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長崎市野口彌太郎記念美術館(長崎市)

◼️長崎原爆資料館の隣、長崎市平和会館内にある美術館

入場料100円。
まず、これがいいですよね。
そして、いつ行ってもチケットを買う際に、受付の方が「こちらは美術館で、平和施設ではありませんが…」と、戸惑ったような表情でおっしゃるのも、奥ゆかしさを感じます。
原爆資料館と繋がった平和会館の中にあり、大型バス駐車場の手前に位置するこの美術館の前を、いつだって多くの小中高生、引率の先生、旅行会社の添乗員、ガイドさんたちが通りすぎていきます。しかし、1階にあるこの小さな美術館を訪れる人は、多くはないようです。併設施設の都合上、様々な行き違いもあったことでしょう。そもそも1993年に市内の旧長崎英国領事館内に開設されたこの美術館は、2007年の施設閉鎖に伴い、こちらに移転してきたという経緯があるそうです。そのショックも、まだ尾を引いているのかもしれません。
「大丈夫です! 野口彌太郎画伯のファンですので!」私はそう断言し、(元気を出して! と心の中でエールを送りながら)コインを差し出すのですが、受付の女性は、まだ信じられない、といった表情でチケットを渡してきます。




◼️自由な空気とリズミカルな色彩

野口彌太郎(1899- 1976)画伯の絵が好きです。
銀行重役の父のもと、何不自由なく育ち、成績優秀で、のびのびとした人気者だった少年時代。一方、東京美術学校の受験に失敗し、藤島武二の画塾にも馴染めず辞めてしまった、そんな挫折の経験も持った画家。
画伯の絵の全てが好きなわけではありませんが、特に西洋の風景を題材にした印象派的な油彩には、「自由な楽しさ」「爽やかで軽やかな色彩と感性」がリズミカルに踊っているのを感じます。ひろしま県立美術館が収蔵している『港の眺め』を見たとき、そんな空気を胸一杯に吸うことができました。何度でもその絵の前に立ち、子どもの心になって、「いいなぁ…」と、心地よい胸の疼きを味わっている自分がいました。

野口画伯は佐伯祐三の一つ年下で、ともにフォービスムの影響を強く受け、それを独自に発展させた画家ですが、私は佐伯祐三に関しては、総じてパリの絵よりも、日本にいるときの、画家がどこか欲求不満をもて余しているような絵のほうが好きです。佐伯祐三の日本の風景画には「暗い自由」を感じますが、野口画伯の多くの絵には、明るくて軽やかな自由があるのを強く感じます。そして、私は画伯のリズミカルな色彩と構図の絶妙なバランスの中にあって、抑制が効きつつも軽やかに伸びるライトパープル(薄紫)に、いつも注目します。
このときはパステル画『オランダ坂』、油彩『桜島』に、素敵なインプレッションを得ました。
           (2022年10月訪問)


◼️長崎市野口彌太郎記念美術館・情報

〒852-8117
長崎県長崎市平野町7−8 平和会館1階
電話番号:095-843-8209
入館料:100円(小中生50円)
開館時間:午前9時~午後5時(入館は、午後4時30分まで)
休館日:月曜日(祝日は開館)、年末年始
アクセス:電車…赤迫行に乗車し、原爆資料館電停にて下車。徒歩3分/バス…住吉方面のバスに乗車し、浜口町バス停にて下車。徒歩3分。

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