ひきこもり

私はもう数十年ひきこもりだ。
ワンルームの部屋でただゲームをして過ごしている。
自分が子どもの頃のゲームだ。あの頃ゲームソフトをいくつも買えるほどのお金もなくやりたくても買えなかったゲームが今ではいくらでもやれた。
お気に入りのゲームをひたすらやりこんだり、あの頃興味なかったジャンルのゲームさえ、ありすぎる時間で色々とプレイした。
数十年、人と会わなかったが暇とは思えなかった。
自分が引きこもる数年前、ベーシックインカム(最低所得保障)制度が整った。そのおかげで最低限とはいえ生きていける。
食事や日用品など生きていくのに必要なものは毎日部屋に届いた。
ひたすらゲームをして眠くなったら昼夜問わず眠る。
そんな生活をしていた。
ある日、目を覚ますと急に外に出てみたくなった。
思い立ったら我慢できなかった。
外に着ていく服を探す。しかし、この数十年で体型は変わり着る服がない。
しかたなく服を注文した。明日には部屋に届くはずだ。
私はわくわくしながら待った。
数十年ぶりの外はどんな景色だろう。
ずっと暇と思わなかった部屋の中が急に面白みのないものに映った。
ゲームにも魅力を感じなかった。

部屋の宅配ポストに服が届いた。
身だしなみを整え着替えた。
さていよいよだ。
ドアに手をかけた。
ガチャ
ドアノブを回しても開かない。
ガチャガチャ
動かしても押しても引いても動かない。
脳裏に人々の悲鳴とたくさんの身体から流れる血の赤が浮かんだ。
あぁ・・・私は恍惚とした。
数十年前、私は無差別殺人で数十人を殺した。
死刑制度は廃止されていて私は無期懲役の刑となった。
しかし当時、刑務所は税金の無駄と廃止され私はこのワンルームに閉じ込められた。
一生出られない。
あぁ・・・外に出たい。この部屋はつまらない・・・。

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