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After1 パオパオ


齋藤「あー?何買うんだっけ?」
〇〇「餃子の材料は買いますね。あとは飲み物と…」

某スーパーマーケット内。

本日は梅さんと飛鳥ちゃんのチートデイに、調理要員としてお呼び頂きまして、ただいま買い出し中。お世話になってる方々なので、しっかりお手伝いしたい所。

齋藤「…何入ってたっけ」
〇〇「割とシンプルじゃなかったですっけ。…梅さん式のって意味ですよね?」
齋藤「…いや、そもそも餃子って…」
〇〇「…嘘でしょ? シャープさいとうあすかめしは?」
齋藤「おい…!」

肩パン。

〇〇「おぉ、パンチにキレがある。アクション練習が生きてますね」
齋藤「全体的にイジってる感じすんな?」
〇〇「滅相もない。野菜から行きましょうかね」

青果コーナーに突入したので、まずはお野菜から。

齋藤「ニラ…は入ってた」
〇〇「入ってますね〜」
齋藤「あとなんだっけな〜…」
〇〇「何でしたかね〜…」
齋藤「…キャ、キャベツ」

おずおずと回答する飛鳥ちゃんに、ちょっと笑いがこみ上げてくるけど、ここで笑うと怒られるので、努めて冷静に返答しよう。

〇〇「お見事」
齋藤「あと、にんにく」
〇〇「その通り」
齋藤「…キムチ入れるから白菜はいっか」
〇〇「結構」
齋藤「……アタック25?」
〇〇「よくご存知だった。白のパネルが水色に変わる…!」
齋藤「サイリウムカラーなのムカつく笑」

そんなこんなしつつ、飛鳥ちゃんが野菜類を俺の持つカゴに放り込む。

〇〇「お、新生姜。早いすね」
齋藤「そうなの?」
〇〇「ハウス栽培のなんでこの子は早いんすけど、大体は夏前位から出てきて、初秋くらいが旬なイメージですかね」
齋藤「ふ〜ん…」
〇〇「興味うす〜。行っときますか」
齋藤「はいはい」

新生姜をカゴに入れてもらい、前進。

〇〇「次はお肉ですね〜」

青果コーナーを抜けて、精肉コーナーへ。

齋藤「豚ミンチと餃子の皮…」

飛鳥ちゃんは餃子の皮のコーナーに手を伸ばそうとして、一瞬迷った後、

齋藤「…どれ!?」
〇〇「そんな怒らんでも」

確かに種類色々ありますけども。

〇〇「普通のでいいんじゃないですかね」
齋藤「へーい」

カゴにIN。

〇〇「お…手羽先が安い」
齋藤「焼くの?」
〇〇「餃子に手羽先と言えばアレですよ。鳥ミンチと大葉と白ネギを追加しましょう」 
齋藤「大葉と白ネギ取ってくるから、鳥ミンチ選んどいて」
〇〇「ありがとうございます」

すたすた歩いていく後ろ姿を見送って、鶏手羽先、鳥ミンチのムネとモモを一つずつ。
隣の畜産加工品、ハムやソーセージのあるコーナーから赤ウィンナーをカゴへ。

齋藤「取ってきた〜」

白ネギと大葉を左右それぞれの手に持って、飛鳥ちゃんが戻って来る。そこはかとない“はじめてのおつかい“感。

齋藤「…なんか失礼なこと考えてない?」
〇〇「いえ、とんでもございません。ありがとうございます」
齋藤「…ならいいけど」

カゴへネギと大葉が仲間入り。

〇〇「beer! beer!」
齋藤「はしゃいでんな〜」
〇〇「…アサヒさんにしましょうね」
齋藤「競合気にしてくれてどうも笑」

いつもお世話になっております。
今後も宜しくお願い致します。

〇〇「さぁお会計しましょう。申し訳ないんですがこっち預かってもらえますか?」
齋藤「最初から渡してくれていいのに」

差し入れ用のアイテムを飛鳥ちゃんに渡して、お会計を済ませ、テキパキ袋詰めしてスーパーを出る。

齋藤「……」

こちらのスーパーの袋と、自分の持つ差し入れアイテムを見比べ、呆れたような顔をする飛鳥ちゃん。

齋藤「…わざとやってる?」
〇〇「…なんのことでしょ」
齋藤「はいはい…」

飛鳥ちゃんはそれ以上何も言わず、歩き出す。
出来たら荷物は全部こちらで持ちたい所だけど、それはそれで気を使わせそうだから、なるだけ軽いものをって。こういうの、もう少しサラッとやれたら理想だけど、そううまくはいかないもんだね。

〜〜〜〜〜〜

梅澤「お、買い出しお疲れさま。入って入って。飛鳥さんも!」
〇〇・齋藤「お邪魔します」

色々あーだこーだ悩みはしたものの、結局会場は梅さん宅に。設備やら立地やら都合やらが一番良かったもので…。

齋藤「梅んち久しぶりかも」
〇〇「俺、初めてです。…あ、冷蔵庫失礼します」
梅澤「どうぞー」

買ってきた食材から野菜類以外を冷蔵庫へ。

〇〇「キッチン設備、充実してますね」
梅澤「食とは結構真剣に向き合ってるから笑」
〇〇「配信中のチートデイでも仰ってましたね」

荷物を置かせて頂いて、手を入念洗い。

〇〇「早速やっていきますか?」
齋藤「その前に乾杯したーい」

カシャプシュ。

梅澤「はや笑」
齋藤「ほら、なんて言ったっけ…。こういうのがいいんでしょ?…キッチンランナー?」
〇〇「台所走ったら危ないですよ。キッチンドリンカーとか、キッチンドランカーとかですかね」
齋藤「なんかそんなやつ」
梅澤「適当笑」

飛鳥ちゃんにならい、こちらもビールの缶を開ける。

一同「乾杯!」

缶を合わせ、あおる。

齋藤「うま」
〇〇「楽しくなってきましたね」
梅澤「好きだねぇビール」

お酒全般好きだけども、最初のビールの旨さはまた特別なものがある。

〇〇「さぁ、やってきましょう」
梅澤「お〜」
齋藤「元気だな」
〇〇「梅さん、材料刻むのお願いしていいですか?俺、手羽先の骨抜くので」
梅澤「了解〜」
齋藤「私は〜?」
〇〇「飛鳥ちゃんは野菜洗って梅さんに渡してもらえます?」
齋藤「は〜い」

今日はタネを2種類作ってもらう。
梅さん式のと、鳥ミンチ白ネギ大葉のさっぱり目。

梅澤「オッケー。もう練る?」
〇〇「お願いします」
梅澤「飛鳥さん、鳥ミンチの方練ってください」
齋藤「人使い荒いな〜」

ビールをあおりながら言う飛鳥ちゃん。

〇〇「まだ野菜洗っただけでしょ笑」
齋藤「はいはい、わかりましたよ…」
梅澤「はい、どうぞ笑」

並んであんを練る2人。個人的に、この2人はあまり人に甘えない人達だと思う。
飛鳥ちゃんは最後期まで残った1期生。同期達が続々と卒業していく中で、後輩達を見守り、導く存在として、最後まで走り続けてくれた。心強かった分、卒業によるショックはファンばかりではなく、メンバーにも波及したことは言うまでもない。乃木坂結成当時は最年少として、同期の皆さんが支えてくれた分、きっと後輩達を支えようと思ってくれていたんだろう、その姿は華奢な身体からは想像できないくらい頼もしかった。

梅さんは加入当時から出来上がってる人だなと思ったことを覚えてる。
アイドルは伸びしろ。
まだ未完成で、これからの成長や変化を期待して採用する。みたいな風潮を感じることが多い。勿論、梅さんも成長や変化は多分にしている。けれど、オーディションの頃の映像を見ても、今のような変化をするなんて、俺には想像もできなかった。
当初からあまり人と馴れ合わず、わかりやすく誰かに頼ったり甘えたりする姿はあまり見ない。特に、副キャプテン、キャプテンと役割を担うようになれば、ますます弱い姿は見せづらくなる。

そんなイメージの2人。

でも、そんな2人が一緒になると、お互い年相応のじゃれ合いや、甘えを見せることができている気がする。頼れる先輩としての側面が強い2人だから、時には遠慮なく甘えたり、ふざけたり出来る時間があってほしいから、こういう機会はこれからも設けて欲しいなと、思う。

〜〜〜〜〜〜

齋藤「やっと終わった…」
梅澤「これからスタートですよ笑」
〇〇「飛鳥ちゃん、お皿運んでくださいな。餃子持ってくんで、梅さんホットプレート温めてください」梅澤「はいはーい」
齋藤「…2人は料理好きだねぇ」
梅澤「これから美味しいもの食べる!って思うと楽しくないですか?」
〇〇「料理をするっていうのは、これからこれだけ手をかけたものが食べれるぞ!っていう期待を煽る感じで楽しいんですよね」
齋藤「キライじゃないけどそこまでは楽しめないな〜」

2人はホットプレートに餃子を並べていく。

〇〇「梅さん、焼ききれ無さそうな餃子は冷凍庫に入れちゃっていいですか?」
梅澤「あ〜…入るかな?」
〇〇「おぉ、そんなに?」
梅澤「開けてみ」

お言葉に甘えて、冷凍庫を開く。

〇〇「まぁ〜」

仰る通り、ぎっしりと。

梅澤「いや〜、冬の間についお取り寄せしちゃった蟹が…」
〇〇「これは立派ですわ」

冷凍庫のスペースを大きく占領する蟹は、中々どうして立派なサイズである。

梅澤「頼んだときはやる気に満ちてたんだけどさぁ…」
〇〇「まぁお取り寄せの時差あるあるかもしれないですね笑」

とはいえ、手に余ってるなら。

〇〇「良ければ、餃子の後Uberって話でしたけど、蟹食べますか?」
梅澤「やってくれんの?」
〇〇「梅さんがいいなら」
梅澤「頼んじゃおうかな。飛鳥さーん、蟹食べますか?」
齋藤「え、食べたーい!」
梅澤「食べよ!笑」
〇〇「どう食べましょうかね〜」
梅澤「良かったら野菜とか冷蔵庫にあるもの使ってくれていいよ」
〇〇「ほうほう」
梅澤「冷凍庫にあとうどんとかもある」
〇〇「…そろそろ暖かくなるでしょうし、鍋の食べ納めということで、かにすきでもしますか」
梅澤「かにすき?」
〇〇「えーっと蟹が入った寄せ鍋って感じですね。確かにあんまりこっちでは聞かないかも」
梅澤「じゃあそれにしよ!」
〇〇「了解です。餃子、頼みます。こっちで手羽先揚げながら、かにすき仕込みます。余った餃子のタネ、つみれにして鍋に入れちゃいましょう」
齋藤「…そういうのはホント得意だよね」

餃子の焼き上がりを待つだけになったからか、いつの間にかキッチンを覗き込みながら飛鳥ちゃんが言う。

〇〇「…そういうの“は”って…。何年おひとりさま天国してると思ってるんですか」

飛鳥ちゃんは容赦無い。

〇〇「餃子、焦がさんでくださいね」
齋藤「わかってます〜」

こっちは昆布出汁を引きつつ、手羽先に餃子のタネを詰めた手羽先餃子を揚げにかかる。

梅澤「これはテンション上がる!」
〇〇「いいでしょ?骨さえ抜ければ結構簡単で、見栄えも派手なんでオススメです」
齋藤「餃子そろそろ焼けそうー!」
〇〇「タレの準備もしましょうか」

酢、醤油、コショウ、味噌などを準備。

〇〇「よーし、食べましょー!」
齋藤「はやくはやく!」
〇〇「はいはい」

お酢にコショウをいれたお皿、酢と醤油を混ぜたお皿を飛鳥ちゃんの前にセット。

〇〇「こっち、梅さん式でこっち鳥ミンチ」 
齋藤「おいしそ〜」

2種類を盛り合わせて飛鳥ちゃんの前に。

梅澤「久しぶりに見たな笑」
〇〇「何をです?」

梅さんの分の餃子を盛っていると、梅さんが笑う。

梅澤「いや、〇〇が飛鳥さんの世話焼くトコ笑」
齋藤「なんか私がいつも面倒みさせてるみたいじゃん」
〇〇「そういえばなんかやっちゃってるかもしれないですね」
齋藤「別に頼んでないし…」
〇〇「そうですね、俺が勝手に焼いてるだけですからね〜」
齋藤「なんかムカつくな〜…」
梅澤「笑。懐かしい絡みだ」
〇〇「はい、とりあえず食べましょう!」

盛り付け終わって全員の前に餃子が着弾。

一同「いただきます!」

一斉に餃子を食べ始める我々。

齋藤「うま!」
梅澤「うわ〜、手羽先餃子も美味しい」
〇〇「うまいっすね〜。あ、良かったら味噌ダレも試してください」

味噌、醤油、酢、砂糖何かを混ぜて作る味噌ダレ。

梅澤「たまに見るね、餃子味噌ダレで食べるの」
〇〇「うちの地元だと定番なんすよね。餃子に味噌ダレ」
齋藤「…神戸だっけ?」
〇〇「おっ、凄い。知ってくれてますね!」
齋藤「ニヤニヤすんな…!」

鋭い肩パン。

梅澤「仲良しか笑」
齋藤「仲良くないから…!」
〇〇「ありがてぇっす笑」
齋藤「ウザい流れになってきたな…!」

言いつつ、味噌ダレでパクリ。

齋藤「あ、うま!ビールだビール」

て、ビールで流し込む飛鳥ちゃん。

〇〇「美味しいでしょ?」
梅澤「鳥ミンチがさっぱりだから、味噌ダレとも相性いいね」
〇〇「是非神戸来ることあったら、食べてくださいね」
梅澤「あ、そうだ。今度与田と和と行くんだっけ?」齋藤「そうなんだ?何かの企画?」
〇〇「あそぶだけの企画ですね。神戸に一泊二日なんすけど…」
齋藤「珍しいじゃん」
梅澤「飛鳥さん、アレですよ。アレ」
齋藤「アレ…?」
梅澤「この時期〇〇恒例の…」
齋藤「…あ〜!有給消化週間か!懲りないな〜」
〇〇「ここでも怒られてる」
梅澤「メンバーにはしょっちゅう休むように言ってるのに、自分は有給もまともに消化しないんだから」
〇〇「説得力ないぞって毎年怒られます…」
齋藤「自業自得でしょ」
〇〇「仰るとおりで…」

ついつい後回しにして、バスラ終わりぐらいに怒られるのが毎年の事になっている。

梅澤「今年はかなり企画に乗っかって、同行ついでに有給使えって言われてんだよね」
齋藤「それは有給休暇なのか…?」
〇〇「今年はズルいんですよ…。どうせ言ってもとらないから、メンバーに企画に同行して!って言わせてスケジュール調整してくるんですよ!断れないじゃないですか!」
梅澤「その前にちゃんと取りなよ笑」
齋藤「メンバーに甘すぎる笑」
〇〇「ホントにズルい」
齋藤「ちなみに今んトコどんくらい決まってんの?」
〇〇「え〜っと。だっちょさんとい…和と神戸で餃子でしょ」
齋藤「い…笑」
梅澤「い…笑」
〇〇「趣旨がブレるから笑 諸先輩方の前だとやっぱ出ちゃいますよ名字呼び!」
齋藤「わかったわかった笑」
梅澤「やり直しやり直し笑」
〇〇「イジりがすげぇんだから…。んで、その神戸が一泊二日で。なんかうちの実家訪問みたいな流れ出来てて何とか避けたいんですけどね…」
齋藤「なんでそんなことになってんの?笑」
〇〇「まぁ、お休みですし、地元まで来たから実家帰ってやれば?みたいな話になったんですよ。じゃあ2日目午前中に2人は神戸で遊んでもらって、俺はちょっと顔出してくるかって言ったら…」
梅澤「与田が悪ノリしたんでしょ」
〇〇「そうなんですよ…。何故か和も乗り気になっちゃって」

まさか和が乗ってくるとは思わなくて驚いた。

〇〇「後は瑛紗にモネの連作展に連れてってもらうことにもなりそうですし」
齋藤「美術館?」
〇〇「ええ。ただ大阪なんですよ」
梅澤「〇〇は東京の会期中にスケジュールが合わなかったんだっけ」
〇〇「はい。有給で大阪の展示見に行こうかなって行ったら瑛紗のスケジュールが空いてて、行きたいって…」 
齋藤「で、断れなかったと?」

無言で頷き。
すると2人は急に声を潜め、2人だけで話し始める。

齋藤「…これは大丈夫なの?」
梅澤「…うーん、私は大丈夫と思ってるんですけど、それ聞いたかっきーと和がソワソワしてて…」
齋藤「えっ…和も仲間入りしてんの?」
梅澤「なんか最近っぽいんですよね…。確信してるわけじゃないんですけど…」
齋藤「マジか…」
〇〇「なぜコソコソ話?」

眼の前でされると気になるんですけど。

梅澤「まぁまぁ。まだあるんでしょ?」
〇〇「あとは山さんと遥香の卒業前のペア旅行企画ですね」

それ聞いた瞬間、また2人のコソコソ話が始まる。

梅澤「私これが一番心配です…」
齋藤「…いやぁ〜、これは…、う〜ん…」

なんの話ししてるか聞こえないけど、仲良し感あっていいか。

〇〇「餃子もあらかた食べましたし、蟹いきますか」
梅澤「あ、そうだね!」
齋藤「よしよし、そうしよう」
〇〇「なんだろう、わざとらしいですね」

ホットプレートを片付けつつ、かにすきを煮立てる。

齋藤「自分らしくやれてるみたいじゃん?」

隣で洗い物をしながら、飛鳥ちゃんが声をかけてくる。

〇〇「そうですね、探り探りではありますが」
齋藤「…楽しい?」
〇〇「楽しいっすね。今日もめっちゃ楽しいです」齋藤「…あっそ」

素っ気ない返事に、優しさを感じる。

梅澤「カセットコンロ準備出来ましたよ〜」
齋藤・〇〇「はーい」

かにすきの鍋をテーブルにセットして、取り皿を飛鳥ちゃんに運んでもらう。

〇〇「熱いんで気をつけてくださいね」
齋藤「…バカにしてる?」

取り皿に盛り付けて、飛鳥ちゃんの前に置く。

〇〇「別にしてませんよ笑 蟹ちょっと待ってくださいね」

キッチンバサミで切れ込みを入れ、殻を外して取り皿に。

齋藤「ぜったいうまいやつ」
〇〇「はい、梅さんもどうぞ」
梅澤「ありがと〜」
齋藤「あっつ。…あ、うま!」
〇〇「だから熱いですって」
梅澤「生姜効いててあったまるね。赤ウィンナーもうま〜」
〇〇「焼こうかと思って買ったんですけど、鍋にもいいっすよね」
齋藤「これは日本酒だったな〜」
〇〇「ありますよ〜」

差し入れアイテムは地元の日本酒。
キッチンから持ってきて、グラスに注ぐ。

齋藤「うまっ!」
〇〇「蟹は日本酒ですねぇ〜」
梅澤「あんまり日本酒飲んだこと無いかも」
齋藤「梅、お酒あんま強くないしね」
〇〇「唇濡らす程度に試しますか?」
齋藤「なんだその表現笑」
梅澤「じゃあちょっとだけ笑 …あ、美味しいかも」
〇〇「結構飲みやすい子ですしね」
齋藤「意外とイケるのか」
梅澤「楽しみが増えちゃったかも」

〜〜〜〜〜〜

梅澤「飛鳥さん全然連絡くれないんですもん〜!もっと遊びましょうよ〜!」
齋藤「全然ダメだったわ」
〇〇「全然ダメでしたね」

かにすきがあらかた片付く頃には、すっかり梅さんが出来上がってしまい。

齋藤「連絡しないのはお互い様じゃん…?」
梅澤「こういうのは先輩が誘うんです!後輩からなんて行けないじゃないですか〜!」
齋藤「あぁ…そう?」
梅澤「そうなんです〜!」

こういうトコあるの、可愛いんだよな梅さん。
見た目も、キャプテンっていう立ち位置も、少し近寄りがたい雰囲気になってしまうけど、乃木坂のキャプテンらしい、可愛げもある人。
飛鳥ちゃんも梅さんも結構シャイというか、自分からあまりグイグイ行く人じゃないから、卒業後もこういう機会が定期的に設けられるかちょっとだけ気がかりだった。

齋藤「TGCとかで会うじゃん?」
梅澤「ただ会ってるだけじゃないですか〜!ちょっとこっち来てください!」
齋藤「なに〜…。あー、もう熱いな~!」

隣に座らせた飛鳥ちゃんを抱き締める梅さん。

齋藤「…酔っぱらいめ」
梅澤「…いいです、酔っぱらいでも」

尊いって言葉。
初めて聞いた時は大げさなって思ったけど、そう言いたくなる気持ちも分かるようになった気がする。
とはいえ、眼の前で巻き起こっていると尊死しそうなので一足先に片付けに取り掛かろう。

鍋をキッチンへ運ぼうとすると、飛鳥ちゃんが視線で“置いて行く気か!”と訴えてくるけど、にこやかに笑顔だけ返して行動開始。

2人はそのままなにか話しているけど、俺が聞くべきことではないと思うし、なんだかんだ言いつつそのまま話を聞いてあげる飛鳥ちゃんの優しさとか、お酒の勢いこそあれど、甘えを見せた梅さんの勇気とか。
素敵だなって思う。
信頼とか、絆とか、大袈裟な言い方かもしれないけど、そういうものは離れていても何処かでつながっていて。ふとした時にそれを感じられることが、幸せだと言わずなんと言おう。そんな人に恵まれていること自体も。

〜〜〜〜〜〜

齋藤「ちょっと〜、どうにかしてよ〜」

洗い物やゴミのまとめも済み、キッチンを出ると流石に疲れたのか、飛鳥ちゃんが助けを求めてくる。

〇〇「梅さん、そろそろ飛鳥ちゃんも帰る準備しないと」
梅澤「…もう帰るの?」

酔いのピークも過ぎ、やや眠たげな梅さん。

〇〇「飛鳥ちゃんも明日のお仕事もありますから…。ね」
梅澤「……」

名残惜しそうに飛鳥ちゃんを開放する梅さんは、いつものカッコいい姿からはあまり想像できないくらい、しょんぼりとしてて。
なんとなくほっとけ無くて、隣に座る。
飛鳥ちゃんにこっちは任せてくださいと目配せすると、彼女はお手洗いへ向かった。

〇〇「楽しかったですね」
梅澤「うん、楽しかった…」
〇〇「またやりたいですね」
梅澤「やりたい…」

ほとんどオウム返しな梅さんだけど、それでも気持ちは伝わる。

〇〇「呼んでくれてありがとうございます」
梅澤「ごめん…ほとんど片付けとかもしてもらっちゃって」
〇〇「そのために来てるようなもんですから」
梅澤「…ありがとう」
〇〇「こちらこそ。いつもありがとうございます」
梅澤「…5期のみんな、最近嬉しそうだよ。名前呼びしてくれるんですって。接し方も仲間って感じがしてうれしいって…」

急に話が飛んだけど、きっとその話をいつかしようって、ずっと思っていてくれたんだろうな。

〇〇「それも梅さんと飛鳥ちゃんのおかげですよ。お二人がくれたきっかけのおかげです」

だから、この人が見守ってくれているのはメンバーだけじゃなくて。本当にありがたい。

〇〇「めちゃくちゃ感謝してます。あと尊敬も。メンバーにも負けないくらい」
梅さん「……もー!!」
〇〇「なになになになに」

急に俺の髪をワシャワシャとかき回す梅さん。

梅澤「なんかめっちゃついた…」
〇〇「そりゃ整髪剤つけてますから…」

ボサ髪のまま、ウェットティッシュで梅さんの手を拭く。

梅澤「…なんか珍しい笑」
〇〇「何がです?」
梅澤「……世話、焼いてもらうの」
〇〇「…そうですね。梅さんいつも立派だから、俺なんかがお手伝いできること少ないですから」
梅澤「……」
〇〇「けど、できる限り恩返ししていきたいので、微力ですけど頼ってくださいね」
梅澤「……生意気」
〇〇「痛い痛い」

何故か頬をつねられる。

齋藤「…なにイチャついてんだ」

いつの間にか戻ってきていた飛鳥ちゃんが部屋の入口からこっそり覗き込んでいた。

〇〇「どこみたらそうなるんすか」

ボサボサの髪で頬つねられてんすけど。

〇〇「…さて、お暇しましょうか」
齋藤「…だな」
梅澤「めっちゃ寂しい〜」

玄関までお見送りしてくれる梅さん。

〇〇「冷蔵庫にかにすきの汁、漉して入れてあるんで、明日にでも雑炊にして食べてください」
齋藤「マメだなぁ」
梅澤「ホントありがと〜」
〇〇「それじゃお邪魔しました。お休みなさい」
齋藤「お疲れ〜」
梅澤「絶対また来てくださいよ!」
齋藤「はいはい」

〜〜〜〜〜〜


齋藤「でさ、〇〇はどうなの?」

帰りのタクシー、普段は同乗はご遠慮する所だけど、ちょっと話したいことがあるということで。

〇〇「…どう、とは?」

飛鳥ちゃんはこちらを見ずに、流れていく窓の外を眺めながら切り出した。

齋藤「よく言うじゃん。後輩と連絡取ってあげてくださいね、とか。誰々とは最近会ってますか?とか」

〇〇「…まぁ、よく言いますね」
齋藤「自分はどうなのって話」
〇〇「俺、ですか。…俺が会ったり連絡した所で…」

何かあります…?
そう続けようとして、飛鳥ちゃんのため息に遮られる。

齋藤「…マジで言ってる?」
〇〇「…マジ?」
齋藤「っとにさぁ…」

呆れられとる?
飛鳥ちゃんは窓の外に向けていた視線を、こちらへ向ける。

齋藤「今日振り返っても、本気でそう思ってるわけ?」

すこし、面食らいつつ、今日を振り返る。
もしかして、

〇〇「……いいんですかね、自惚れて」
齋藤「…知るかバーカ」

また視線を外に向けて、飛鳥ちゃんは独り言みたいに続ける。

齋藤「……私も梅も、自分から連絡出来るタイプじゃないって知ってんだから。そっちからしてくりゃいいじゃん」
〇〇「そうですね…」

タクシーが飛鳥ちゃんのうち近くで止まる。

齋藤「あー!ヤダヤダ。何言ってんだろ」

タクシーから降りながら、飛鳥ちゃんが恥ずかしそうに言う。

〇〇「飛鳥ちゃん」
齋藤「なに!」
〇〇「…また連絡します」
齋藤「……勝手にすれば」

子供っぽく吐き捨てて、一度も振り返らず飛鳥ちゃんは歩き去っていく。その背が見えなくなってから、タクシーを出してもらう。

恵まれていると思う。
人に、立場に。
本当に幸せなことだと思う。尊敬する人に甘えてもらえること、頼りにしてもらえること。不安も心配も、なんもかも、その人達の言葉で超えていける気がする。



パオパオ(オッドアイ) END…



________

ライナーノーツ
今回は飛鳥ちゃんと梅さんのチートデイにお邪魔する話を、オッドアイの餃子パーティーを歌った楽曲“パオパオ”を題材に書きました。
期をまたいだコンビでは特に好きな2人。
一期と三期で先輩後輩だけど同い年。
身長差や一見クールだけど決して冷たくない人柄。そんな所も素敵な2人。
そんな2人がプライベートではチートデイを共に過ごしたりする距離感なのがすごくいいなーと思っていて、いずれ書きたいと思っていました。
本編やEXでもこの2人は〇〇にとっての恩人であり、その際のお礼を改めて伝えるべく、〇〇が料理をしまくる回となりました。

私が飛鳥ちゃんを書くとき、どうしてもデレ成分が少なくなりがちです。他の書き手の方の作品では、やはりしっかりデレる飛鳥ちゃんやしっかりツンデレな飛鳥ちゃんが主流の印象なのですが、どうも自分の中の飛鳥ちゃんはこのスタンスなんですね。今回書くにあたって頑張ってデレ成分をマシマシしようと思ったのですが、結果は御覧の通り。
とはいえこの回を書くにあたり、確実に描写したかった飛鳥ちゃんのデレ方を自分なりに書けたので良かったかなと。

私が書く梅さんはかなりしっかりものの面を強調しています。でもそんなクールな印象やしっかりものの印象から溢れて出てくる可愛さもこの人の大きな魅力なので、今回はそんな面が少しでも出せたらと意識しました。
構想を考え出したのが、ちょうど乃木中のB級ニュースでスマホ風呂に投げ込んだり、たべるじゃないですか?ティッシュとか。の放送の辺りだったので、やっぱ可愛い人だなぁと思ったのも大きいです。それでもデレ分や可愛げの部分は他の書き手の方と比べて控えめかもしれません。

結果カットしましたが、
・身長いじり
飛鳥ちゃん158cm
梅さん170cm
〇〇180cmくらい
で設定しており、飛鳥ちゃん小さいね。お前らがデカすぎるだけ。的なくだりを考えていましたが、スーパーのくだりを飛鳥ちゃんと〇〇だけに切り替えたのでカット。

・赤ウィンナーをタコやらカニやらにして笑われる〇〇
カニがマジの蟹に変わってカット。

・梅さんの〇〇への甘え方
元は飛鳥ちゃんへのデレ方に近い形で〇〇にも甘える形で構想していましたが、なんとなく違和感があって現在の形に。


次回の更新はてれぱんと“モネ 連作の情景”の大阪展示を観に行くお話を書いてる最中。
ようやく実際観に行けたので、熱のあるうちに書き上げてしまいたい。あいも変わらず需要とややずれしてる気がすると書いてる間にも感じておりますが、宜しければお付き合いください。

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