生きているか

私の両親は長らく子宝に恵まれなかった。
20年もの間つらい治療をしてようやく私を授かったらしい。
しかし、私は不完全な人間だった。
妊娠初期から手足の欠損が分かっていて、その後は心臓にも異常が見つかった。医者からは無事に生まれても10年の命を言われたそうだ。
周りはこの子は諦めろと説得したが、両親は待望の我が子を産むと決め、そのまま私を産んだ。
私は生まれてすぐいくつもの手術を受けた。心臓にもペースメーカーを入れた。また成長に伴って義手・義足をいくつも取り替えた。
幸い両親にはお金があり、私に最新の高機能のものを用意してくれた。
多くの不自由を感じず、学校にも通うことができた。
家族と友達に恵まれ、幸せな毎日だった。

しかし、10歳ごろから身体のあちこちにボロが出始めた。
内臓はどんどん機能低下を起こし、体の中はどんどん機械と置き換えられていく。私は入退院を繰り返し、学校にもほとんど行けなくなっていた。

そして20歳の時、ついに顔の皮膚がんをきっかけに顔さえ人工のものになった。もう私はほとんど人工的に作られている人間だ。
脳は私のだけれど、身体は人間と呼べるのだろうか。
私はもう外に出なくなった。
両親は生きていてくれるだけで良いと見守ってくれた。

しかし年日は残酷だ。
両親が亡くなった。幸い遺産はあり、このまま引きこもっていても暮らしていける。それでも私は考えた。
私にはもう生命維持にさえ食事は必要ない。生殖機能はとうに無く自分の子孫を残すこともかなわない。家族も友人ももういない。他人と話すこともない。
いつ果てるともしれない、人工的な物体の私は果たして生きていると言えるのだろうか。

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