探偵物語②

もしもアナタが不貞に準ずる行為に及んでいるならば、用心深く行動した方がいい。
待ち合わせは家の真ん前。 其処まで相手が車で迎えに来るなんて事があれば、探偵に世界1楽な依頼をしたという実績の持ち主がまた1人増えてしまう。
その様な間抜けは吾輩だけで充分。

探偵は間男の車を造作もなく追跡する事ができた。 あらゆるメーカーオプションが取り付けられたその高級車には危機管理能力が搭載されていない。
車は、趣きないネオンにボヤけた繁華街へ。
ホテルにチェックイン後、2人は直ぐに腕を組んで外出。近くの小粋な居酒屋へ。
男は片手にセカンドバックでジャージ姿、見るからにヤ⚪︎ザ者。 お世辞にもイケメンとは言えない。
店内で、かなりぽっちゃりした女性と黒人男性という異色カップルと合流。 街の夜は益々と無秩序に染まる。
太った女性は妻の幼馴染のM。 幼少期より「うちのれいぞうこにはプリンがひゃっこはいってるんだよ」と言う虚言癖の持主。
それに加えて彼氏が出来ると女友達との付き合いが希薄になる典型だ。
だがそれと同時に、巡り合いを欲する男女に相手を充てがう事を得意としていた。
妻と男はMがジョイントしたのだろう。 かつての妻と吾輩がそうだったように。
2組は2時間ほど酒食を享楽した後、店の前で解散。
M達を見送った妻と男はその場で烈々たる抱擁と接吻を交わした。 ホテルへ帰る前にローソンへ寄って買い物。 コンビニを出たところでも人目を憚らずまぐわった。 探偵がその全ての蜜月ぶりを写真に収める。
男の車にはGPSが取り付けられた。 探偵の見立てでは「アレはまともな勤め人ではないですよ」との事だったが、結果は大手ゼネコンの現場監督。
男には妻と娘が居たので後の脅… 交渉がスムーズに進んだ。

数日後、我々は最初に会ったガストに居た。
探偵が言った。 「長年浮気調査をしていますが今迄で1番簡単な仕事でした。」

9年後、吾輩は独りでガストに居た。
背面の席に座ったママ友4人が各々の夫の悪口で盛り上がっている。 かと思うと次は各々の彼氏との惚気話を始めた。
これが噂に聞くガストアウトレイジ。 登場人物全員不倫。
あらゆる愛や綺麗事が練り混ぜられた世界の中には欲望が詰め込まれている。 ほら、フォークで割ったハンバーグの中からチーズが垂れ流れた。


P.S.
優しいフォロワー様方のご支援により生かされているホームレスです。いつも本当にありがとうございます。

そう。吾輩が文章を書く時はお金がなくなった時。
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ガストのメニューはチーズインハンバーグが好きです。

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