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【詩】セロリ

人には好き嫌いがあって
時間が経てば好きになれたものがある
例えばパセリ。
彼はただ誰かに華を添え
彼自身はただ静かに座っている
どうして彼は地位や名誉を譲れるのだろう 
そう思っていた。
けれども私が彼を知らなかっただけ。
彼の大切なものは地位や名誉ではなかった
僕らの幸せの定義は一体幾つ在るのだろうか

人には好き嫌いがあって
時間と共に色褪せ嫌いになっていくものがある
例えばトマト。
僕はこれまでトマトは甘いものだと思っていた
ただ人生は楽しいものだと
そう思っていた。
けれどもどうやら違ったみたい。
食卓に出されたトマトは
酸っぱくて食べにくいものが既に除かれていて
僕が口にしていたのは 
この世界のほんの僅かだった
僕はこれから一体何に出逢うのだろうか

人にはそれぞれ好き嫌いがある。
でも、好きでも嫌いでもないものもある
例えばセロリ。
世界にはそんなものが溢れている
これから彼を好きになることだってあるし
これから彼を嫌いになることだってある
けれども何の感情も持たず
時間を理由にただ見過ごしてしまう

僕らの有限の時間は一体何の為に在るのだろうか
嫌いなものを好きになる為?
好きなものを生涯好きでいる為?
もしセロリみたいなものを愛すための一生ならば
僕らが瞬きをする時間は微塵もない

ずっと生涯好きでいたいものがある
それはサラダ。
辛いことや悲しいことがあるから
嬉しいことや幸せなことが一層輝いて見えるなら
どんな要素も、好きも 嫌いも
ぜんぶ ぜんぶ 好きだと言えたらいいのに。
さて僕らはこれから何を探しに行こう
誰を待って 何処で摘んで 誰と食べよう

今日は曇りのち雨。
でも大丈夫 それはセロリ。
あなたがこれから好きになるもの。







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