「権利証」を紛失した場合どうすればよい?
以前に「不動産権利証」「登記識別情報」についてご説明しました。
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今回は、それらを紛失した場合にはどうすればよいかについて解説していきます。
権利証が必要なときはいつ?
権利を持つ人がその権利を手放す登記を申請する際や権利を手放すわけではないけれども自分に不利益な登記を申請する際には「登記権利証」や「登記識別情報」が必要になります。
例えば…売買のとき、抵当権をつけるときなどです
権利を手放す登記申請とは、代表的なものが「売買」です。売ってしまえば権利が買主さんに移りますから、権利を手放すことになるわけです。自分に不利益になる登記申請とは、例えば自分の所有する土地や建物を担保に入れる(抵当権をつける等)です。お金を貸してもらえることは利益と言えますが、担保を付けるということはお金を返せなくなると不動産を売られてしまうことになるので、不動産をベースに考えると不利益な登記申請となります。
権利証がなかったら売買などできないの?
さて、その際に必要となる「権利証」や「登記識別情報」がない場合には手続きができないのでしょうか?というのが今回のお話です。結論的には、できます。できますが、やや費用がかさんだり、手間が増えるというお話なのです。
できます!
3つの方法があります。
① 事前通知制度
事前通知制度は、いったん先に「権利証」や「登記識別情報」をつけずに申請します。(印鑑証明書は必要です)そのあとで法務局から「こんな申請がされていますが間違いないですか?」という趣旨の通知が申請した住所に届きます。これに印鑑証明書の印影と同じ実印を押印して法務局に返却すれば、「権利証」や「登記識別情報」をつけて申請した際と同様に審査されます。「なんだそれだけでいいの?」と言いたいところですが、この通知は「法務局が発送した日から法務局に返却される日まで」が2週間に収まっていないと登記申請が却下されます。通知が届いてから2週間ではありませんので注意が必要です。さらに、不動産の取引などでは基本的に使えません。なぜかというと、不動産の取引は、司法書士が立会って書類を確認し確実に買主名義になることを保証して、買主さんがお金を支払うシステムです。したがって、2週間以内に事前通知が返却されないと却下される可能性があるものに買主さんも大金を支払えないということになります。
② 司法書士による本人確認制度
これは特別に法律で認められた方法で、その登記申請を代理する資格者代理人が本人確認をしたうえで「本人に間違いありません」という趣旨の書類を法務局に提出する場合には、事前通知をせずにすぐに登記の審査が行われることになっています。登記申請は弁護士さんもできますから、ここでいう「資格者代理人」とは司法書士さんまたは弁護士さんを指しています。
ただ、資格者が「申請人本人であることに全責任を負う」という証明をするわけですから、当然責任料が発生するわけです。これは事務所によって異なりますが、3万円~10万円とかなり幅があります。当事務所では、5万円いただいております。
この制度を利用することによって、「権利証」や「登記識別情報」のない不動産取引であっても、本人である限り問題なく決済できるのです。
③ 公証人による本人確認の利用
公証人は、法務局ごとの管轄地で各地に駐在するお役人さんです。主に書類を認証することを業とします。「公正証書」というのは書類を公証人が「確かに成立した文書である」と認証したものです。
権利証を紛失した際もこの認証を利用することができます。登記申請に先立って、公証役場に出向き公証人の目の前で登記の書類(司法書士への委任状等)に署名・捺印したものに認証をもらい、確かに本人が署名・押印したものであることを保証してもらうものです。この書類を登記申請に添付することで事前通知がされることなく審査が進みます。
資格者代理人の本人確認よりもかかる費用は安いのですが、利用されている数としては多くないように思います。理由としては、平日の日中に公証役場にいかなければならないとかということも影響しているのかもしれません。
なんとかなるとは言え、なくさないようにしたいものです。
このように「権利証」や「登記識別情報」を紛失したとしても権利が消滅することはなく、またその後に手続きをする際にも方法が用意されています。ただし、所持されている場合と比較すれば負担が増えることになりますし、そもそも紛失するということは、他人に悪用される可能性がないともいえませんから、大切に保管するようにしましょう。