐かしさと、息苦しさを感じる。
あの頃はそんな漏れてくる音すらも、僕にとっては愛しいものだったと思う。

???「あぁ〜〜〜〜〜!!!!!」

そんな思いに浸っている僕を現実に引き戻すように、大ボリュームの叫び声が響く。
声の主は受付に立っている少女。
僕の方を見て、驚いたように口をあんぐりと開けたまま、目をぱちくりと瞬かせる。
もしかしたら、またちょっと背が伸びたかな。
けど、見間違うことはない。

〇〇「久しぶり、天ちゃん」

うまく、笑えてるか分からないけど、僕は精一杯にこやかに挨拶する。そんな僕を見て、天ちゃんはハッと我に返るとカウンターを飛び出して、こっちへとすごい勢いで走ってくる。
文字通り、彼女は飛びかかってくると、僕の頭をヘッドロックよろしく締め上げる。

〇〇「天ちゃん!痛い痛い!」
天「1年以上顔も見せずに何やってた!?」
〇〇「ごめん!ごめんって!」
天「うるさい!」

空いた方の手で僕の頭をバシバシと叩く。

天「ギター続けてたんなら、バンド組んでなくたって、練習がてら顔見せにこれたでしょ!!」
〇〇「ごめんって!ちゃんと説明するから!」
天「なにがまたすぐ会うでしょだ!」

なんとか弁明しようと口を開こうとした時、甲高い音がスタジオ側から響く。天ちゃんも驚いたのか、少し力がゆるんだ。僕は何とか音の方へ視線を向けると、床の上に転がるトレンチが目に入る。
そして、そこに立ち尽くしている女の子。きっと彼女がトレンチを床に落としたんだろう。驚いたように目を見開いて、口元を手で覆っている。

〇〇「夏鈴ちゃん…」

僕に名前を呼ばれて夏鈴ちゃんは一瞬、クシャッと表情を歪めたけど、すぐに怒ったような顔でこちらにスタスタと歩み寄ってくる。

〇〇「あの、夏鈴ちゃん?」

すぐに横まで来た夏鈴ちゃんは、そのまま何も言わず僕の脇腹辺りにボスボスと拳を打ち込んでくる。
正直痛くはない。痛くはないけど。

〇〇「せめて何か言って!怖い!」
夏鈴「……」

無言のまま、まるで黙々とサンドバッグを殴るボクサーのように、ストイックに拳を打ち込んでくる。

天「…それで今更なにしに来た!?」

夏鈴ちゃんのアクションに気を取られていた天ちゃんも、僕への追求を再開。
言っても聞いてくれなさそう…。八方塞がりだ。

???「…なにやってんの?」

聞き覚えのある声に2人の動きが止まる。
顔を見なくてもわかる。

〇〇「飛鳥さん、ちょっと、助けてください」

僕は大人しく、声の主に助けを求めるのだった。


〜〜〜〜〜〜

飛鳥「…正直普段は冗談半分に言ってたけど、今度ばかりはマジの修羅場かと思った」
〇〇「人間関係下手くそってご存知でしょ…」
飛鳥「下手くその方向性どうなってんの」

スタジオブースが連なる廊下を歩きながら話す僕達。飛鳥さんの仲裁で、とりあえずの難を逃れたけど、次はなんとなく飛鳥さんに責められている気がする。

〇〇「…それより、なんでここなんです?」

ギターを弾くだけなら、別にここでなくても良い。
わざわざスタジオを借りる理由でもあるのかな。

飛鳥「練習のために決まってるじゃん」
〇〇「いや、別にギターの練習ならわざわざスタジオじゃなくても…」
飛鳥「ここ」

僕の言葉を遮るように、飛鳥さんは一つのブースを指し示す。そこはいくつかあるブースの中でも大きい方。ドラムセットが備えてある部屋のはずだ。

飛鳥「おまたせ。〇〇来ました」

中に誰か居るんだろう。
ドアを開いて、飛鳥さんはそう声をかけた。

飛鳥「ん」

促されるまま、僕もブースの中に入る。

さくら「おはよ。もうこんばんわ、かな?笑」
ハマ「お疲れ〜」

ブースの中にはよく知る2人。
しかしそれぞれギターとベースを手にしている。

〇〇「え…?」
飛鳥「さて…」

飛鳥さんは困惑して立ち止まる僕をそのままに、ブースの奥、ドラムセットの椅子に腰掛ける。

飛鳥「まずは〇〇が今どのへんにいるのか。後は、どこを目指してるのか。そのへんからかな」

フットペダルを何度か確かめるように踏み込んで、飛鳥さんが言う。

飛鳥「言ったでしょ。〇〇が現状を変えたいなら、私達は協力を惜しまない」

いつの日だったか、飛鳥さんが言ってくれた言葉。
あの日、美波さんも言ってくた言葉。

2人は私よりずっと力になってくれるよ。

美波さんが言った言葉の意味。
たぶん、このことなのかもしれない。
それに、ハマさんまで。

飛鳥「時間がもったいないから、さっそくやるよ」

目の前で巻き起こっている現実のスピード感に、頭が追いついていかないけど、話を聞くことはいつだって出来る。今はこの流れに身を任せてみよう。
僕は新しい相棒をケースから取り出した。


〜〜〜〜〜

分かっていたことだけど。
大して才能やらなんやらあるわけではない。
そんな僕が全くギターに触れない期間を1年以上過ごして、なおかつ、再開して初めて人と合わせるなんて、そんなことをあっさりやれるわけはない。
分かっていたことだけど。
今この場にいる中で、僕が間違いなく一番下手くそ。凹むには十分の内容だ。
まだ2時間ほどしか経っていないが、僕はかなりヘトヘトで、床に座り込んでブースの壁にもたれかかっていた。
飛鳥さん達はまだまだ元気そうで、あれやこれやと相談中。申し訳ないのだけど、参加するだけの元気も勇気もない。
というか、楽器できるなら言ってほしい。
聞かれなかったから。
と言われればそれまでだけど。

夏鈴「失礼します」

先程飛鳥さんが頼んだドリンクを、夏鈴ちゃんが運んできてくれた。座り込む僕に少し驚いたようだけど、トレンチに乗せたペットボトルを皆に手渡していく。

夏鈴「…どうぞ」
〇〇「…ありがとう」

飛鳥さんに助け舟を出してもらって、僕は来なくなった経緯を夏鈴ちゃんと天ちゃんに説明した。
2人は驚いて、困惑して、申し訳なさそうにしてた。
でも謝られたくないと思ったから、僕はただただ、心配かけてごめんと、これからまた改めてよろしくと伝えた。

夏鈴「…」

夏鈴ちゃんは僕にドリンクを手渡すと、床に座り込む僕の隣にしゃがみこんだ。

〇〇「夏鈴ちゃん?」
夏鈴「なんか…凹んでます?」

こちらを見ず、談笑する飛鳥さん達を見ながら、夏鈴ちゃんが言う。

〇〇「…うん、結構」
夏鈴「…あれだけ責めた私が言うのもなんですけど、そんな思いまでしてもう一度やらなきゃいけないことなんですか?」
〇〇「…うん。今キツイなって思うのも、しんどいなって思うのも、僕が立ち止まった結果だから。そこからまたやるぞって走り出した証明だから。いいんだ、それ自体は、それでいいんだ」

それが挑戦するってことだ。
傷つかず、悩まず、得られるものじゃない。

〇〇「協力してくれる人達の想いに報いたい」

飛鳥さん、さくらさん、ハマさん、そして後で差し入れを持ってきてくれるらしい美波さん。
僕の為に時間を割いてくれる人達。

〇〇「ずっと待たせてる子に、ちゃんと前を向いてるよって伝えたい」

アルノ。
何も無い僕にずっと期待し続けてくれる子。

〇〇「僕なんかの言葉に勇気づけられて挑戦を始めた子に、僕も頑張ってるよって姿を見せたい」

和ちゃん。
知らぬ間に、勇気を贈りあっていた子。

〇〇「心配かけちゃった子達にも、もう大丈夫だよってトコ見せたいしね」

僕は夏鈴ちゃんに視線を向ける。
その言葉が自分達に向けられたものだと察した夏鈴ちゃんも、僕に視線を向ける。その表情からは感情は読み取れない。そう思っていると、ふっと、夏鈴ちゃんが笑う。

夏鈴「じゃあ、いいんじゃないですか」

少しドキリとしてしまって、僕は視線を逸らした。

〇〇「…あのさ、ちょっとお願いがあって」
夏鈴「…?」
〇〇「…応援、してもらってもいい?」

言ってから急に恥ずかしくなる。
何言ってるんだろう。
ずっと顔も見せずに虫のいい話だ。
やってしまった…。
恥ずかしすぎて顔が熱い。
ふと、肩に触れるものがある。
反射的に視線を向けると、夏鈴ちゃんが僕の肩に手をおいている。

夏鈴「…頑張れ」

それだけ言うと、彼女は立ち上がり、ドアへ向かって歩き出す。

〇〇「夏鈴ちゃん?」

僕も立ち上がり、彼女の背を追うと、すっと手で静止される。

夏鈴「なんか言ってて恥ずかしくなったんで、あんまり見ないでください」

こちらも見ずに言う夏鈴ちゃんに笑ってしまう。

〇〇「ありがとね」
夏鈴「…どういたしまして」

そう言って再びドアへ歩き出そうとした動きが、ビクリと止まる。

〇〇「?」

夏鈴ちゃんの背で隠れているドアを覗き込む。
各ブースには、中の様子がひと目でわかるように窓がついている。その窓から、天ちゃんがジト目で中を覗き込んでいた。それを見た僕も夏鈴ちゃん同様、ビクリとする。

天「やっぱココでサボってた!」

扉を勢いよく開くと、相変わらずの声量。

夏鈴「…別にサボってない。ドリンク持って来ただけだし」

天ちゃんの横をすり抜けてブースを出ていく夏鈴ちゃん。

天「そんなかかんないでしょ!」

そんな夏鈴ちゃんを追って、そのまま出ていく天ちゃん。台風か。
バタンとドアが閉まって、一瞬静寂。僕はハッとして、ドアを開いて二人の背に声を掛ける。

〇〇「夏鈴ちゃん!天ちゃん!」

2人は同時に振り返る。

〇〇「バイト終わりに少し話せる?」

2人は一度顔を見合わせ、夏鈴ちゃんは無言で頷く。
天ちゃんは一瞬、泣き出しそうに顔を歪めたけど、すぐに大きな声で、

天「絶対ですよ!!」

と返事してくれた。
ブースに戻ってドアを閉じると、飛鳥さん達の視線が僕に集まっていてたじろいでしまう。

ハマ「いやぁ、モテる男は辛いね笑」
さくら「大変だ笑」
〇〇「そういうんじゃないですって」
飛鳥「で、いけんの?」
〇〇「いけます」

相棒を担いで、気合を入れなおす。
いっちょ前に凹んでる場合か。
やるんだ。
やってやるんだ。
僕が望んだことだろ。
この苦難も、試練も、鉄風も。


〜〜〜〜〜


美波「こんなことなら私も何か楽器できるように練習しとくんだったな〜」
ハマ「梅澤さん、ベース似合いそうですけどね」
美波「ハマさんと被ってたら私の出番なんかないじゃないですか笑」
ハマ「そんなことないでしょ笑」
さくら「梅澤さんがギター始めたら、私あっという間に追い越されちゃいそうです」
美波「それこそそんなことないでしょ笑」

あれから約1時間。
みっちりと合わせて終了のお時間。
帰ったらすぐ食べれるようにって、美波さんがお弁当を持ってきてくれた。
もしかして美波さんも…と思ったけど、私は楽器はできないよって笑う。

飛鳥「はーい、じゃあ今日は解散」

飛鳥さんはドラムセットの椅子から立ち上がって、パンパンと手を叩く。

飛鳥「えんちゃんも梅もありがとう。ハマさんも、わざわざありがとうございます」
〇〇「すいません!本当にありがとうございます!」 

ここまでやってもらって、お礼まで飛鳥さんに言わせてしまった。

ハマ「いや〜、なかなか新鮮で楽しかったです」
さくら「久しぶりだから緊張しちゃいました笑」
美波「いいな〜」

三者三様の返事をしながら、ブースを出る一同。
受付まで戻ると、既に帰る準備を済ませた2人が待っている。

〇〇「じゃあ、ここで。本当にありがとうございました」

しっかり一礼。

飛鳥「〇〇」
〇〇「はい?」
飛鳥「続けられそう?」

心配してくれてる。

〇〇「ありがとうございます。勿論です」
飛鳥「…そっか」

嬉しそうに笑う飛鳥さん。
今は感謝を伝えるくらいしかできないけど。

飛鳥「じゃあね。未成年に、手ぇ出すなよ!」
〇〇「出しませんよ!!」

それだけ言って、みんな笑って行ってしまう。

〇〇「ごめん、お待たせ」
天「…仲いいですね」
〇〇「だといいけど」
天「結局どういう繫がりなんですか?」
〇〇「さっきも言ったけど、小柄な女の人はバイト先のオーナーだよ。女性二人はそこのスタッフさん。男性は常連のレコード屋さん」
天「…っていう設定のバンドですか?」
〇〇「違うよ!ネタで言ってんじゃないよ!」
天「そんな上手い偶然あります…?」
〇〇「僕もびっくりしてるよ」

天ちゃんは気になると我慢出来ないらしく、矢継ぎ早に問いかけてくる。こうなると夏鈴ちゃんは聞き専になりがち。
変わんないね。

〇〇「とりあえず駅まで送るよ」
天「はーい」
夏鈴「はい」

大した距離ではないけれど、まぁ、少しくらいの話はできるだろう。

〇〇「改めてごめんね」
夏鈴「もういいですよ、そんなに謝らなくて…」
天「よくない!」

2人の反応はまったく揃わない。

天「理由はわかりました。気持ちがわからないでもないです。けど、一言あってもいいじゃないですか。Buddiesに来づらいなら、学校で話すことだって出来たじゃないですか。でも一言もなかったですよね」

真っ当すぎる意見に、返す言葉もない。

夏鈴「天ちゃん、そのぐらいで…」
天「うるさい!夏鈴は納得したふりしてるだけじゃん!自分だってホントは色々言いたいくせに」
夏鈴「う…」

言葉に詰まる夏鈴ちゃん。
図星ってことなんだろう。

天「…そりゃ、仲良しな友達ってわけじゃないし、同じ部活の先輩後輩ってわけじゃないですけど、私達だって、辛い時ぐらい、頼ったり甘えたりしてほしいじゃないですか。そんな関係性すら築けてなかったのかなって悲しくなりますよ…」
〇〇「…ごめん」

世界を広げるのはいつだって自分だ。
世界を狭めるのもいつだって自分だ。

〇〇「自分のことなんて…って思い込むのは、自分のことを想ってくれてる人に対して、失礼なことなんだなって、最近わかったよ」

こんな自分に優しくしてくれる人。
こんな自分に期待してくれる人。
こんな自分を待ってくれてる人。
そんな人達に失礼だなって。

〇〇「ちゃんとする。頑張って、ちゃんと立ち上がって、ちゃんと前に進むよ」

言葉にするって大事だと思うから。
しないと伝わらないことってあるから。
ちゃんと表現しないと、見えないこともあるから。

〇〇「だから、見ていてほしいし、これからも仲良くしてくれると嬉しいよ」
天「…絶対ですか?」
〇〇「うん、絶対。約束する。またすぐ会うよ」
天「絶対ですよ?」

駅もすぐそこまで来て、天ちゃんは立ち止まり、小指を突き出す。

天「約束」
〇〇「はいはい」

僕も指を出して、いつぶりだろう、
子供みたいに指切りする。

天「じゃあこの話はこれで終わり!」

からりと笑う天ちゃん。
僕はそんなやりとりを見てどことなく不満げな夏鈴ちゃんにも指を出す。

〇〇「夏鈴ちゃんも、約束するよ」
夏鈴「…ちょっと、恥ずかしいです」

そう言いながら付き合ってくれるのも彼女らしい。

天「あ!〇〇さんバイトって毎日ですか?」
〇〇「ん?いや、毎週水曜日は定休日でお休み」
天「じゃあ、ダンス部の見学来てくださいよ!」
〇〇「……何故?」
天「私達は〇〇さんがギター弾くの何度も見てるけど、〇〇さんは私達が踊ってるトコなんてほとんどみてくれたことないじゃないですか!」
〇〇「まぁ…、確かに」
天「私達もがんばってるんだぞ、スゴいんだぞってとこ、見せてあげますよ」

たぶん、褒められたいんだろうな。
とはいえ断る理由もない。
夏鈴ちゃんに視線を送ると、無言でこくりと頷く。

〇〇「じゃあ、お邪魔しようかな」
天「よし!」

ガッツポーズ。

天「先生には話通しておきますね!」
〇〇「顧問、澤部先生だっけ」
天「そうです!あ、LINE教えてください。細かいこと、送ります」
〇〇「そういや交換してなかった」
天「どうせ毎日会うし、とかなんとか思ってたんでしょ!どうせ!」
〇〇「そう責めなさるな…」
天「まったく…」
〇〇「夏鈴ちゃんも、はい」 
夏鈴「あ…、はい」
天「よかったじゃん。どうせ自分からは頼めなかったでしょ」
夏鈴「うるさいなぁ…」

無事にLINEを交換し終わり、2人は改札へ。

天「じゃ、また連絡します!」
夏鈴「お疲れさまでした」
〇〇「うん、またね」

改札を抜けてホームへ向かう2人を見送る。
と、天ちゃんが立ち止まって振り返る。

天「そういえば、私にはお願いしないんですか?」
〇〇「ん?」
天「夏鈴にはお願いしたんでしょ?応援してほしいって」
〇〇「……」

夏鈴ちゃんの方を見ると、気まずそうに目を逸らされた。

天「なんか自慢げに言われたんですけど。〇〇さんに応援してほしいって言われたって」
夏鈴「別に自慢ってわけじゃ…」
天「あーあー、なんかなー。気に食わないなー」

すごい棒読みと言うかなんというか。
けどまぁ、してもらえるならそれはそれか。

〇〇「天ちゃん」
天「はい?」
〇〇「頑張るから、応援してくれる?」

天ちゃんはそれはもうニヤニヤしながら、

天「しょ〜がないなぁ〜」

と、前置きして、手を口元に添えて、

天「〇〇さーーん!!頑張れーーー!!」

そんな大声出さなくても。
周りの人メッチャ見てるよ。
けど、まぁ、気持ちは伝わる。
僕はつい笑ってしまって。
けど、嬉しかったから。

〇〇「ありがとー!」

つい、大きな声で答えてしまった。
天ちゃんはニッコリ笑って手を振って歩き出す。
夏鈴ちゃんも最初は呆れたようにしてたけど、歩き出す直前、笑ったように思える。
2人がホームに消えるのを見送って、僕も家路をゆく。ポケットにしまった携帯が震える。

天『改めてよろしくお願いします!』

若い子はマメだなぁ。なんてオジサンみたいなことを思いながら、こちらこそ。と返信しておく。
返事を返した所で、新たにメッセージ。

夏鈴『天ちゃんが今送れってうるさくて』

ホームでも小競り合いしてるのかな。
わざわざありがとうと返しておく。
ポケットに携帯をしまい、夜の道を歩く。
なんだか色々ありすぎて、頭がついて行ってない気がするけど、確かな充実感がある。
たくさん応援してもらった。
僕もその分、彼女達を応援しよう。
ポケットの携帯が震える。
返事が来たのかな。
画面を見るとグループへの招待が来ている。

“ロックバンド チャイティーヨ”

僕はあまりにも真っ直ぐなグループ名に笑う。
メンバーは、いつものチャイティーヨスタッフとハマさん。

飛鳥『今後の練習スケジュールなんかはここで共有します』

これからも付き合ってくれるみたい。
一生懸命頑張ります。

〇〇『了解しました!』

さぁ、明日も練習するぞ。



乃木駅から徒歩6分ほど。
カウンター5席、2名がけテーブル席2つ、
4名がけテーブル席1つ。
毎週水曜定休日。

喫茶チャイティーヨ

明日も引き続き設備点検のため、
臨時休業とさせて頂きます。
悪しからず、ご了承くださいませ


激励と君達と。 END…



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ライナーノーツ。

本来このお話は、前回の正鵠と君と。にて書く予定だったのですが、あっちが一万文字越えたので分割して、次の話とくっつけよ。
と思ってたのですが、こっちも七千文字越えたので、もうこれはこれで単体で上げちゃいます。
Xの方で書いた予告分までいけなかった。
予告詐欺だ!

次回こそは〇〇母校にゆく。
ダンス部の見学に向かった〇〇はそこで懐かしい出会いと新しい出会いをする。
そんな感じでよろしくお願いします。

次のお話

前のお話。

シリーズ。

番外編“喫茶チャイティーヨの賄い”を不定期営業したり、なんか小ネタ呟いたり、執筆状況呟いたり、色々してるX。


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