秋刀魚を喰わずして、

 空白が脳内を支配し、書き出しで「風が涼しさより、寒さを」とか「じっとりとした土が」とか。何か、晩秋を感じさせようとした、自分にドロップキックしました。破竹の勢いで筆が走ることを望んだとして、それは叶わぬ夢想。やる気が消沈しつつ、タイトルについて触れておこう。
「秋刀魚を喰わずして、」
 今年も秋刀魚を食べていない。それだけのこと。そんな、浅薄な趣旨で紡ぐ言葉に価値などあるのか。「生ゴミが残って面倒だから食べない」喰わぬ理由など、ただそれだけのこと。
 ならなぜ、それをネタとして選んだのか。ふと「食べてないなぁ」と一瞬、思いに耽ってしまったからで、「無理して食べるほどではない」と自分をたしなめた。そのうち、秋刀魚のことなんて忘れてしまう。 
 それにしても、筆が滑らない。よし。何か別の要素を足してみよう。出来るだけ関連がないワードが吉兆。よし。

「苔」
 うわ。本当に関連してない。仕方ない、浮かんだ言葉がこれなんだから、諦めて、何とかしよう。いや、ちょっと待て。駄目だ、これは駄文だ。しかし、止まらない。止めどない。
 薄暗い森。そっと、緑の濃い、雫を纏った苔に秋刀魚を置いてみるか。
「食べ物を粗末にするな!」
 そんな声が聞こえてきそうなので、別の言葉をだしてみましょう。

「ニトリ」
 なんか、秋刀魚と言って、本当は秋刀魚でなさそうだ。代用魚を使ってる気がする。なんか、ニトリに信用がないから、そんな事を書いてしまったが他意はありません。しっくりこない。もう少し頑張ろう。

「勇者」
 初期装備が、秋刀魚。持った瞬間にしなるよね。首を垂れるね。敵を無理矢理殴っても、ほぼダメージはない上、もげるよね。いたたまれず、時すでに遅しと思いながらも焼いてみる。敵モンスターも、やる気を無くして去っていくかもしれない。

「生クリーム」
 ついでに、季節のフルーツもばら撒いて、粉砂糖でもふりまいて、メープルシロップでも垂らしますか。外は焼き目がカリっと、中はふんわり。そのパンケーキから、ひょっこり秋刀魚が顔を出して、こちらを見ている。加えて、何段にも重ねてみよう。それぞれ違う向きに秋刀魚が顔をだして、もはや現代アートの趣きがある。口にしたくはないが。

「アイドル」
 秋刀魚を振り回し歌いながら、歓声を上げるファンたちに水槽から投げつける。当然、狭いライブハウスは魚臭くなる。床に落ちた秋刀魚はファンによって踏まれ、無残なことになる。ライブも盛り上がってきて、アイドルも悪ノリをして生で頭から貪って、ファンの一人のデブ眼鏡の顔に吹きかける。これを、「秋刀魚ぶっかけ」と呼び、された方はライブ終了後にステッカーをプレゼント。物販も、氷水に漬けられた秋刀魚、焼き秋刀魚、秋刀魚のぬいぐるみにキーホルダー、手ぬぐいなどエトセトラ。ライブ終了後、魚臭い連中が社会問題になり、解散だろうな。

 今日はなんだかグダグダすぎて、吐きそう。最悪。凡愚。犬も喰わない。
「秋刀魚を喰わずして、」
 こんなことになりました。今度、秋刀魚でも食べてみます。そうしたら、こんな文章を書かずに済みそうなので。食べていたら、こうはならなかった。恥ずかしい。穴があったら入れたい。
「もういいよ! 蛇足だよ! もう穴に入って出てきちゃ駄目だよ!」

「はぁ、、、」自然とため息が出ました。

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