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【詩】還らぬ夏

あの日と同じ太陽の熱が
草に、木に、地面に、海に、照りつける

ただ虚しく「敗れた」のだと伝える
砂嵐の混じる玉音放送の声
78年前の夏。

ああ、戦争は終わったのだと崩れ落ちる大人を
ただ不思議に見つめる未だ幼き子
幾度となく繕ったもんぺ服の袖に
顔をうずめる母に
子は理由も分からず首をかしげる
還らぬ夫は白黒写真の中のまま
母は子を静かに抱きしめ声をあげて泣いた

「敵」なぞ 本当は居なかったのに
それに誰も 気づかずに 
やれ「勝った」だの「負けた」だのと言い合った

その先に幾千もの命が在ったことを
78年後の未来で考え続け 
その重い重い歴史を背負い生きていく

翼の燃え プロペラの止まった
海に沈みゆく零戦を
私より若い少年達が見ていたなんて

空襲で 炎の滾る家々を背に
ただ逃げまわり 生きる事の辛さを
感じていたなんて

どんなに思いを巡らせど
その痛みを理解するには
私なぞ 足りない、足りない。

あれから78年が経った未来で
この地には平和が在る

もう二度と、もう二度と
その誓いは強く真っ直ぐに 今日まで届けられた

けれども今
海を越えた何処かでは まだ続いているなんて
誰がこの夏空に 伝えられようか

78年後の今
未だ何も知ることのできていない
こんな無力な私に 何ができよう

ただ、せめて平和を と
祈り、祈り。

もう二度と、もう二度と と
誓い、誓い。

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