見出し画像

『君たちはどう生きるか』2人の声優について

※これは、例によってジブリ映画『君たちはどう生きるか』の内容に触れるものなので、鑑賞済でない方はぜひ回れ右して観てからいらっしゃることを推奨します。

私は一度しか観ていない『君たちはどう生きるか』について、あれこれ考えてはちまちま書き重ねています。これは実は第4弾になります。同じコンテンツでこうもこねこね書けるとは…今までにないことで自分自身もびっくりしています。

今回は、映画に出演された2人の声優さんについて『すごい』『素敵』と感じたので、彼らに絞って書いていきたいと思います。どなたかと言いますと、主人公の父親で出られた木村拓哉さんと、主人公役で出られた山時聡真さんです。

cv. 木村拓哉さん

木村拓哉さんと宮崎駿監督といえば、『ハウルの動く城』でしょう。木村さんがハウル役をやられたことがありましたね。

ハウル役での木村拓哉さん

心臓をあげたくらいの年で精神の年齢も止まっている、外見は青年のようでいて中身はまだ子どもなハウル。
ソフィーの掃除のせいで髪染めが失敗し、お風呂場から叫びながら出てくるシーンは印象的です。

「〜って言ったじゃないかぁ!」

詳しい台詞は失念していますが、もう勢いがかんしゃくを起こした子どもです。
当時も、私は若輩者ながら『キムタクがこういう役をするのは珍しいなー』と思っていました。

甘ったれな未熟さを出した演技をされていたと思います。

牧 勝一役での木村拓哉さん

そして時を経て、宮崎駿監督と木村拓哉さんは『君たちはどう生きるか』で2度目のタッグを組みました。
映画を観た時、声を聞いて初めにちゃんと分かったのは木村拓哉さんでした。すぐわかりましたよb

主人公の父親役なんですが、勝一さんは濃い〜パパだなと私は思いました。

①妻が亡くなった後、似ているとはいえ妻の妹と仲良くなってしまう

再婚相手が妻の妹さんなら、いっそ全然関係ない女性の方がまだよくないですか?
似ているけれど知ってるママではないって…切ないです。
顔がよく似ているけれど、母とは違うところがなお際立って『あ、母はもう死んでしまったんだった』と思い知ってしまいますよね。

②主人公の転校初日に車で学校に乗りつける

しかも、みんなの見ている前で車から降りる場所って…すごく余計なお世話じゃないですか?絶対いい目で見られないですよ。何してくれるんだって鑑賞中にツッコミたくなりましたからね(笑) 余計反感買うわっ。
眞人も今後また転校なんてことがあったら父に断固反対してね。わかったでしょ。

具合が悪く寝込んでいる主人公に一言「早くよくなれよ」(台詞は朧げな記憶)

そっけないわ。
勝一は人の気持ちに寄り添うタイプの人間でもなさそうです。それよりも利害に大きく反応するタイプみたいです。
まぁ、この時代の父親は看病する立場にないですし、勝一の気持ちは『俺の息子に怪我をさせた奴め〜許せん!』の闘争モードなことを考えると、逆にまぁ去り際に思いやる台詞がよく出たなと思ったりします。

また、この台詞は後に眞人もつわりで苦しむナツコさん向けて言い放つんです。

「早くよくなってください」

(煙草の箱をくすねながら)スタスタスタ。
似たもの親子ですなぁ…。

しかし、眞人は異世界での冒険を経て、父は妻と息子を本人なりに必死に捜索をすることで二人とも吹っ切れていきます。なお、眞人の吹っ切れ方に関しては私の記事第1弾で触れていると思うので、よかったらぜひ↓


④「眞人がセキセイインコになってしまったぁ!」
(これは面白くてよく覚えています)

私が「おぉっ?!」となったのはここです。
この台詞の言い方、とっても情けなくて抜けていて、初めの勝一のイメージとは真逆でとっても面白かったんです。

木村拓哉さんがテレビでは絶対に演じられないようなキャラクターを、ジブリで演じている!きゃー!
すごくいい!!

ハウルの時とはまた違って、年齢相応の父親役、主ではなく脇を固めるポジション、大人なりの情けない大声。
木村拓哉さんの新境地がここに…!と感動しました。幅広いなぁ…もっと声優としての木村拓哉さんを見てみたいと思いました。

cv. 山時聡真さん

『最高の教師』での山時聡真さん

主役の山時さんについて触れていこうとすると、今の私には触れざるを得ないドラマがあります。少し寄り道しますね。

今年の7月から日テレの土曜21時から放送されているドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』に、高3の瓜生陽介(うりゅう ようすけ)役として山時聡真さんが出演されています。

このドラマ、私は観ることにして正解だと思いました。クラスの問題に教師が立ち向かうありがちな学園ドラマかと思いきや、そうじゃないところが面白いんです。
たとえば、いじめの標的にされた子たちがいじめっ子たちに『自分たちに構うのはやめてくれ』という旨を土下座までして懇願するシーンがあるのですが、

「ちゃんと無視してほしいんだ。お願いします」
(これに至るまでに『種族の違う人間なんだから馴れ合う必要はない、何で君たちのために僕らがやりたいことを我慢しなければならないんだ』などと、こちらがごもっとも、と納得できる言い分を述べていました)

という言い方をするんです。
いじめっ子たちは拍子抜けですよね。ターゲットたちの言い分がわからないおバカさんたちではなく、『あいつら何なんだ』と後味の悪い気持ちでいじめっ子たちは手を引きました。

あともうひとつ、山時聡真さんが演じる瓜生陽介にスポットライトの当たる話がありました。

瓜生くんは進学校に通う高校生でありながら、アルバイトをいくつも掛け持ちして、家計を助けようとシングルマザーの母親に自分の稼ぎを渡していました。
ところが、母親は昔からそのお金を付き合っている男に費やし、化粧品や自分の靴や服を購入していました。
瓜生くんには小学生の弟が2人います。とても兄弟仲はいいです。その子たちは、母親には満足に食事を与えられず、瓜生くんのバイトのまかないでお腹を満たすことができていました。

瓜生くんの家にはお金が足りない。のに、瓜生くんのアルバイト代はほとんど家計ではないところに消えていく。それでも瓜生くんは『弟たちを食わせていかないと』と家計の助けになるよう、がんばり続けていました。母親が変わると信じて。
しかし、彼はこのままだと学費が足りず、母親に転校させられてしまう未来しかありません。担任の九条先生(松岡茉優さん)はその未来を阻止するために、瓜生くんちの問題に首を突っ込んでいきます。

母親が謝罪の言葉を息子に述べた後、家に押しかけていた九条先生が瓜生くんに

「何か言うことはないですか?」

と声をかけます。そうした時に、瓜生くんから出てきた台詞が、今までのドラマにはない感じだったのでびっくりしました。

『俺いつから働いてると思う?14だよ!
母ちゃんのため弟たちのために毎日毎日働いて。金を稼いできても、母ちゃんはその金全部知らない男に貢いで。許せねぇよ!そんな薄っぺらい言葉で許すわけねぇだろ!』

というニュアンスのことを母親に言い返すのですが、うーーーん…。私の記憶じゃ山時さんのすごい演技や台詞が全然再現できないのが悔しいです…。

とにかく、「ごめんねぇ…」ととりあえずその場では申し訳なさそうに謝る母親に対して、瓜生くんは『許さない』という意思表明をするんです。
もっと長い台詞を、母親への容赦のない本音を体当たりでぶつけていたシーンで、ここ、山時聡真さんを知らない人にぜひ観てほしいなぁ。

ふとどこかで知ったのですが、山時さんはこのドラマのクラスで一番年下だそうです(現在18)。
それなのに、すごく、自然で説得力のある演技をして引き込む力のある人だなぁと思いました。

また、Tverではこのドラマのスピンオフ『3年後の僕たちは』というショートムービーがあります。ドラマの世界の3年後という設定で、各話に登場人物が2人ずつ出て、現在の境遇と、過去九条先生のクラスで経験したことを語ります。

瓜生役の山時さんとその相方的ポジションの向坂俊二役・浅野竣哉さんの回がまたいいんです。きっちり3年分の時間が経ったかのような演技がとても自然で、鳥肌が立ちました

他の回の方では、九条先生のクラスであったことを述べる時に、ついこないだのように気持ちを表に出して演技する人が見受けられました。一方で、この二人は3年前を思い出す時のように、どんな激情でさえ過去のことで、当時の感情が薄れて、今の考えで喋っている感じがあったんです。それが、時が経っているふうで私はいいなぁと思ったんですよね。

つまり、私見では山時さんはジブリの主役を演じるにあたって、申し分のない実力の持ち主だということです。

キャストの発表はされないまま映画が公開されたので、鑑賞する時には山時さんが出られているとは全く知らないでドラマを観ていました。『この子いい演技するなぁ〜誰だろ〜?』と記憶に残っている俳優さんのひとりではありました。

キャストの発表をニュースで知り、山時さんの宣材写真を見て『あれ?この子最近見たことあるぞ!』と映画と繋がったわけです。

牧 眞人役での山時聡真さん

眞人が異世界に入る前の台詞は本当に数えるほどだったかと思います。台詞というより、息遣いみたいな表現が多かったのではないでしょうか。

たとえば、家事の現場までひた走る場面。
たとえば、水を飲み干す場面。
たとえば、アオサギに対峙するために武器の準備をしている場面。
たとえば、父と新しい母の見ちゃいけないところから身を引く場面。
たとえば、自分の頭に石を打ちつける場面。

当然ですけど、独り言が癖ではない人間なら、誰かといない時には何にも喋りませんよね。
勝一と眞人もその辺が現実の人間と振る舞いが共通していたので、いわゆる"アニメキャラ"ではない描かれ方でした。アオサギやセキセイインコなどの生き物の方が"アニメキャラ"だったので、それらと対比になって非常によかったと思います。

声を演じる、ついては、息遣いで登場人物に命を吹き込む。ジブリではそういったお仕事をされたのだなと思いました。
まだ18歳と若いですし、これからの活躍が本当に楽しみに感じる俳優さんでした!

まとめ

映画内には2人に限らず素敵なキャストさんがいっぱいおりました。

ヒミ役のあいみょんさんも、私は歌とか彼女のことをよく知らないけれど、声がとても綺麗で好きになりました、とってもよかったです!
また、菅田将暉さんが出てると知りながら観ても、エンドロールが流れてきてから推察するしかないくらいどこにいらっしゃるかわからなかったのも面白かったです。
ちなみに推察してもさっぱりわからなかったのが滝沢カレンさんです(笑) ワラワラだったのですね。

『君たちはどう生きるか』、今回の記事では物語を固める2人の声優さんについて語っていきました。

8月半ばに映画を観てから、気持ちや考えをまとめたいと思い今までnoteに書いてきましたが、これでやっと私が『君たちはどう生きるか』について書きたいことは全て書けました。

フー!余は満足じゃ!
終わりまで書けたことがひたすらに嬉しいです。
これでやっと、思う存分ほかのクリエイターの方の『君たちはどう生きるか』の記事を見て回れるというものです。

サポートがいただけるのはとても有り難いです。noteによりよい記事がアップできるようがんばります!