私たちは【親切な世界で】どう生きるか

私はびっくりしました。公開日の週に入った朝のニュースで初めて、ジブリ映画『君たちはどう生きるか』が公開されることを知ったのです。ジブリだから&宮崎駿監督だからこそできた手法ですよね。私はアニメーションも映画鑑賞も好きですし、その上、ジブリが宣伝を全くしない方法で公開に踏み切ったことに非常に興味を持ちました。

鑑賞できましたので、今回のこの記事では私なりの大まかな感想を記していきたいと思います。また、作品を観て気になったテーマがいくつかあるので、今後出していく記事で思ったことを述べたいと思います。ですので、こちらは感想第1弾、というわけです。

物語に関わっているであろう2冊の本について

ちなみに、私は現時点で吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』は未読ですし、ジョン・コナリーさんの『失われたものたちの本』の内容もわかっていません。

『失われたものたちの本』は、小説の『君たちはどう生きるか』をAmazonで探したところ、一緒に買われている本としておすすめとして出てきました。調べると『ぼくをしあわせにしてくれた本』と宮崎駿監督がおすすめしている帯付きの本の画像が載っていました。

2冊とも買いました。作中で同名小説を読んでいた眞人の泣いていた理由が知りたかったですし、この映画の原点ぽい作品も読んでみたくなったからです。
この記事をアップする頃に本が届くので、読んだら後日感想を上げたいと思います。

知り得た事前情報との照合

公開されてからも、公式はあらすじも予告映像も一切出しませんでした。私もネタバレの情報を避けてきました。しかしX(旧Twitter)をやっていると嫌でも目に触れてしまいます。私がこの『君たちはどう生きるか』について映画を観る前に知ってしまった情報としては、

①カヘッと鳴く鳥がいること
②難しい、1回観ただけではわからないという感想
③声優さんに木村拓哉さんや菅田将暉さんがいて豪華なこと
④米津玄師さんがテーマ曲を手がけたこと

です。
観た結果、②以外のことは率直に言って、

①カヘッ鳥はいすごに…?アオサギの鳴き声のデフォルメでしょうか?カヘッはジブリ公式Xが言っていましたよね?
③木村拓哉さんや柴咲コウさんはすぐにわかりました!が、最後まで菅田将暉さんがどこにいるのかわからなくて、エンディングロールの順番で察しました
④重厚的な音が鑑賞後の身に心地よく、歌詞も素敵な曲でした。もし米津さんが関わっていることを知らないままエンディングが流れたら、ジブリと米津さんのコラボを知ってすごく感動できたと思います。左上の方で『ギキィ…キィ…』と地球儀の音が鳴っていました

という感想でした。
さて、以降のこの記事では、後回しにした②に対しての私の感想・考えをつらつらと述べたいと思います。

どういう物語か

舞台は戦争中の日本。主人公の少年・牧眞人は、入院していた母を火事で失いました。そう長い時が経たずして、眞人は工場を経営する父親とともに、再婚相手のナツコが住む田舎に疎開します。眞人が、ナツコの屋敷で不思議なアオサギを見かけるところから物語が動いていきます。

私は事前の周りの感想を知っていたので『難解な物語なのかな?』とすごく身構えていました。しかし、何のことはなく、どういう話かざっくり言うと『少年たちの成長物語』なのではないかと思いました。ジブリの過去作でいうと『千と千尋の神隠し』の、
現実→異世界で冒険→成長して現実へと戻る
という構造と似ているなと思いました。

母を失って、父は新しい妻として母の妹であるナツコを迎え入れ、彼女のお腹には新しい生命がすでに宿っている。また、疎開先では車での登場(父、見栄っ張りが過ぎる)や髪の長さなどで都会のモンとのけ者にされて帰宅する。眞人には、どこにも自分の居場所がないように感じたのではないでしょうか。
その構図は、現代を舞台にした『千と千尋の神隠し』で、(おそらく)親の都合で引越すことになって、ぼんやりと車窓から外の景色を見ていた千尋の姿と重なるところがあるなぁと思いました。
それでいうと眞人の方が、時代背景・境遇・落とされた先の世界など、過酷さは勝りましたね。

眞人は過酷な冒険を経て、美しいだけではない世界を認め、以前よりも強くしなやかになった、私はそういうふうに捉えました。とても面白かったです。

どう見るかは"君たち"次第

昨今、ほとんどのコンテンツに対して、そのジャンルやあらすじ、キーワード、キャストなどは載せているのが通常です。YouTubeなどではサムネ?で親切にも一目でどんな動画なのかが表されていますよね。コンテンツを作った側が多くの人に見て(読んで)もらえるよう、内容のテーマや注目ポイントを提示しているということです。
つまりそれは、人気が出るように編集・演出されたあらすじやサムネは、『こういうふうに観て(読んで)くださいね』と人に見方を提供していることと同じだと思うのです。

ではなぜ、今作品の公開にあたってジブリがそうしなかったのか。私は、監督たちが『観てどう感じ・どう考えるのは君たち次第』と、見方や感想を私たちに全部委ねてくださったからかもしれないと思うのです。もし本当にそうであれば、信じてくださってありがとうございますという感謝を伝えたいです。

あらすじのない物語

私が学生の時、図書館や本屋さんで本を選ぶ時はタイトルと本の表紙を見て決めていました。文庫版の小説であれば裏にあらすじが書いてあるので、それも読む本を選ぶにあたって大きな決め手でした。
『君たちはどう生きるか』を観る時、まるで『内容の知らない単行本を、表紙とタイトルで読もうとする』体験ととても似ているなと思いました。

全く知らない本に手を出すことは一種の冒険です。知らない場所を冒険する時よく周りを見、考えて行動するとの同じように、新しい本を読む時は『どんな展開になるのだろう』と考えながら集中して読んだものでした。ですから、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』も、何が描かれているのかは、受け手が自由に感じていいんだと思いました。

もし、あのパンフレットに『古い館には大いなる秘密があった!』とか『戦争下、母を亡くした少年は疎開先で「母君は生きている」と不気味なアオサギに誘われ、不思議な世界を冒険するーー』とか内容が紹介されていたら、きっと私はここまで集中して鑑賞していませんでしたし、考えを巡らせることもなかったでしょう。

先入観からの解放


内容を知らない、だからこそ、些細な展開にも私は驚いたりワクワクしたりできていました。そもそも私は他の映画にしても、極力、映画を観る前は制作とは関係のない人が付けたラベリングの文句などは頭に入れたくないんです。なので、今回こういう映画体験ができて私はとても嬉しかったです。

『どういう映画なのかわからない』『難しい』といった感想は、きっと『どう観るべきか』や『作品のメッセージ性』を難しく考えてしまった人から出たものなのではないかなと思いました。
『べき』なんてないんです。また、このお話にはサムネのようなわかりやすい案内はないので、本当に自分がどう捉えるかなのだと思います。

誰かが、算数と比較して国語の答えはひとつだとは限らないと言っていました。作者の書いた大意はあるけど、読む人が異なれば解釈や受け取り方は人の数だけきっとあるのでしょう。大丈夫です、物語の懐の深さを信じましょう

さて。ここまでいち受け手の感想を読んでいただきましたが、あなた自身はこの作品についてどう思いましたか?

この記事が参加している募集

#映画感想文

66,387件

サポートがいただけるのはとても有り難いです。noteによりよい記事がアップできるようがんばります!