ひとつだけの澄み切った青空があるだけなんだ
飛行機が飛んだ。
窓の外はしばらく真っ白の雲しか見えなかった。
人生3回目の飛行機に乗った次男に聞いてみた。
「雲の上には、何があると思う?」
次男は少し困ったように言った。
「うーん、わかんないな…。何があるの?」
私は意味深ににっこりして言った。
「青空。雲の上には必ず、雲ひとつない青空が広がっているんだよ」
次男は、ふぅーんという感じで聞いていた。
私がなぜ意味深に言ったのかは、まだ次男には話さないことにした。
数年前に読んだ本の中に、このお話はあった。
人生に悩み苦しみ、その苦しみから逃れたくてお坊さんを訪ねた筆者の方は、お坊さんからこのお話を聞いた。
「あなたは今日、どうやってここまできましたか?」
そこは外国のどこかだったので、「飛行機で来ました」と答えた。
すると、
「飛行機から雲は見えましたか?」
とお坊さん。ハイと答える筆者。
「雲は、人の苦しみ、悩みを表しています。厚い雲に覆われてしまったら、地上もよく見えない。でも、本当はね……雲の上には、青空が広がっているんです。青空は苦しみも悩みもない世界。本当はひとつだけの澄み切った青空があるだけなんです」
数年前に読んだ本だから、表現はこの通りではない。けど、私はこの本のこの部分を読んだ時、心がスーッと澄み切った気がした。
色んな悩みで雲が厚くなって苦しくなっても、そこから少し上に上がってみたら、そこには青空があるんだ。
そしてそこは、誰とでも繋がっていける。
そんな世界のような気がした。
青空を心に広げていたい。
いつも、いつも。
数年前にそう思ったことを
今日飛行機の中で思い出した。
息子がいつか何かに悩んだとき、この話をまたできたらいいなぁと思う。
そして、数年ぶりに思い出した私の心の中にも
もう一度青空を広げてみよう。
旅はまだ始まったばかり。