島本理生さんの「真綿荘の住人たち」を読みました。

住人たちの事情のあれこれも興味深いものでしたが、学生の時に憧れていた?賄い付きの下宿の雰囲気を存分に味わえる作品でした。
食卓を囲む場面でのコミュニケーションは、ある意味家族的な色合いを醸し出すのですが、本物の家族と違い、シェアハウスとも違う独特の距離感が生まれますね。

長く暮らしている人はそれなりに深く、といっても表面が露出している事柄についてのみ深く理解し、暗黙のルールが形成されて行くのだと思いますが、果たして人間関係の深い結びつきに到達するかどうかは、個々の抱える事情によって結果が異なるのは、他のコミュニティと大差はない感じがします。

賄い付きの下宿にありつけなかった僕は賄い付きの居酒屋のバイトをしてましたが、やはりただ仕事だけの関係よりも、賄いの時間に生まれるコミュニケーションがある方がより近くはなれた感じ。

近くなるのも善し悪しではありますが、最も強く感じたのは、食に関するのやり取りで案外その人が自分のことをどんなふうに思ってるのか?理解するヒントが多くあることでした。

あるときは、普段仏頂面で厳しいことばかり言ってる板前さんが、食べ物の知識を教えてくれたり、僕の皿に自分のおかずをのせてくれたり・・・。
またある時は、余った酒をふるまってくれる傍ら、プライベートな話を聞かせてくれるベテラン従業員さんがいたり。

時には賄いに常連さんが乱入してきて、悪態をつきながらも休日の草野球のお誘いがあったり・・・。

いつもお腹が空いて食い意地が張っていたんですけど、食べ物に夢中になると少しだけ人間関係に無防備になるようなところもあって、余計に近くなることも。
あれやこれや、懐かしい記憶が呼び起こされた読書となりました。(^^♪

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