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【詩】途中式

山積みの教科書を読んで
答えを頭に叩き込んだ。

忘れるたびに
また同じページを読んだ。

分からなければ
更に分厚い参考書を買い足した。

誰に尋ねても
数式の解き方は変わらなかった。


でも 今は違う。


山積みの本は
全て意見が違った。

直面するたびに
取り入れる意見が変わった。

分からなければ
一晩中悩み続けた。

誰に尋ねても
納得した回答は得られなかった。


私は 完璧な「答え」を失った。
全員が頷き、全員が納得する答えは
もう幾ら探しても見つからなくなった。

だからこの先は
何千何万行に渡る途中式を描くことにした。

例えばそれが
一行前と殆ど変わらなくても
答えとは程遠いものだとしても
そしてそれが 走り書きだとしても。

優しさとは、強さとは。
自分とは、他人とは。

全ての疑問が
たった100年で解き終わるなんて
そんなこと期待してない

けれど
私が途中式を描けなくなったら
隣で一緒に描いてくれる人が居たらと思う

私が途中式を間違ったら
隣で慰めてくれる人が居たらと思う


「人生とは、幸せとは。」
私はこの疑問に100年の時をかけよう

私はこれから
「誰」と「どんな」途中式を描こうか。

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