光山キム

あさ目覚めた時から言葉が頭を埋め尽くす。 え、なに? ふむふむ、そうか。うわっ、もぉー…

光山キム

あさ目覚めた時から言葉が頭を埋め尽くす。 え、なに? ふむふむ、そうか。うわっ、もぉーっ! じわ~ん。 はっとして、ぐっときた話。なんなのさーっと、いらっときた話。 それでもみな生きている。死ぬまで生きるのだ。ということをあれこれ綴ります。

最近の記事

人種差別主義者リーダーが跋扈する世界

「人種差別の扇動を行う候補者に多くの米国人が投票しました。」 これは、今回の米国大統領選の結果を経ての言葉ではない。 8年前、トランプ大統領誕生について危機感を抱いた、差別に抗う弁護士である兄が書いた文章の冒頭の一文である。 以下にそのときの文章を載せる。 理由は、書かれている内容がいまも古びれず、しかと受け止めたいし、広く共有したいからだ。そして、8年前とは異なり、多くの人がこの事実を忘却しているかのように映るからだ。今回の選挙報道の際、全くといって言いほどこうした視点

    • 生きづらさを抱える東西の若者

       生きづらいという言葉を耳にすることが増えたのはいつごろからだろう。   古今東西、それは普遍的な人間の心情ではあろうけれど、これほどまでに社会全体を覆い停滞している時期はないように思う。  あるデータによると、世界人類史のなかで、富の格差が縮まったのが1970年代前半のことだったとか。エジプトのピラミッドを例に出すまでもなく、王様がいて奴隷がいるという確固たる格差が前提の社会が長く続いたあと、人類は「人権」・ヒューマンライツという概念を手に入れた。そしてそれを「平等」とい

      • 9.11前のニューヨーク・その2

        その1からつづきます。1996年1月のニューヨークでの出来事より。 摩天楼の街 「俺がいま40代だったら家族を置いて半年ぐらい住みたい街だな」と父は言う。言葉の壁はあっても自分の芸を受け入れてくれるであろう懐の大きさを直感したに違いない。 何度か通ったロケ現場のアスタープレイス。中心にある信号機のポールは、それ自体がさながら前衛アートだ。さすがニューヨーク洒落ているよなと思っていると、「彼が勝手に作ったのよ」とスタッフの一人が通りすがりの男性を指して言った。いつも同じ時

        • 【詩《うた》う】どうせ教からの脱出

          どうせ誰に入れたって同じ どうせどの党に入れたって同じ どうせ私の一票じゃ変わらない どうせお祭り騒ぎ どうせ昨日まで頭さげてた人間が どうせ明日からまたふんぞり返る どうせどうせのどうせ教 ええーい どうせっつうねん どうせ教を唱えてみても 永遠に救われることはない どうせ誰に入れても どうせどの党に入れても 同じだよ と嘯《うそぶ》くなかれ 同じにならない選択肢を放棄して どうせ教を広めないでおくれ どうせどうせと言わずにいた 一歩踏み出し 変化した あのとき あ

        人種差別主義者リーダーが跋扈する世界

          9.11前のニューヨーク・その1

           どういう文脈で使っていたかは思い出せないが、「老人懐古趣味」という言葉を、授業中だったかホームルームでだったか、中学1年の担任(社会科教師)はよく口にしていた。当時はえらくおじーさんに見えたけれど、実年齢はいまの私とそう変わらないだろう。  近頃、10年ひと昔どころか、20年、30年も前のことを、ついこの間、と認識する自分自身がいて驚く。その驚きは、あーとうとう私も昔の話を「よきこと」として語る側にまわってしまったのかという嘆きともいえるし、あーもっと先進の「現代への批判」

          9.11前のニューヨーク・その1

          【映像シナリオ・1シークエンス】追いかけっこ

          ①タイ料理レストラン・中(夜) 20代の女性客で賑わっている。 中央の円卓に座る山崎雅美(25)、丹羽志保(25)、芦沢綾香(24)が歓談しているところへ、篠原由夏(24)が現れる。 由夏「ごめん、ごめん、レッスン長引いちゃって」 志保「この間のライブ行きたかったんだけど」 由夏「いいよ、結婚式の衣裳合わせなんて、私こそ付き合ってみたかったよ」     席に着く由夏に綾香がグラスを渡す。 雅美「じゃ皆揃ったことだし、今年一年のお疲れ様と幸多き来年を願って、乾杯!」 由夏

          【映像シナリオ・1シークエンス】追いかけっこ

          映画『私は憎まない』

          人が殺されることに喝采するとはいかなることか。 ハマースの最高指導者がイスラエル軍によって殺害された。 米国の副大統領 はこう言った。「正義が果たされ、アメリカ、イスラエル、そして、世界はより良くなった」 13年前、アルカイダの指導者を米軍が殺害した。 当時の米国大統領はこう言った。「数千人の罪のない男女、子どもを殺した責任者だ。彼の死は最大の成果だ」 6年前、オウム真理教の死刑囚が全員死刑を執行された。 ラジオニュースから流れて来たその報を聞き、ひとのよいおばあさんがこう

          映画『私は憎まない』

          【講演録】ガザ人道危機から1年

          以前から僅少ながら支援をしているNPO団体のオンラインセミナーを受講しました。講義録として拙筆ではありますが、以下に記します。 「ガザ人道危機1年、何が変わり、何が変わっていないのか」 パレスチナ子どものキャンペーン主催オンラインセミナー 2024年10月12日 パネラー:手島正之(パレスチナ子どものキャンペーン)      鈴木啓之(東京 大学特任准教授)      荻上チキ(評論家、ラジオパーソナリティ) 【世界のどの紛争よりもひどい状況。生存可能な限界を超えている

          【講演録】ガザ人道危機から1年

          脱落者からひとこと

          過去5年間で小学生の不登校が3倍に増えたそうです。 あー、やっぱり。 そりゃ、そうだ、そうなるだろう。 そうならなくちゃおかしい。 毎朝、校門に立ち、「おはようございます」と声をかけながら、私は心の中で彼らに手を合わせていた。「今日もよく来てくれたね、ありがとう」と。 おそらく世間の人たちは知らない。 実態を知らない。 私がそうであったように。 たいがいの大人は自分の思い出のなかの「昔」の学校を、 子を持つ人なら保護者として関わる今の学校を「外側」から 知るのみだ。

          脱落者からひとこと

          【手紙文】バクシーシ放浪記 ネパール

           30年前にネパールから東京の両親へ宛てた手紙は、2年4ヶ月に渡るバックパッカー旅行の最終章、帰国のひと月半前に書いたもの。多少の加筆訂正を加えたその手紙とそれを書いたあとのエッセイは、バクシーシ放浪記の一部である。 ~お父さん、お母さん、お元気ですか?  便りのないのは元気な証拠と思っていてくれているでしょうか。筆マメな私がヨーロッパを出てからこれが初めての便りになるわけですが。  昨日、ネパールはヒマラヤでの8泊9日 に及ぶトレッキングをやり終えて山を降り、ここポカラに

          【手紙文】バクシーシ放浪記 ネパール

          知ったかぶりの論理「推定無罪」

          部屋の整理中、亡き父の手書き原稿が目にとまった。 いま書かれたものかと思うぐらいにタイムリーな内容だった。 どこかに頼まれてすでに世に出たものではなさそうなので、 ここにアップしてもよいだろう。 冤罪事件に関する大切なこの指摘は、内容からして(文章中にある映画公開年から判断)1991年に書かれたものと思われる。三十数年経過しても変わらない司法の在り方に愕然とするが、だからこそ、さらに三十数年後「相も変わらず」と娘にため息をつかれることのないように、父の考えをバトンタッチして

          知ったかぶりの論理「推定無罪」

          【映画感想文】『本日公休』と『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

          映画に音は欠かせない。 映画館で観る醍醐味もそこにある。 ましてや昨今の映画館の音響設備、技術には恐れ入る。 臨場感があふれ出る。 台湾映画『本日公休』を観た。 鋏《はさみ》のシャカシャカと鳴るリズミカルな音 髪を切る 厚みのあるジョグジョグ 先の方でシャシャ 白髪染めクリームを泡立てるソックソック 頬にあてた剃刀《かみそり》で髭をそり落とすジョリジョリ サッサッサッとタオルで襟足についた髪の毛を払う 町の人から長年にわたり愛されている理髪店主の誠実な仕事ぶりを表すに

          【映画感想文】『本日公休』と『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

          イリーガルがリーガルなクニの歪んだ正義感

          聡明な高校生に出会った。 自分がその年齢だった頃を思いだすと赤面したくなる。 日本語を母語としない彼女と、日本に暮らし日本語を母語とする大人とだってなかなか伝わりにくい話を熱く語っている私がいた。 日本の常識=世界の非常識ということに多くの「日本人」は耳を塞ぎたがる。日本では「普通」に見える光景も外から見ると「異常」に思われるということにもっと敏感になってもよかろう。そのことから内なる差別に向き合うことができるのだから。 イタリアから交換留学生としてやってきて半年学んだ

          イリーガルがリーガルなクニの歪んだ正義感

          【短編小説(未完)】じいちゃんとりょうやの物語

           りょうちゃん、おたんじょうびおめでとう。なんさいになったのかな。4さい? 5さい? それとも、もうじがよめるぐらいおおきくなっているのかな。  昨日はさっちゃんの29回目の誕生日を祝ってくれてありがとう。ハッピーバースデーの歌を一生懸命うたってくれたりょうちゃんにさっちゃんからのお返しです。  今りょうちゃんは3歳だから、一番近い12月の誕生日で4歳になるよね。でもできることなら、もっとあとの誕生日に渡すことになればいいなーと思っています。なぜって、りょうちゃんのじいち

          【短編小説(未完)】じいちゃんとりょうやの物語

          切手の値上げ 

           がーーーん。  漫画の吹き出しの文字が音声を伴って私の口から出た。  「2024年10月1日(火)から郵便料金が変わります。」 だとー、な、なぬーっ。しかも上がり方が半端ない。消費税増税に伴う値上がりを除けば、1994年手紙(定形郵便物25g以下)が62円から80円、通常ハガキが2017年52円から62円に上がったのを据え置いて維持してきた。今回はそれぞれ、84円が110円、63円が85円に、30%も一気にあがる。  昨今の物価上昇に世間はひーひー言っている。もちろん

          切手の値上げ 

          【映像シナリオ・1シークエンス】ママの卒業式

          ①横浜港・全景 霙《みぞれ》が降る中、大型船が行き交っている。   ②横浜光洋館・パーティースペース 大正時代の洋館を改築した建物の居間。光洋館スタッフにテーブルに置く花々を指示している黒留袖姿の佐伯陽子(56)、忙しそうに動き回っている。陽子、ガラス戸に近付き、足を止め外を見る。ハウスウェディング横浜光洋館の看板がある庭園に霙《みぞれ》が降っている。 陽子「一生に一度の晴れ舞台なのに、こんな時期に式を挙げるなんて。だから言ったこっちゃないのよ」   ③佐伯家・LDK 掃除

          【映像シナリオ・1シークエンス】ママの卒業式