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日本行動計量学会 第51回大会に参加しました!

こんにちは!株式会社GA technologies、Advanced Innovation Strategy Center(AISC)の三田です。

2023年8月28 ~ 31日に開催された日本行動計量学会の第51回大会に参加してきました。

本記事では会場の雰囲気や面白かった研究などをご紹介していきたいと思います!

学会について

ご存知でない方に向けて簡単に学会の説明をいたしますと、日本行動計量学会は

最も広い意味での人間の行動に関する計量的方法の開発と、その様々な分野への適用について研究すること、計量的方法の普及ならびに研究者相互の連絡・協力を促進すること、研究成果を社会に還元すること、を目的とする学会

日本行動計量学会のウェブサイトより引用

になります!

・・・という説明だけでは抽象的すぎるかと思いますので、例として本大会でのセッションのタイトルをいくつか並べてみると、一般セッションは「教育」「社会」「心理」「マーケティング」「多変量解析」などのタイトルのセッションがあり、特別セッションは「栄養摂取と消費者行動」「機械学習による不正会計検知とその法的課題」「意思決定の心理モデルと行動計量」などのタイトルがついている、そんな学会になります。

1973年に林知己夫先生を理事長として発足し、今年でちょうど創立50周年を迎える学会になります。

会場について

今回は青山学院大学の青山キャンパス(&オンライン)のハイブリッド形式での開催となりました。

青山学院大学 青山キャンパス(正門前)

私は初めて青山学院大学のキャンパスに入ったのですが、全体的に建物のデザインが凝っていて統一感があり、とてもよい雰囲気でした。

キャンパス内の礼拝堂

AISCからは福中さん白圡さん三田の3名が参加しました。

参加したメンバーからのコメント

各メンバーから、それぞれ興味深かった研究などについてコメントしていきます。

福中さん

行動計量学会は、過去、委員会のお手伝いなど運営業務に協力したこともある思い出深い学会になります。しかし、実を言いますと、大会自体に参加したのは約15年ぶりくらいです。コロナの影響もあったせいか、リアル参加の大会規模は当時と比べて小さくなっていましたが、昔と変わらない懐かしいメンバーの方とお話しできたり、何より研究内容や統計教育について熱く議論されていたりと当時の雰囲気を色濃く残していて大変楽しかったです。

今回僕が参加した中で最も印象に残ったセッションは、8月30日の午前中に開かれた「意思決定の心理モデルと行動計量」という特別セッションです。このセッションは早稲田大学の竹村和久先生がオーガナイザーとして企画し、慶應義塾大学の繁桝算男先生を指定討論としてお迎えした内容のものです。実は、僕がまだ早稲田大学文学学術院で助手をしていた頃、竹村先生が主任(つまり直属の上司)をしておられました。また、過去、日本心理学会のとあるセッションを企画した際、繁桝先生に指定討論をお願いしたこともあり、両先生ともに縁のある方々でした。発表したメンバーにも僕の後輩(今は静岡県立大学の准教授!)がおり、15年ぶりくらいに顔を合わせ、互いに懐かしい気持ちになるとともに月日の経つ速さを感じました。そういう意味でも、とても印象深いセッションでした。

研究内容も当時と変わらず意思決定の数理モデルに関するものであり、これだけ長く続けられていることに大変感銘を受けました。竹村研究室ではもともと意思決定に関する理論の研究が活発で、当時学生だった頃、僕も授業に参加して勉強したことがありました。意思決定理論はその名の通り、「人間がとある商品を購買する」とき、あるいは「多数決で集団意思決定をする」際、どのようなメカニズムで決断するに至ったのかをモデリングして再現する研究です。今回の発表でもそのメカニズムを計算機でシミュレーションしたり、眼球運動の画像解析から意思決定メカニズムを解明できないかというアプローチをした研究がありました。特に意思決定は不動産の購買時でも重要な研究テーマなので、どれも大変興味深く、面白い内容だと思いました。ただ、不動産などの高額商材の意思決定理論に関する研究はまだまだ少ないと思うので、ぜひこの分野で共同研究できればおもしろいなと思いました。

白圡さん

私は「学会」というものに参加すること自体が初めてでした。セッションの内容だけでなく、会場の雰囲気や参加者の方の熱気も印象深かったです。

言うまでもなく人間の行動や意志は複雑で、全てを理屈に落とし込むことは不可能です。個人的にですが、それでも業務の中で「何らかの答え」が必要とされることがあり、不安や疑問を抱きながらある程度の着地を見つける、という経験が何度かありました。
今回、『どうやって人間の行動を計量するか』という複雑なテーマに対して真摯に向き合っている方々が集まっているのを肌で感じ、心強い想いがして安心できた気がします。

学びという点では二日目の50周年記念シンポジウムでのパネルディスカッションが印象深かったです。
様々な経歴や専門領域をお持ちの6名のパネリストの方々がそれぞれ、どのようなテーマに関心・課題感を持ち、それに対してどのように解決しようとしているのかを、僅かですが窺い知ることできました。

特に「定量と定性のバランス」や、「目まぐるしく変化する現代においてどのようにデータを取得していくのか」に関してはほとんどの方が共通して持たれている課題感だったのではないかと感じました。
最前線の方々の状況を知れたことで、自分に現在足りていない知識は何で、今後何に対してアンテナを張っておくべきかを掴めた気がします。

三田

本大会ではアンケート調査時の欠損や粗雑な回答によるバイアスの除去についての研究やロイヤルティプログラムの顧客生涯価値への因果効果を調べた研究など、興味深い研究がたくさんありました。その中でも個人的に特に面白く勉強になったものは「囮選択肢としてのプラン追加を用いた魅力効果についてのフィールド実験研究」という研究でしたのでご紹介いたします。

まず「囮選択肢」についてご説明します。$${ \{A, B\} }$$という2つのプランがあって値段・内容が$${ A < B }$$のとき、$${B}$$よりも値段が高いにもかかわらず内容は$${B}$$と同じという明らかに劣るプラン$${B'}$$があったとします。この$${B'}$$が囮選択肢と呼ばれるものです。$${B'}$$を追加した$${ \{A, B, B'\} }$$の3択にすることで、$${\{A, B\} }$$だけを提示するときに比べて$${B}$$の選択率が向上する効果(魅力効果)の存在が知られているようです。

この研究はpixiv FANBOXというサービスにおける囮選択肢の導入による効果を、観察データの差の差法による分析と介入実験によって検証したものになります。介入実験はランダムに選んだクリエイターに囮選択肢の追加を促すメールを配信するもので、局所平均処置効果(LATE)で約5%の売上増加が確認されたそうです。魅力効果の存在を初めて知ったので大変興味深い現象だと思うとともに、ユーザー体験を損なうことのない実現可能な範囲で実験を行って施策の効果検証を行っている点も素晴らしいと感じました。

おわりに

日本行動計量学会の大会にちゃんと参加したのは今回が初めてなのですが、様々な分野におけるデータ分析の話を聞くことができてとても楽しかったです。私の知識ではついていけない領域の話もあったため、勉強してまた来年も参加したいと思いました。

AISCではほかにも学会に参加しており、ブログ記事にしております。もしご興味をお持ちでしたらぜひご覧ください。



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