富士そば

 懲りもせず古着をディグりに柏のセカンドストリートへ行ってしまった。そこで「HIGH TIMES 1997 SPRING HEMP TOUR Tシャツ」をゲットした。紫のボディに額のチャクラがひらき、大麻でトリップしている人物がサイケなパンチのきいたヤツ。そして気づく。朝から何も食べていないことに。
 そんな時、無難な選択しとして視界に入ってきたのが「富士そば」である。美味過ぎず、マズ過ぎず、普通の美味さを誇る蕎麦屋チェーン。地元の富士そばが潰れて以来の入店。腹減りだった私は、かけそばとカレーライスを大盛で注文する。しばし待つ。番号を呼ばれ、落とさぬよう席まで運ぶ。
 かけそばに唐辛子をかけるのは蒙古タンメン中本の影響ではなく、前からで、まずはカレーライスをいただく。何の変哲もなくコンビニと大差ないクオリティが親しみの湧くその味を噛みしめながら、そばをススる。こちらも何の変哲もないかけそばが喉を通りすぎ、わかめの食感が楽しい。
 瞬く間に平らげて、退店。退散。腹は満たされた。
「これでいいんだよ」なチェーン店は必要である。わざわざ調べてその為にいかずとも、どこにでもある安心感とふつうの味。もはやインフラであり、人生のハイライトの隅に見切れている「富士そば」が好き。
 いや、好きというほど特別な感情はない。言い過ぎた。しかし、必要不可欠なその存在感の塩梅が心地いい。丁度いい。
「たたくより、たたえあおう」の精神でこれからも富士そばと共に、人生を歩んでいこうと思った、ある日曜日、汗ばむ休日だった。


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