ひとのいえ(詩)

「おー、ひさしぶり!子供は?」
「もう寝たよ、おひさー!」
 休日の夜、何もすることが思いつかない私は彼女の旦那に連絡をとり、彼と彼女と子供の住む家にお邪魔をしたのである。
「君、休職するんだって?」
snsで見かけた情報を妻に投げかける。
「そうなんすよ、大変で、昨日もこいつ自殺未遂して」
「えっへー!そうなんだよねー」
彼女の代わりに旦那が答え、それに妻は承認を。彼女はフライパンで何か料理を作っている。私は買ってきた日本酒の蓋をあけ、これまた買ってきたスーパーの惣菜の寿司をつまむ。
「○ちゃん最近どうなんー?」
「相変わらずだよー、いいことあるようなないような」
「ふーん、いいやつなのに可哀想だね」
今日、私は死んだのである。苦労は報われ、ここからが第二の人生なのだ。そう思うならばこの空間のみが愛しく、その他多くは不毛なのである。不毛とは草木一つ生えぬことだ。そこに愚かにも木を植えることに辟易したわけである。水も太陽も十全に用意したはずである。なのにどうして、この砂漠に歌は生まれぬのか。担ぎ込まれた病人はやはり自業自得であり、その業でもってやはり苦しみにのたまうのである。餓鬼道の餓鬼は口から火を吐き、その炎によって食物は炭となり、何人たりとも彼らの空腹を満たせるものはいないのだ。
 

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