見出し画像

第116回 「校外の大人と高校生で作るディスカッション授業」

 第116回は外部の大人に授業に参加してもらい、高校生とディスカッションするという授業実践を報告していただきました。「自分は社会のことを全然知らない」とコンプレックスを感じていた報告者の先生、経験を積まれる中で「きっかけ作り」「場作り」が教師の仕事と考えるようになったそうです。若者と社会をどう繋ぐか、かっこいい大人の存在に気づくにはどうすればよいか、など教育を「社会」と行うための接着剤として様々な取り組みを行われる中の一つとしてこのディスカッション授業を続けられています。誰でも参加できるそうですが、学校に出入りする業者(教科書会社、予備校、旅行者、他授業の外部講師など)はターゲットにされてしまうとか。同じ年齢、性別、経験値の生徒同士では深まりにくい議論も、大人が入るとぜんぜん違ってくるようで、これまで医学部入試の女子差別や安楽死、スポーツとジェンダー、ライドシェアなど多様なテーマで実践されてきました。この日は実際に授業で扱ったテーマ「兵庫県立大学の授業料無償化」で議論しました。このテーマは報告者の先生が兵庫県庁で相談して、兵庫県が今一番大事だと考えていることは何か、面白くて勉強になるものは何か、ということで決められました。20代の県外流出を止める一手段として考えられたこの制度をどう思うか、誰かと議論することで自分では思いつかない視点が見えてきました。

ー 質疑応答 ー
・地域の方や県の方を多く呼ばれている印象。原点は「自分が社会のことを知らない」ということだったが教員は意外と世間知らずだったりすると思ったこともある。→学校は優れた場ではあるが、社会科、公民科は学校だけでは抱えきれない部分があると思っている。その部分で授業や社会で起こっていることに自信がないから、もっと知りたいという気持ちが起こって行動につながっている。

ー 以下議論(兵庫県立大学の授業料無償化について) ー
・若者支援を可視化できる。
・同様の偏差値の私大と生徒の取り合いになる可能性がある。
・県民だけを無償にするのはムラ社会的発想ではないか。大学は本来多様な人達が集まるところ
・他県出身者こそ無償化して何年か働いてもらうほうが人口流出を止められる。
・就職を機に県外へ行く人が多いのに県立大学無償化の策は少しずれている感じがする。例えば「兵庫県内で就職したら奨学金の返済免除」の方が県内に留まる人や県外の人で兵庫県に定着する人が増えるのではないか。
・県立大無償化で競争率が上がったら逆に県外の大学を視野にいれる生徒も出てくる。教員としても他府県の大学を勧めざるを得ないこともある。
・大学を選択する基準は生徒によって様々。明確な目的意識をもっていたり、通学圏内が条件だったり。授業料が必ずしも条件の上位に来るわけではないので、無償化が確実にマッチングしているかは疑問。
・兵庫県庁には県立大出身者が多い。
・大学院も博士後期課程も無償。兵庫県民は何歳でも大学で勉強したかったらできる!は強いメッセージ。兵庫県が兵庫県民を大事にして、学びたい人を育てる場として県立大学が位置づけられれば、偏差値の基準ではない大学の魅力が出てくる。18歳の大学生と社会人経験者など多様な人材が混ざるような仕組みとして県立大無償化があれば、県が自分の学びを支えてくれるとして兵庫県愛も深まる。
・県立大学はなぜあるのか?公立大学は?私学ってなぜできたのか?など公共の教材になる。
・経済的理由から大学進学を諦めなければならなかった生徒にとっては金銭的負担無しで大学進学のチャンスがあるのはそれだけで希望になる。
・up-to-dateな話題を少しでも授業に取り入れることで教師も生徒もわくわくと今のニュースをみることができる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?