相続人がいない財産のゆくえ
相続人が存在しないこともある
これまで、相続についていろいろな角度からお話をしてきました。
今回は、人はかならず死を迎えることになりますが、「相続人は必ずしも存在するとはかぎらない」というお話をしたいと思います。
親が亡くなっており子供がいない一人っ子の人
例えば、被相続人の両親が死亡しており、一人っ子で、生涯独身で子供がいなかった、しかも第三者に遺贈するとする遺言も残していなかった、というケースの場合は、お亡くなりになったとしてもその方の財産を法律上引き継ぐ人は誰もいません。法定相続人は、兄弟姉妹が最後の順位ですから、兄弟姉妹もいなければ相続人はゼロということになります。
相続人が全員相続放棄したとき
このようなケースでなくとも、相続人はいたものの全員が順番に相続放棄をしたような場合などもこれにあたります。
こんなとき、財産はどうなるのでしょうか
まず「相続財産管理人」を選任
さて、このような方の財産はどこにいってしまうのでしょうか?
まずは、この行先不明の財産を管理する人を家庭裁判所で選任するところからスタートします。これは「相続財産管理人」と呼ばれ、主に弁護士さんが選任されます。
次は、官報で公告を行う
次に、官報で「相続人の方がおられたら申し出てください」という公告、「被相続人に対して債権をお持ちの債権者の方がおられたら申し出てください」という公告を行います。
官報は、国の新聞(機関紙)とイメージしていただければよいかと思います。法律、政令、条約等の公布をはじめとして、国や特殊法人等の諸報告や資料などを公表しています。一般の国民が官報を購読するということは稀ですから、この相続人捜索の公告をしても申し出る人はまずいないでしょう。
もし、相続人がいるのであれば相続の手続きになりますし、債権者が出てくれば相続財産管理人が債権債務の清算をします。
もし相続人だという人が出てきたら
さらに、債権者に清算してもなお財産が残っているのであれば、「特別縁故者への財産分与」の対象となります。これは、故人の生前に特別の縁故があった人が「私に財産を分けてください」と申し出る者です。ただし、単に友人であったというような関係では認められません。認められるのは、下記のような人です。
①生計を同じくしていた人
同居して生活していた内縁の配偶者などの生計を同じくしていた事実上の家族です。
②療養看護につとめた人
生前に献身的に介護などを行った人です。
③その他、被相続人と特別密接な関係にあった人
このような人からの申し出が対象となります。財産分与を認めるかどうか、あるいは一部のみ認めるかなどは家庭裁判所が決定します。
特別縁故者への財産分与によって、全ての財産が分与された場合はそれで終わりますし、特別縁故者への財産分与がなされなかった、あるいは財産分与がなされたがまだ余りがある、といった場合には、国の所有物となります。
ここまでして残った財産は国に帰属する
このような手続きを踏んで、結果的に行き場のなくなった財産は国に帰属するのです。
もしご自身に相続人がいないといった場合は、国の所有にするよりも、遺言を作成してお世話になった方などに遺贈されることを検討するのもよいかと思います。
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